【中国キーワード】遊びから生まれたeスポーツ、プロ選手は難関大より難しい?

人民網日本語版    2021年3月30日(火) 10時50分

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「2020年中国ゲーム産業報告」によると、2020年の中国eスポーツ市場の規模は前年比44.16%増の1365億5700万元に達し、中国は今や世界最大のeスポーツ市場だ。

新型コロナウイルス感染症が多くの業界に非常に大きな打撃を与えたが、エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)は「オンライン」という優位性により、流れに逆らって新たな境地を開いた。「2020年中国ゲーム産業報告」によると、2020年の中国eスポーツ市場の規模は前年比44.16%増の1365億5700万元(約2兆2805億円)に達し、中国は今や世界最大のeスポーツ市場だ。

中国教育部が「eスポーツの運動と管理」を専攻科目の増補リストに組み入れ、国務院がeスポーツなどのスポーツ消費新業態の育成に関する文書を発表し、さらには国際オリンピック委員会(IOC)がeスポーツをスポーツ競技として扱うようになった。こうしたさまざまなことは、すべてeスポーツに対する社会の重視や支持を裏付けるものだ。

今ほどeスポーツが注目された時期はない。そもそも「まともな仕事ではない」と見られてきたeスポーツだが、徐々に認められるようになっている。

■プロのeスポーツ=ゲームで遊ぶこと?ゲームができればプロになれる?

eスポーツと言えば、「ゲームをすること」と見られがちだ。2016年に教育部がeスポーツの運動・管理を専攻科目の増補リストに組み入れたが、親世代からは「eスポーツは本当はゲームをしているだけなのではないのか」と疑問視する声が常に上がっていた。

四川省成都市に了翼之夢eスポーツトレーニングセンターを設立した侯旭(ホウ・シュー)さんは、「eスポーツは遊びから生まれた新職業だが、ただ遊んでいればいいというものではない。プロのeスポーツ選手になるには並外れた才能が必要であるだけでなく、日々地道なトレーニングを繰り返さなければならない」と説明した。

eスポーツは電子ゲームの試合が「競技」レベルに達したスポーツ種目だ。知力で戦うスポーツとして、従来の競技スポーツと同じように、選手には生まれつきの才能、身体能力、四肢の反応などで高い能力が要求されると同時に、プロ化を意識した強度の高いトレーニングをこなす必要もある。また、eスポーツの非常に特殊な点は、プロの競技活動が各ゲーム作品をめぐって展開されることで、ゲームの寿命やバージョンアップが選手にも試合にも極めて大きな影響を及ぼすことだ。業界には「1バージョンに神プレイヤーが1人」という言い方もある。

■残酷な現実の生き残りの法則

プロのeスポーツ選手は入れ替りが多く、サイクルが短く、低年齢化の傾向が明らかだ。侯氏は、「eスポーツは世代交代のペースが速い業界で、生き残りの法則は非常に残酷だ。プロチームの選手の収入は実際の状況によって基準額が決まり、一般の青年トレーニングチームの選手の給料は5000元(約8万3000円)前後、試合に出られる選手は2万元(約33万4000円)からスタートし、第一線の選手は最低年収が20万元(約334万円)、なかには数百万元に届く人もいる。しかしこのレベルに達する人は数えるほどしかいない。圧倒的多数のプロ選手はほどほどの収入で、そして選手として輝ける期間は非常に短く、名実ともに「若さが売り」だ。関連の調査によれば、eスポーツ選手の年齢分布は16-22歳が54%、23-30歳が26%で、全体として年齢が低い。メディアのまとめた統計では、eスポーツ選手の選手生命の平均はわずか2.6年で、伝統的スポーツ界のほぼ4分の1しかなく、3-5年が30%を占める。

■ゲームでも職業病になる

引退年齢の平均がわずか24歳というプロeスポーツ界では、けがや病気が避けられない話題だ。統計によれば、選手の75%がさまざまなレベルの職業病を抱えているという。

eスポーツ選手がなりやすいけがや病気は何か。まず指や手の強度の高い反復運動による腱鞘炎、手首の腫れ、痛みがある。姿勢の悪さや座りっぱなしによる首、肩、腰、足の損傷、さらには気胸などもある。手首よりも深刻なのは、腰椎と頸椎のトラブルで、特に腰椎は健康をめぐるトラブルの20%を占める。

