<コラム>落ちこぼれ気味だった「百度」株価急騰でBAT復活か、自動運転「Apollo計画」再評価へ

高野悠介    2021年2月8日(月) 21時20分

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中国でIT巨頭BATという呼び方が定着して久しい。バイドゥ(百度)、アリババ、テンセントの頭文字だが、ここ2~3年は、それに疑問を呈する向きが増えた。

中国でIT巨頭BATという呼び方が定着して久しい。バイドゥ(百度)、アリババテンセントの頭文字だが、ここ2~3年は、それに疑問を呈する向きが増えた。BがATに大きく引き離されたからである。そこで百度を外して、美団を入れ、ATMにしよう、などの議論が盛んになった。それがここへきて、百度の株価は急反発、復調の気配を見せている。詳しく分析していこう。

■急激な株価上昇…時価総額70%増

・百度株の値上がり、2021年1月も継続

中国IT企業の株式時価総額ランキング表がある。2020年12月31日の時価総額と騰落率だ。

1位 テンセント 4兆5530億元50.6%増

2位 アリババ 4兆0738億元 9.7%増

3位 美団点評 1兆4589億元 189.1%増

4位 拼多多 1兆4217億元 369.8%増 

5位 京東 8953億元 149.5%増

6位 小米 7042億元 208.0%増

7位 蔚来 4971億元 1112.4%増

8位 百度 4812億元 71.1%増

テンセント、アリババは別格の存在だ。そして時価総額から見れば、確かにATMで間違いない。さらにこの1年で最も増加したのは、新興EVメーカーの蔚来だった。ここも重要なポイントである。そして百度の値上がり分は、年末のほぼ40日でもたらされた。さらに2021年1月も20%以上、上昇した。

■百度のビジネスモデル…10年前と変わらない

グーグル、テンセントとの違いとは

百度は、検索エンジンの会社として世に出た。グーグルと同じである。そのグーグルは2015年8月、親会社アルファベットの傘下会社という形に改組した。これは資本市場に対する、肯定的アナウンスとなり、グーグルを改めて認識し、しっかり評価しようというきっかけを作った。

2000年代のテンセントは、パソコン用コミュニケーションツールQQと、コンピューター

ゲームの会社であった。2010年代、スマホ時代が到来したとき、QQをコピーしてモバイルに移植するのではなく、あらたにWeChat(微信)を開発した。やがてWeChatは、モバイル決済WeChatPay、ミニプログラムと合わせ、中国最大のスーパーアプリとなった。

百度には、こうしたアナウンスも変化もなく、乗り遅れ感が漂った。独自のエコシステムはあっても、AとTに比べれば、いずれも二番煎じに映った。目立ったのは、動画視聴「愛奇芸」、スマートスピーカーの「百度小度」くらいだろうか。フードデリバリ-の「百度外売」は、アリババ系「餓了蘑」に吸収された。特に「百度はどうした?」という議論の中心は、自動運転「Apollo計画」の停滞した印象にあった。

■自動車産業…EVメーカー暴騰

・資本市場の自動車業界見直し

自動運転「Apollo計画」は2017年11月、4大国家AIプロジェクトの1つに選定された。しかし、その後の進捗状況はあまり伝わってこない。そのうち滴滴出行やテンセントなど、他社の自動運転プロジェクトが、メディアを賑わせた。しかし、百度の停滞した印象は、好転しつつある。自動車業界そのものがが、新段階へ入ったからだ。

2020年は、テスラ、蔚来、小鵬などEVメーカーの株価が世界的に暴騰した。これら新エネルギー自動車メーカーの成長率は34%、伝統的自動車メーカーは3%に満たなかった。続いて市場の目は、自動運転技術の見極めに向かった。

新エネルギー車は、自動車メーカーが、いつ製造に踏み切るかの問題だった。これに比べ自動運転は複雑だ。まず研究開発の障壁は、はるかに高い。優れた製造技術やサプライチェーンの刷新だけでは追い付かない。資本市場の支持を得るには、IT企業としての技術やサービスリソースとともに、強力なパートナーも必要だ。こう考えると、百度の培ってきたノウハウは、競争力を有していた。

■百度再評価…積み重ねた自動運転の実績

・4大リーディングカンパニーの1つに

2020年4月発表の「百度智能交通白皮書」によれば、提携パートナーは、178社、技術者は3万6000人。自動関連特許は、全世界で1800件、テスト走行距離は300万キロに及ぶ。Apollo計画は、当初からオープンプラットフォームを目指し、すでにオープンソースコードは56万行以上となっている。

「百度小度車載OS」、ディ-プラーニングの「飛槳」「百度クラウド」「百度地図」などの自社技術をインフラとして「自動運転」「車路協同」を確立する。そしてデジタル化、スマート化、自動化の応用を進め、エコシステムを作る。具体的には、ロボタクシー、ミニバス、自動駐車サービス、スマート信号機、高度道路交通システムなどである。

ナビガントリサーチの自動運転競争力調査(2020年3月)によれば、百度は、Waymo(グーグル)、Cruise(GM)、フォードと並び、世界のリーディングカンパニーに選ばれている。

■まとめ…百度株は売りか買いか?

・量産化段階へ

百度の停滞イメージには、報道に問題があったかもしれない。それは応用システムの1つ、無人ミニバスだ。低速でトコトコ走るこのバス動画を見た視聴者は、失望した。中国人の好む派手なパフォーマンスとはかけ離れていたためだ。「百度はどうした?」論の裏付けのようになってしまった。

しかし、ここへ来て、やはり百度ほど自動運転でノウハウを積んだ企業はないと再評価されている。滴滴やテンセントとはレベルが違う。それに従来のコアビジネスや、広告収入も回復基調だ。これらも急騰の原因である。今年に入り自動駐車サービスの量産化が伝えられた。百度株は、売りか買いか、さらに厳しく精査されることだろう。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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