「実際、中国のワクチンどうだった?」日本人として打って思うこと

大串 富史    2021年7月21日(水) 12時50分

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外国人も7月から新型コロナワクチンが打てますよとの情報が入ったので、中国現地在住の日本人として早速打ちに行ってみた。資料写真。

先回のコラムにコメントいただいたように「ワクチンによる薬害に対して『何があっても一切抗議しません』の文面に署名」したものの、当地では外国人への接種をまだ開始していませんと言われてから中国で待つこと丸1カ月。

ついに中国人の2回目の接種がほぼ終わったようで(僕の中国人の妻も2回目を無事終了)、外国人も7月から打てますよとの情報が入ったので、中国現地在住の日本人として早速打ちに行ってみた。

そんなわけで、まずは既に署名済みの「新型冠状病毒疫苗知情同意書」なるものに最初からもう一度目を通す。以下は、この「同意書」からの直接の引用(日本語訳)である。

#この書式は全国統一ではなく、今回ご紹介するのは山東省青島付近で使われているものであることをご了承いただきたい。なお百度で検索いただければ、ご自身でその他の地域の「同意書」の確認が可能である。

【ワクチンの種類】現時点で批准されているのは4つの製薬会社により製作されたワクチンで、うち3つは不活化ワクチン(Vero細胞)、残りの1つは為腺病毒載体疫苗つまりアデノウイルスワクチン(オックスフォード-アストラゼネカ製およびガマレヤ社製と同類のワクチン)である。

#後者のアデノウイルスワクチンというのは「中国で初『1回で有効』新型コロナワクチン接種開始|テレ朝news」で紹介されていた「カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)と人民解放軍の軍事科学院が共同開発した新型コロナワクチン(ウイルスベクターワクチン)」のこと。

他にも緊急時に限り、重組亜単位疫苗(CHO細胞)つまり組換えサブユニットワクチン(ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンで、生ワクチンではない)の接種が批准されている。

【接種の対象】満18歳以上。

#つまり中国において子どもたちや若い人たちは、今のところワクチンを接種していない。

【接種の手順】不活化ワクチンの2回の接種の間隔を3週以上8週以内とする。組換えサブユニットワクチンであれば4週以上の間隔で、2回目は8週以内に、3回目は半年以内に終える。

【注意事項 ※署名が必要】接種後30分間は留観区(と呼ばれる別室)にて副反応がないかどうかを見る。その他ワクチンと同様、コロナワクチンのすべての接種者に100%の保護効果は恐らく得られない。

#ここの中国語の文言は興味深い。ワクチン接種イコール抗体形成イコール絶対コロナに感染しないとはならないかもしれず、そのことを大前提とし副反応はゼロではないことを承知していますというサインをする。

【副反応の補償】もし調査診断を経て副反応またはその可能性が排除できない場合、ワクチン製作企業が自主加入した予防接種副反応補償保険の保険会社が責を負う。

なおこの中国のワクチン接種の詳細については、百度で「新冠病毒疫苗供応接種信息公告」あたりをご検索いただければ相応の情報が(中国語ではあるが)ネット上で明らかにされている。

#当の僕らは山東省に住んでおり、検索ワードに「山東省」を加え下記の詳細な点について知ることができた。

1.国家および山東省の統一された取り決めにより、6月10日から30日までに2回目の接種を終える。

#だから7月1日からは接種し損ねた人々と僕らのような外国人が接種するらしい。

2.ワクチンは共に国薬集団(中国医薬集団有限公司つまりシノファーム)傘下の北京生物制品研究所有限公司、長春生物制品研究所有限公司、蘭州生物制品研究所有限公司、および北京科興中維生物技術有限公司(シノバック・バイオテック)による不活化ワクチン、および安徽智飛龍科馬生物制薬有限公司による組換えサブユニットワクチン。

#1回のみ接種でOKのアデノウイルスワクチンを接種する機会は、山東省ではどうやら稀のようだ。

3.2回の接種が全く同一である必要はない。なぜならワクチン原液が北京生物制品研究所により残りの3つの製造元に提供されているため。

#WeChatアプリである電子健康通行カードアプリ(または「健康コード」アプリ)により、中国人はもとより中国在住外国人も14日以内の行動範囲(携帯の電波の受信状況により立ち寄った市町村がすべて把握されている)やPCR検査の結果等がすぐに分かるようになっているが、この同じアプリにいつどこでどのワクチンを打ったかも記録されている。

4.接種後の抗体検査はない。マスクは引き続き必須、また手洗い・通風・フィジカルディスタンスの保持を励行する。

ところで、この中国のワクチンの有効性はどうなのだろう?この点でも中国ネット上の情報は興味深い。

まず目につくのは、今回ワクチンは「半年以上」の有効性が認められたという点だ。つまり半年間は大丈夫であるが、半年後いつまで有効なのかは誰も何とも言えない。その頃にはさらなる変異株への対応も必要だろうから、もしかするとしばらくは半年スパンのワクチン接種ということになるのかもしれない。