■都市経済の重要な足掛かりに

eスポーツ業界のハードルは決して低くないが、ゲームへの情熱、栄光への憧れ、経済的な成功への希求などから、今でも多くの人がプロへの道を選択する。関連産業も日々勢いよく発展し、波及効果がさらに多くのチャンスを生み出し、都市経済の重要な足掛かりとなっている。

関連政策の支援を受けて、上海市には現在、全国のクラブの80%以上が集まっており、大きな試合の80%以上がここで開催され、整ったeスポーツ産業チェーンが形成されている。同時に、eスポーツは上海で産業チェーンの広がりを通じて、より幅広い文化・クリエイティブ産業の成長も促している。オンラインでは、ライブ中継やオンライン観戦などの業務の広がりをもたらし、オフラインでは、エキシビション、観光、デザイン、公演などがさらに多くの機会を生み出している。

上海以外の都市では、eスポーツが経済発展の重要な足掛かりとなっている。現在、中国のeスポーツ関連企業は1万社を超え、eスポーツ産業に力を入れる都市は200カ所を超える。

「オンラインゲーム都市」の建設に力を入れる北京市は、20年に「eスポーツ北京2020」シリーズイベントを開催し、北京国際eスポーツイノベーション発展大会、「eスポーツの光」展示交易会、2020年「王者栄耀」ワールドチャンピオンカップ総合決勝戦が相次いで行われた。

一方で、海南省はeスポーツ産業の発展支援策「海六条」を打ち出し、資金、人材、税金、査証(ビザ)免除、イベント審査承認、中継の面でeスポーツの支援政策を整備して打ち出し、eスポーツの発展支援に力を入れた。今では、海南自由貿易港エコソフトウエアパークの中に、eスポーツやゲームなどを中心にしたデジタル文化・スポーツ企業が1千社以上ある。

また、深セン市には、20年末時点でゲーム企業が4千社以上あり、これに科学技術イノベーション、デジタル、文化・クリエイティブ産業の集積が加わって、深センのeスポーツ産業のために良好な発展環境が整備されている。

■eスポーツ業界の未来に期待

eスポーツ市場をめぐる環境が良くなっていくことで、eスポーツをめぐる教育への信頼感も高まった。上海でのeスポーツ大会のフォーラムでは、多くのeスポーツ産業従事者が、「eスポーツ産業は、伝統的な競技スポーツの成熟したビジネス運営プロジェクトに学ぶべきだ。サッカーのワールドカップ、バスケットのNBAなどが比較の対象になる」といった見方を示した。

業界関係者は、「中国のeスポーツ産業は世界のトップ陣営に属している。最もベンチマーキングして学ばなければならないのは米国だ。著作権の売買、イベントのパッケージングなどの運営において、中国企業には経験が不足しており、米国企業がどうやって観衆に最大限のサービスを提供し、広告主に最大限のサービスを提供しているか、競技スポーツの商業的価値を探って最大化させているかなどを学ぶ必要がある」と述べた。

eスポーツ業界には困難もあり、学び続ける必要もあるが、業界関係者の圧倒的多数はこの業界の未来に楽観的な見方を示す。

魏紀中(ウェイ・ジージョン)元中国オリンピック委員会(COC)事務局長は、eスポーツの今後の発展について「スポーツ化、工業化、グローバル化」という3つのキーワードを打ち出した。「この3つの『化』が1つになれば、eスポーツ競技を新たなステージに進ませることになる」と言う。

専門家の中には、「NBAの派生産業には商機がいたるところに広がっているように、未来のeスポーツ派生産業もチャンスを迎えるだろう。『e(電子)』の面では、eスポーツは技術のバージョンアップ、芸術表現スタイルに依拠して絶えず古きを淘汰して新しきを生み出し、産業運営の新たな状態を作り出している。『スポーツ』の面では、eスポーツはもはや単なる試合ではなく、人々の生活スタイルになっている。eスポーツは他の非コンテンツ産業にエネルギーを与え、今後はさらにeスポーツ観光、eスポーツ金融、eスポーツEC、eスポーツトレーニングなどに派生する可能性がある。そしてさらに産業の価値を掘り当て、大衆による起業・イノベーションの大きな舞台になる可能性もある」という見方を示す人もいる。(提供/人民網日本語版

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