中国版「一村一品」、浙江省寧波市・繆家村は「たこの里」として文化の発信地に

Record China    2021年4月11日(日) 12時10分

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浙江省寧波市にある繆家村は、「曹氏風箏」と呼ばれる伝統的な「たこの流派」を前面に押し出して、文化の発信地としての村おこしに取り組んでいる。

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日本で「たこ揚げの季節」と言えば正月ごろだが、中国では寒さが遠のいて屋外活動に適した季節の春が、たこ揚げに格好の季節とされている。中国人のたこ揚げのファンにとっては、すでに「シーズン到来」というわけだ。中国には、そんな「たこ」を「一村一品」の「一品」にして地域おこしを進めている場所がある。浙江省寧波(ニンポー)市奉化区にある繆家村だ。

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繆家村が「たこ文化」による発展を目指すきっかけになった人物が、同村出身の繆伯剛さんだ。繆さんは、子どもの時に父親に教わったのがきっかけでたこづくりに夢中になった。その後、北京市内の大学で美術広告デザインを学ぶことになったが、北京市内で「曹氏風箏(ツァオシー・フォンジョン)」または「曹雪芹(ツァオ・シュエチン)風箏」と呼ばれる、著名な「たこづくりの流派」の継承者と出会い、自らも「曹雪芹風箏」を学んだ。そして繆さんは、「曹雪芹風箏」の4代目継承者として認められることになった。

「曹雪芹風箏」という流派名だが、「風箏」とは中国語で「たこ」のことだ。そして「曹雪芹」は清朝期に書かれた長編小説「紅楼夢」の作者として知られる人物だ。曹雪芹はたこについての書物も書いており、「曹雪芹風箏」は曹雪芹の方法を踏襲しているとされる。

繆さんは大学卒業後、出版社に就職してデザインを担当したが、2016年には退職して曹雪芹風箏の製作と普及に全精力を注ぐようになった。

寧波市の地元情報を主に扱うサイトの中国寧波網よると、繆伯剛さんの故郷である繆家村の人口は700人余り。住民のほとんどが「繆」という姓だが、村人は戦乱を避けて山東省からやってきた人の子孫との言い伝えがあるという。

村では手袋づくりなどの業種が盛んになったが、ここ数年は業績が落ちて来た。そこで繆伯剛さんはたこをテーマにした村おこしを考えるようになった。繆さんは18年の春節(旧正月)に帰省した際に、自分の考えを周囲の人に語った。そして、当局の支持も取り付けて、19年春には曹雪芹風筝博物館をオープンさせた。

ここまでの経緯を振り返ると、まずは幼いころに父親に手ほどきを受けた繆さんが「たこづくり」に夢中になり、その気持ちを保ったまま北京の大学に進み、故郷から見れば「外の世界」である北京で伝統的な流派を学んだ。さらに繆さんの故郷の発展を願う気持ちが、「曹雪芹風箏が役立てられるのでは」というアイデアに結びついた。

そして最後の決め手となったのが、村の発展に責任を持つ村の指導者が、「伝統文化も村おこしの決め手になるはず」と判断して、繆さんを全面的に後押ししたことだった。

なお、曹氏風筝は11年に「曹雪芹風筝」の名で国家非物質文化遺産(無形文化遺産)に選ばれている。つまり、中国にとって貴重な伝統文化であると保障されたことになる。さらに、中国にとって貴重な文化ということになれば、世界的にも貴重な文化の一つと言ってよいだろう。

繆家村は「たこ文化」をテーマに整備されることになった。村内には「たこ揚げ基地」3カ所が設けられた。また、村の建物や村内に80本以上もあるクスノキの古木なども生かした景観づくりが行われ、全長300メートル近い「たこの廊下」も作られた。繆家村ではさらに、「曹雪芹風箏」をはじめとするさまざまな流派のたこに関連する資料を展示し、「たこづくり」の体験もできる曹雪芹風箏博物館も建設された。

村内ではまた、小中学生を対象に「たこづくり」の教室も開催されるようになった。子どもらにとってたこづくりは書道や絵画の練習にもなっているという。「たこの里」として知られるようになった繆家村には、「たこ体験」を目当てとする観光客が多く訪れるようになった。

中国では農村振興法の一つとして「一村一品」が推進されている。例えば11年に始まった中央政府による「一村一品モデル村」の発表は20年に第10回を迎えた。多くの場合は、優れた農産物などがその村を代表する「一品」とされているが、繆家村の場合は無形文化遺産である「曹雪芹風筝」が、村を発展させる「一品」だとの声がある。(取材/張志傑・文章構成/如月隼人

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