一帯一路とRCEPとの連結、アジアの国際物流に大きな効果―福山秀夫・中国物流研究会幹事

Record China    2021年8月14日(土) 13時50分

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中国・アジアの物流に詳しい福山秀夫・中国物流研究会幹事が「一帯一路とRCEPとの連結を構想する」と題して講演。RCEP下における一帯一路の動向が、アジア域内の国際物流に大きな効果を及ぼすと強調した。

国際アジア共同体学会が主催する日中シンポジウムがこのほど東京の国会議員会館で開催された。中国・アジアの物流に詳しい福山秀夫・中国物流研究会幹事(元日本郵船北京事務所長)が「一帯一路RCEP(東アジア地域包括的経済連携)との連結を構想する―国際物流の視点から」と題して講演した。「ポストコロナとRCEPの発効が重なる時期をにらんで、国際物流の動向に注目が集まっている」と指摘。RCEP下における一帯一路の動向が、アジア域内の国際物流に影響を及ぼし、両者の連結が、RCEP締約国の課題となると強調した。

福山秀夫氏の講演要旨は次の通り。

◆コロナ禍で急成長したSEA&RAIL

一帯とは、「陸のシルクロード」のことで、1992年に開始されたユーラシア・ランドブリッジから始まった。SEA&RAIL(中国語で「海鉄連運」)が基本であり、「連雲港~阿拉山口、天津港~二連浩特、大連港~満州里」という三大海鉄連運ルートで運営された。

2011年3月に上記3港を起点とせず、中国鉄道近代化を目的としたコンテナ輸送推進のために設置された、18か所ある鉄道コンテナセンター駅の内陸駅の一つ、重慶鉄道コンテナセンター駅から渝新欧国際列車が出発し、その後、成都西安等の内陸センター駅から続々と国際列車が出発し、2016年にこの新しいランドブリッジに、「中欧班列」というブランド名が与えられた。

中欧班列は、コロナ禍で急成長をした。2011年は17便1,000TEU(20フィートコンテナ換算)だったものが、2020年には12,400便1,135,000TEUと急増した。コロナ禍による航空輸送の代替と世界的なコンテナ海上輸送運賃の高騰による代替輸送によるもので、欧州航路の補完ルートとして定着し始めている。

中欧班列と日本発貨物の接続については、2018年5月日本通運が、重慶や武漢を拠点とした「ユーラシアトレインダイレクト」という日本との接続サービスを開始し、2019年4月に日新(本社横浜、国際物流企業)が、「日中欧SEA&RAIL一貫輸送サービス」という商標登録名で、横浜港発・厦門港・重慶鉄道コンテナセンター駅経由欧州まで25日のサービスを提供している。2020年12月に日新、中国国営船社シノトランスジャパン、武漢新港などが協力して、日本・武漢新港直行便を利用し欧州まで「中部陸海連運大通道」と呼ばれるルートによるサービスも開始した。

北東アジアには、国際高速船(RORO船・フェリー)ネットワークが存在し、日本~日韓RORO~釜山港~陸路~仁川港~韓中RORO~中国港湾というRORO to ROROサービスを利用した中欧班列接続サービスも行われている。さらに、シノトランスジャパンによる日本~威海港~重慶~デュイスブルクというサービスや中国フォワーダー海東国際貨運代理による博多港~釜山港~仁川港~大連港~満州里のRORO to ROROサービスとシノトランスの威海港経由サービスの活用などがある。韓国発貨物に関しては、韓国企業SJロジスティクスが、LG電子の製品の韓国工場、中国工場分を成都鉄道コンテナセンター駅に集約し、ブロックトレイン(コンテナ専用列車)を仕立てて欧州へ送るサービス(仁川港~日照港経由)を提供している。日韓発貨物と中欧班列との接続については、最適ルートを求めて現在、模索中の段階にある。

中鉄側の状況を見ると、18か所鉄道コンテナセンター駅は、税関を含めた貿易業務や商務の管理拠点としての国際陸港を形成しており、プラットフォーム会社が管理をし、ブロックトレインの編成も行っている。国際陸港は、発展戦略を展開しているが、中でもユニークな成都鉄路港の発展戦略は、「四向拓展」と称し、東西南北方向へのルート開発を推進する。特に、南向の「成都-欽州-アセアン」の鉄海連運ルートは、後述する「西部陸海新通道」と呼ばれる交易ルートであり、RCEP下で大きな役割を期待されている。

一路とは、「海のシルクロード」のことであるが、欧州航路やアジア域内航路を指す。欧州航路の2020年のコンテナ荷動き量は、東アジア-欧州往復約2400万TEUである。アジア域内航路のそれは、約3800万TEUで、東アジア域内は、合計約6200万TEUという巨大な量のコンテナが往来する豊かな地域となっている。この中で、欧州、中国、台湾、韓国、日本等の船社がしのぎを削っており、中国船社が、RCEP発効を睨んで、新造船の発注等を進める一方、世界のコンテナ取扱量10位以内の東アジアの9港(内、中国7港)、アセアン主要7大港等は、施設の拡張を急ピッチで進めている。

◆RCEP下で進む「一帯一路」の深化

RCEP下で中国西部とアセアンとの交易を盛んにするために打ち出されたのが、「西部陸海新通道」である。これは、西部大開発の一環として中国西部の発展のために構想された新ルートであり、2017年ごろから開始された。重慶駅・成都駅と欽州港をハブとし、アセアンとの物流を推進することを目的とした陸海ルートである。その機能は、シルクロード経済ベルトと長江経済ベルトを欽州港からシンガポールへ至るアジア域内航路に接続することである。その効果は、両経済ベルト及び西部地域からの貨物をシンガポールから欧州航路や北米航路へ接続し、シンガポールからのアセアン貨物を両経済ベルト及び西部地域へ接続することである。

これまで、重慶からアセアンへのコンテナ輸送は、上海港経由で行われていたが、2000㎞の長江輸送と上海からの海上輸送を併せたリードタイムは、重慶から欽州港経由アセアンへの輸送の倍かかる。西部陸海新通道を使えば、上海港抜きの効率的な貿易が可能となり、モノの流れが大きく変わることが予想される。また、西部・アセアン地域から欧州へは、中欧班列か欧州航路か自由に選択できることになる。さらに、欽州港がハブ化すると、北東アジア物流と東南アジア物流の融合が起こり、日中航路と東南アジア航路が融合することになる。つまり、船と鉄道の複合輸送ルートを、アジア域内航路が支え、日中韓アセアンのハブ港を中心にいかようにでも組み立てることができることになる。欽州港の上海港化という現象が生まれ、欽州港は、上海港・深圳港・香港港と並ぶ中国西部のハブ港になり、東アジア域内の物流サプライチェーンは、大きく変革されるだろう。

◆国際複合輸送に対処する組織設立を

この新しい流れを支援するために、私は、RCEP下での新しい組織として、「東アジア複合輸送(インターモーダル)共同体」の設立を提案したい。この組織は、先述した事例に基づき、①国際高速船(RORO船、フェリー)ネットワークを活用した中欧班列接続サービスの提供体制の構築、②中国沿海諸港を利用した日韓中欧SEA&RAIL輸送サービス体制の構築、③中部陸海連運大通道のような長江を利用した接続体制の構築、④西部陸海新通道の構築―に取り組み、さらに将来発生する様々な国際複合輸送の問題へ対処する組織である。これが、RCEPと一帯一路の連結をさらに促進するだろう。(主筆・八牧浩行

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