<コラム>中国のC2Mモデル、Eコマース3強の新たな主戦場に

高野悠介    2020年12月11日(金) 17時0分

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中国では年間最大の小売イベント、双11(11月11日独身の日セール)を機に、受注後生産の無在庫販売、C2M(Customer-to-Manufacturer)モデルに注目が集まっている。

中国では年間最大の小売イベント、双11(11月11日独身の日セール)を機に、受注後生産の無在庫販売、C2M(Customer-to-Manufacturer)モデルに注目が集まっている。中国では革命的工業モデルと認識され、官製メディアを含む各メディアが、盛んに取り上げている。ネット通販の終着駅の1つはOMO(Online Merges Offline)、つまりオンオフの融合、これは即時性がポイントだ。もう1つはこのC2Mになりそうだ。こちらは時間がかかっても廉価商品、またはパーソナライズ商品へのニーズに応えるものだ。中国では、どんな議論が進んでいるのだろうか。

■京東のC2Mレポート

・日本のC2Mは、アパレルや靴業界などに限定されたイメージだ。しかし中国では、さまざまな方向へ大きな広がりを見せている。

10月末、Eコマース3強(アリババ、京東、拼多多)の一角、京東のビッグデータ研究院が「2020年線上新品与C2M消費趨勢報告」を発表した。それによれば、新商品消費の急速な発展が、消費生活のグレードを上げている。自社通販プラットフォームの分析では、2020年の単月新製品の発売数は、2018年の年間新製品発売数に匹敵するという。そのため多くの効能を持つ商品が必要となる。実際、今年の双11では、3億件の新商品を準備した。

そうした商品調達能力を向上させるため、サプライサイドはどうすべきか。消費者の声を直接工場へ届けるC2Mは、有力なソリューションだ。以下、3強の取り組みを見て行こう。

■アリババのC2M

・アリババのC2Mは、まずファッション衣料から。繊維産業を一新するか。

アリババは2013年ころから、CM2の理念を保持していた。2013年末、B2Bプラットフォーム「1688網」にG2M要素を持つ「淘工廠」を追加した。

そして2017年、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AI、IOTなど最先端のデジタル技術を生かした、自前のスマート工場建設に着手した。3年間研究を続け、今年9月、新製造プラットフォーム「犀牛智造」をスタート、同時に「犀牛杭州数字智産業園」をオープンした。これはアパレル業界世界初の“灯台工場”とされ、消費者からの直接受注生産を目指す。オンラインにおける消費と製造の融合、アリババの唱える“新制造”の具現化だ。

10月には、安徽省・宿州に30万平米の第二産業園をオープンした。今後3年以内に200の中小企業との提携を探る。

また“超級工廠計画”も発表している。これはアリババのもつデジタル能力と淘宝特価版の注文を背景に、1000の既存工場をスーパーファクトリーにアップグレードする計画だ。

■京東のC2M

・京東のC2Mは、得意の家電部門から進行中。大メーカーとの提携深まる。

京東は総合通販サイトだが、看板部門は家電である。その京東は、2018年9月、家電業界初のC2Mモデルを導入した。今年に入り、C2M関連投資を加速させている。その結果、京東の家電総売上高は、前年比100%増のペースで推移中だ。150アイテムのC2M家電が発売され、そのうち40アイテムが、各品種売上のトップ3入りしている

京東のユーザー増加率は、Eコマース3強では、最も伸び悩んでいる。しかし、増収を維持しているのは、C2Mの効果的運用による、パフォーマンスの向上が大きいと見られている。聯想(レノボ)やTCLなど協力したサプライヤーにとっても、メリットは大きい。京東への信頼は増し、さらなる協力が促進される好循環だ。

■拼多多のC2M

・拼多多にとってC2Mは、共同購入モデルの最終到達地か。

拼多多の目指すC2Mモデルは、生産能力と販売の直結だ。それも工場自身による生産最適化である。拼多多の現行共同購入モデルは、SNSをうまく利用しながら、消費者の細かい注文をまとめていく。C2Mは現モデルの延長線上にあり、生産サイドとの相性は極めてよい。

拼多多は2018年以降、“新品牌計画”に着手した。目標は1000の工場をサポートし、国民的な新ブランドを育成することだ。これには2019年半ばまでに6000社の応募があり、すでに500社が先行プロジェクトに参加した。某掃除ロボットの工場によれば、ビッグデータのサポート、生産ラインの改造、ブランド関連コストがないことにより、価格を他社の同等商品の4分の1で抑えられるという。

工場側にとって、今回の新品牌計画は、歓迎すべきアクションだ。消費者メリットも拡大し、市場全体に好影響を与える。拼多多は、長期の視点で投資を継続すると見られる。

■3強争いの焦点へ

・今後C2Mはどこへ向かうのだろうか。

ニュースメディアは、ネット通販3強のC2Mは、今のところ地方市場における競争力の補完要素が大きいという。

ただし、C2Mの目的は、需要と供給を直結させ、ビジネスモデルの再構築を図ることにあり、その基本条件は整いつつある。AIやビッグデータなど最新技術のイノベーションにより、スマートファクトリーの建設は加速する。ユーザー側の条件も成熟しつつある。消費の主役となった90后は、商品の品質やカスタマイズ、パーソナライズに大きな関心を払っている。現在全盛のライブコマースや、ソーシャルコマースに取って変わり、Eコマース3強による新たな競争の焦点に浮上しそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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