京東の劉強東氏が中国NO.1富豪へ、京東数科、京東健康、京東物流、連続IPOに賭ける

高野悠介    2021年3月6日(土) 14時0分

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ネット通販2位・京東の株価が上昇している。

ネット通販2位・京東の株価が上昇している。IT界のスター、アリババテンセントの影に隠れ、さらに、2020年は、拼多多とバイトダンスなど新勢力に注目が集まっていた。しかし京東は、本体の香港市場へのW上場や、子会社の連続IPOなど、資本市場では、活発に動いていた。今回はその京東グループを取り上げたい。

■資金調達に注力…本体の重複上場と子会社の上場

京東は2020年、資本市場で積極的にアプローチした。6月、京東本体が香港市場へ上場した。これで米国ナスダック市場との重複上場になった。アリババとまったく同じ手法を取ったのである。9月、Fintech子会社・京東数科の上海科創板市場へのIPO申請、12月、ヘルスケア子会社・京東健康の香港市場IPOと続いた。そして2021年2月、物流子会社・京東物流のIPOを香港市場に申請した。京東グループの3大ユニコーンが出揃った。

京東数科はIPO申請しただけで、いまだ上場は実現していない。一方、京東健康のIPOは成功し、ライバルの阿里健康、平安好医生を、時価総額で上回っている。今は京東物流の話題で持ち切りだ。京東はアリババと違い、直営物流が看板のため、否応なく注目が集まっている。以下、この3社の状況を見ていこう。

■京東数科…上場待ち状態が長期化

京東数科は2013年10月、京東金融として独立運営を開始。翌年、消費者金融商品「白条」、資産管理の「京東小金庫」、モバイル決済の「京東支付」をスタートさせた。企業価値は300億ドルとされている。アリババ系アント・グループも主力商品発売は2013年と同じだが、企業価値は1500~2000億ドルとみられ、大差をつけられていた。

京東数科の上場は9月の申請以来、滞っている印象だ。世界を驚かせた2020年11月のアント・グループ上場中止以来、金融業はコンプライアンス順守が最優先課題だ。中国人民銀行金融穏定局は翌12月、「この2年、多くの銀行が、オンライン預金サービスを開始した。オンライン金融プラットフォームも同じように預金サービスを開始したが、彼らに関しては“無免許運転”の状態にある」と指摘した。これを受け、アリババの支付宝(Alipay)、百度の度小満金融、平安グループの陸金所などの金融プラットフォームが、預金業務を“棚上げ”している。

このほど京東は、本体の法務責任者を、京東数科の新CEOに据えた。流れをとらえた人事である。証券市場関係者は、“上場待ち”に変わりないとしている。

■京東健康…時価総額トップへ躍進

京東は、2013年から医薬品の小売を開始した。2016年、「京東大薬房」で、ネット通販へ進出。2017年、北京地区で医薬品卸売りの「薬京採」をスタート。また、ネット医療「京東互聯網医院」を開設、オンライン問診サービスを開始した。2018年、「銀川京東互聯網医院」が医療機関許可証を得る。2019年、京東健康集団に改組、独立運営となった。2020年1月、コロナ禍に際し、全診療科で無料問診を行った。

現在の業界は、阿里健康、平安好医生、京東健康の三つどもえ。2020年上半期のデータは下記の通り。

売り上げ…京東健康87.8億元、阿里健康71.7億元、平安好医生27.5億元

GMV(流通総額)…阿里健康554億元、京東健康224億元、平安好医生21.7億元

GMV伸長率…京東健康73.6%増、阿里健康49.7%増、平安好医生7.5%減

時価総額(2月下旬)…京東健康600億ドル、阿里健康471億ドル 平安好医生174億ドル

平安好医生は、会員制のホームドクターによるオンライン問診がメインだ。しかし2020年、コロナ渦の中で、医薬品扱い高を落とし、チャンスを逃している。

京東は直営比率が高いため、売り上げは高く出る。実際の取り扱い高は、阿里健康が2.5倍も大きい。しかし時価総額では、勢いや可能性、バランスが評価され、ナンバーワンだ。

■京東物流…独立物流会社の地歩固める

京東は2007年から自社物流の構築に取り組んだ。2012年、京東物流として登記、2016年、大型貨物物流で、中国全行政区をカバー。2017年、京東物流集団設立。2019年、都市部の半日配送、地方の24時間配送計画を始動。2020年、全国に800カ所の倉庫、30カ所のスマート物流園区を運営している。

京東物流の特徴は、独立した物流会社として、京東グループ以外の仕事も請負うことだ。外部顧客比率は、2018年…29.9%、2019年…38.4%、2020年…43.4%と年々上昇し、50%に迫っている。今後は、親会社の京東を始めとする、小売り企業へ物流インフラを提供するだけにとどまらず、サプライチェーンを全体に、テクノロジー及びサービスを提供する企業へ、アップグレードを目指すという。

実際に、京東の在庫回転日数は34日に改善した。これはウォルマート、アマゾンの指標40日を下回る。企業価値は400億ドルが見込まれている。

■創業者・劉強東…長者番付トップをうかがう

当局の意向に左右される京東数科の上場も、いずれは実現するだろう。京東物流の上場は今から熱気に満ちている。いずれも成功すれば、京東の創業者・劉強東は、中国一の富豪になるかもしれないという。ここ数年、個人資産のトップは、アリババ・馬雲か、テンセ

ント・馬化騰に決まっていた。ところが昨年末、拼多多の創業者・黄崢の資産が、株価暴騰により、一時的にせよ彼らを上回った。劉強東もこの争いへ加わるかもしれないという。劉強東は2018年9月、米ミネソタ州で性的暴行事件(後に不起訴処分)を起こし、評判を爆下げした。しかしそれ以降、グループの舵取りには問題はないようだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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