<コラム・莫邦富の情報潮干狩り>中国版「道の駅」時代が交通大渋滞の10月連休中に幕を開けた

莫邦富    2020年12月14日(月) 15時20分

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10年前の2010年9月下旬、高知県庁に招かれて、インバウンド資源の取材で四万十川周辺を回ってみた。写真は中国・蘇州の陽澄湖サービスエリア。

10年前の2010年9月下旬、高知県庁に招かれて、インバウンド資源の取材で四万十川周辺を回ってみた。ある日のお昼の直前になって、案内役の方から、「今日の昼食は道の駅で取ることになっていますが、大丈夫でしょうか」と意見を求められた。もちろん、すぐにOKと答えた。だが、心の中では、少し意外を覚え、せっかく私を呼んでくれたので、地元の宣伝になるようなお店の方がいいのでは、と思った。

車は「四万十とおわ」という道の駅の駐車場に入った。その時、私はようやく事情をのみ込めた。その日は29日で、水曜日だった。道の駅のレストランは休みとなっている。ただ、実際に休んだのは従業員だけで、レストランは依然として営業している。毎週水曜日は地元の主婦たちがいくつかのグループになって、自家製の野菜などを使って手料理を作り、交替で正規の従業員がいないレストランを切り盛りしている。やがて主婦たちの手料理の味が評判になり、水曜日に昼食をわざわざこのレストランで取る人が増えて、レストランは大人気となった。

1時間の昼食時間を大幅にオーバーした。私がスケジュールにない主婦たちの取材を臨時にしたからだ。その時、私は高速道路の建設に打ち込んでいる中国も道の駅のような地方経済を振興させるビジネス舞台が必要だと思った。しかし、中国側に日本の道の駅の成功体験を伝えようとしても、私一人の声では巨大な資本を握っている高速道路の国有経営会社を動かすのは到底無理だと冷静に判断し、機が熟すまで待とうと思い直した。

■今年10月の大型連休、SNSで「サービスエリア」が注目浴びる

あっという間に10年の歳月が流れ去った。今年10月1日からの8連休は、コロナ禍に翻弄されていた中国国民にとっては、今年に入ってから初めて休みと言える大型連休だった。ようやくロックダウンや隔離など嫌なことを考えずに自由に行きたいと思うところに行くことができるようになったので、みんな、車を運転して大自然の空気を吸いたいと思ってレジャーに出た。すると高速道路はどこも大渋滞が発生し、目的地になかなかたどり着かない観光客が数えきれないほどいた。「高速道路でロックダウン状態に陥ってしまった」という笑えないジョークが飛ぶほど渋滞は深刻だった。

そうした中で江蘇省内の高速道路のサービスエリア(SA)を紹介するある文章がSNSで大ヒットを飛ばした。高速道路のサービスエリアと言えば、トイレは設置されているが、レストランは値段が高く、味がいまいちで、ちょっとした休憩ができる無味乾燥な空間に過ぎないと思う人が多い。だから、長い間、人々はトイレがそこそこきれいなら、サービスエリアに対する不満はもうないという状況だった。だから、蘇州から南京までの江蘇省内の高速道路のサービスエリアを見た人々は驚きを覚えた。これらのサービスエリアはまるでローカルカラーが鮮明に出ている、個性豊かなミニテーマパークかミニショッピングモールのような存在となっている。これらのサービスエリアを利用したことのある利用者の多くはすぐその虜(とりこ)になってしまった。

例えば、上海蟹の産地として広く知られる蘇州の陽澄湖。そのサービスエリアは湖の地理的な条件を生かして、水郷地帯の特徴と江南の庭園の美しさを再現するような設計になっている。インターネットからの声によれば、連休中の大渋滞で高速道路を降りることができなかった多くの観光客は、このサービスエリアで江南の景色をある程度楽しむことができ、渋滞によるいら立ちも相当緩和できたという。

写真は陽澄湖サービスエリア

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