中国科学院院士で中国疾控中心(中国疾病予防管理センター・CCDC)の高福主任の発言も注目されている。「中国シノバック製コロナワクチン、有効性への懸念さらに高まる | Forbes JAPAN」等の記事の中で「自国製ワクチンの有効率が高くないことを認め、問題解決の方法を模索している」とされた人物だ。

だがその記事も認めているように、後になって「共産党系の『環球時報』紙で、自身の発言に関する報道を『完全な誤解』だと語っ」た。そのようなわけで「中国疾病予防管理センター長・高福氏に聞く-ワクチン接種で疾病負荷を軽減」と題する記事が、人民中国インターネット版および中国網にて日本語で公開されている。

つまり高福主任が言ったとされる「自国製ワクチンの有効率が高くない」というのは、同記事によれば「コロナワクチンの開発は容易ではなく、現在のところ、どのワクチンの効果がより高いか証明できるデータはまだありません(中国のワクチンの優位性を数値で示すこともできない)」ということらしい。

とはいえ中国のワクチンは「WHOの判断によれば重症化や死亡を防ぐ効果に関しては100%に近い」という強みがあるという。

では、中国のワクチンを日本人として打って思うこととは何か。

まず第一に、これは自己責任だとつくづく思う。一家の頭として自身の「重症化や死亡を防ぐ」ために僕も打ったが、「ワクチン接種イコール抗体形成イコール絶対コロナに感染しないとはならないかもしれず、そのことを大前提とし副反応はゼロではないことを承知していますというサインをする」必要があった。

幸い、僕(と中国人の僕の妻)は打っても何ともなかった。あとは2回目の接種を数週間後に無事に終え、抗体形成となることを願うばかりだ。

第二に、これは長期戦だとつくづく思う。今回の中国の不活化ワクチンは「半年以上」の有効性が認められているのみで、変異株との戦いも続く。

高福主任が上記記事で言う「新型コロナを今すぐ地球から取り除くことはできないかもしれませんが、今後はワクチン接種で疾病負荷を減らしながら、ウイルスと共存していくことはできる」というのは、とりもなおさずワクチン接種プラス「マスクは引き続き必須、また手洗い・通風・フィジカルディスタンスの保持を励行する」必要があるということにほかならない。

第三に、これは全世界の問題だとつくづく思う。僕的にはインドやブラジル他の親しい友人たちのことが非常に心配だったりするのだが、「ワクチン接種直後196人死亡、「打つべき人」と「打たないほうがいい人」|NEWSポストセブン」のコメント欄(正確には、転載先のYahoo!ニュースのコメント欄)の2000以上のコメントを見ていると、日本の皆さんのこともやはり心配になってしまう。

だから高福主任の「新型コロナワクチンは世界の公共財です。中国は、日本を含む世界の国々と技術面での協力を進め、より人間に適した質の高いワクチンを選び出し、団結して新型コロナに打ち勝とうとしています」とのコメントは的を得ているように見えなくもない。

というのもワクチンに限ったことではないが、欧米はアイデア(開発)に強く、日本は製品化に強く、中国は量産に強い。

だが問題は「世界が団結して新型コロナに打ち勝とうと」するかどうかである。そうなるのかもしれず、そうならないのかもしれない。それはどういうことか。

現代人の記憶から消え去りかけていた1918年のスペイン風邪の記憶は、今回のコロナ禍により再び人類に共有されることになったが、その当時、世界は団結しただろうか?

そうであったとも、そうでなかったとも言える。当初は第一次大戦がまだ収束していなかったから団結どころではなかった。ところが猛威を振るったスペイン風邪がほぼ自然収束し(自然の成り行きに任せた結果、比較的短期間で世界規模の集団免疫が達成された)、1919年にベルサイユ条約が締結され、国際連盟が発足する。

スペイン風邪は自然に去って行ったし、ベルサイユ条約で戦後処理は十分だったはずなのに、一体どうして「国際連盟」なのか。

その時、国際連盟の提唱者であり当時の米国大統領であったウッドロー・ウィルソンは「キリスト教には実現できなかった人間同士の兄弟関係を国際連盟が実現することになる」と説明し、英国の首相ロイド・ジョージとフランスの首相ジョルジュ・クレマンソー を驚かせたという。

つまり「世界の団結」なるものは、世界的流行病や世界大戦の戦後処理程度ではまだ生じない。良かれ悪しかれ、それこそ既存の宗教をさえ凌駕し覆しかねないような尋常でないベクトルが働いて、初めてなんぼなのである。

そんなわけだから、上記記事にある「中国製薬大手の上海復星医薬(Fosun Pharma)とドイツのバイオ企業ビオンテック(BioNTech Ltd.)が昨年3月から、mRNAワクチン(米ファイザー・独ビオンテック・米モデルナが開発したワクチンと同種のもの)の共同開発を行っている」という高福主任の「良い知らせ」は、やはり「こちらのお国が使える『カード』がまた増える予定です」ぐらいの話なのだろう。

え?「じゃ日本のワクチンはどうなるんでしょう?今回は『世界の団結』なしですか?」という問いの答えですか?まあ、それはそうなるかもしれないし、そうならないかもしれない、としか……

■筆者プロフィール:大串 富史

本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間、中国・青島に3年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。

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