<緊急事態宣言延長>五輪の日程優先での宣言解除は避けるべき―立石信雄オムロン前会長

立石信雄    2021年5月30日(日) 7時20分

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新型コロナウイルス対策のため東京、大阪、北海道など9都道府県に発令されている緊急事態宣言の6月20日までの延長が決まった。政府の最大の責務は国民を守ることだ。写真は営業時間短縮の新橋の飲食店。

新型コロナウイルス対策のため東京、大阪、北海道など9都道府県に発令されている緊急事態宣言の6月20日までの延長が決まった。「コロナ疲れ」が全国に広がりうんざりしている方が多いと思う。東京、京都、大阪、兵庫は2度目の延長となる。飲食店、小売店、劇場などはすでに大きな打撃を受けており、経済的な影響は深刻だ。さらなる負担を強いる以上、政府と自治体は支援を途切らせてはならないと思う。

4月の宣言発令から1カ月以上経過したが、1日当たりの新規感染者数はいまだ高水準の地域が多いようだ。減少傾向がみられる東京や大阪でも「ステージ4(感染爆発)」相当を抜け出せず、病床逼迫の改善も見通せない。厳しい状況が続く大阪では入院できずに、自宅や高齢者施設などで亡くなる患者も相次いだという。

度重なる宣言や延長措置が十分な効果を上げていない要因は何か? 今回の延長で何が変わり、新たにどんな効果が見込めるのかも含め、十分な説明を求めたい。

特に心配なのは変異ウイルスの増加である。従来よりも感染力の強い英国型への置き換わり、さらに感染しやすいインド型が広がり出している。冬の第3波では、感染者数が十分に下がらない段階で宣言を解除した結果、再拡大を招いたとされる。

宣言解除後のリバウンド防止策は万全に練っておくべきだ。変異ウイルスが残っていれば、短期間に感染が再拡大する懸念がある。感染状況を常に点検し、行動制限の緩和は段階的に進める慎重さが欠かせない。

米政府は日本に対する警戒ランクを最高度の「4」とし、渡航中止勧告を出した。いま感染を減らせなければ、7月の東京五輪の開催もさらに不透明感が増すのは必至だろう。

 

東京都医師会の尾崎治夫会長は、大会開催には、東京の新規感染者数をステージ2相当の「7日間平均で100人以下」にまで抑える必要があると主張している。今回「宣言」の解除期限である6月20日は五輪開会式まで約1カ月のタイミング。政府の最大の責務は国民を守ることだ。五輪の日程優先で宣言を解除するようなことがあってはならないと思う。

<直言篇159>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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