<コラム>アメリカ大統領選挙 米陸軍広報、特殊部隊によるドイツ・サーバーでの銃撃戦を否定

洲良はるき    2020年12月8日(火) 10時20分

拡大

デルタフォースを麾下におくアメリカ陸軍特殊作戦司令部と米陸軍陸軍の広報担当官が、ドイツ・サーバーの襲撃事件などはなく、死者もないと、アメリカの大手軍事ウェブメディアに話した。資料写真。

デルタフォースを麾下におくアメリカ陸軍特殊作戦司令部と米陸軍陸軍の広報担当官が、ドイツ・サーバーの襲撃事件などはなく、死者もないと、アメリカの大手軍事ウェブメディアに話した。「Military Times」が報じている。

トランプ氏とバイデン氏の大統領選挙に関する話題は、あることないこと、とにかく膨大な情報がとびかいすぎて、どれが本当か判断に迷う。とくに過激な内容のフェイクニュースの類に関する話題は人々の注目を引きやすいのか、SNSなどでも無駄にやたらと広まる。

そのような怪しげなニュースのひとつが、アメリカ軍特殊部隊、おそらくデルタフォースによるドイツ・サーバー襲撃の話だ。中国語圏でもいくらかのニュース掲載サイトが、関連記事を掲載している。それらのいくつかの記事を要約すると、アメリカ特殊部隊が、CIAが運営しているサーバー・ファーム(多数のサーバー群)を押収するためにドイツ・フランクフルトで銃撃戦を行ったのだという。押収されたとするサーバーには、本当かうそか、トランプ氏とバイデン氏の大統領選挙の結果を変えるような不正の証拠が残っているらしい。銃撃戦の結果、デルタフォース側に5人、CIA側に1人の死者が出たという。

この話題はかなりインパクトがあったようだ。たしかにデルタフォースとCIAが銃撃戦なんて、映画(B級?)みたいな話だ。すでにSNSではこの話題が無闇に拡散しており、まことしやかに話されている。そして、少なからぬ数の人たちが信じているのが見受けられる。その中には何冊も本を書いておられるような名の知れた評論家の方々でさえ何人もいる。

一方で、ツイッターの発言をチェックしてみても軍事に詳しい一部の人たちは、端からフェイクニュースとして、ドイツ・サーバー襲撃の信憑性についてまったく相手にもしてなかったのは対照的であった。たとえば有名どころをあげると、たまに拙稿を掲載していただいている軍事専門誌・月刊『軍事研究』の常連である先生方も、もとよりこのドイツ・サーバーでの銃撃戦をフェイクニュースとして相手にしていない。

日本語のSNSでは、「日本の大手メディアがこのドイツ・サーバー銃撃戦をほとんど扱っていない」「不甲斐ない」などといった類の不満をもらしている人たちを数多く見かける。しかし、実は英語圏の大手有名メディアだって、実際にあったと肯定的に扱っているところはほぼないのだ。はっきりと与太話とみなされているのである。肯定的に扱っているのは普段から怪しい記事を扱っていて、ほとんどの日本人が名前も知らないであろうマイナーなメディアだ。

今回の襲撃事件をフェイクニュースだと一刀両断している有名メディアのひとつが、アメリカ軍の関連報道については最大手とも言える「Defense News」グループである。「Defense News」は普段から英語の軍事ニュース記事に関心がある人なら、まず知らない人はいないだろうというくらい有名なサイトである。今回、否定の記事を掲載したのは、「Defense News」グループのひとつで、「Military Times」というところだ。(「Defense News」グループには、他にも陸軍、海軍、空軍、海兵隊などを専門として扱う、「Army Times」、「Navy Times」、「AirForce Times」、「Marine Coups Times」他、があり、それぞれ専門分野の記事を「Defense News」に提供している)

たしかに、人間が運営している以上は、どんなメディアでも絶対に間違いはないというのはありえないが、「Defense News」グループは特にアメリカ軍に関する報道には定評がある。

ドイツ・サーバーでの銃撃戦などなく、完全に虚偽だと「Military Times」に話したのは、デルタフォースも所属するアメリカ陸軍特殊作戦司令部とアメリカ陸軍の広報担当官である。

同特殊作戦司令部に所属する部隊で死者が出たのは、今年8月に起きたヘリコプターの墜落事故の2人が最後だったという。さらに、特殊部隊の戦闘で死者が出たのは、今年の2月8日にアフガニスタンでの2人が最後だそうだ。しかし、今回のドイツ・サーバー襲撃事件を信じている人たちは、今年の11月に報道されたエジプトのヘリコプター墜落事件で死んだとされる5人の兵士が、本当はドイツでCIAとの銃撃戦で死んだと主張している。

他に、AP通信、ロイター、USAトゥディなども、今回のドイツの銃撃戦について、「虚偽」「フェイクニュース」だとはっきり決めつけている。

銃撃戦のソース元をたどると、World View Report(WVWーTV)のインタビューでのトーマス・マキナニー中将(退役)の発言にいきつく。

元中将とはいえ、1994年に軍をやめて現在83歳のマキナニー氏と、デルタフォースを麾下に置く現役バリバリの米陸軍司令部広報とをくらべれば、さすがに後者の発言のほうが信憑性が高いと思うのだが、いかがなものだろうか?

陰謀論を支持する人たちにすれば、それでも黒幕が大手メディアに報道管制を敷いているとか、さらにはアメリカ陸軍特殊部隊司令部にまで箝口令をしいている、ということになるのだろうか?

黒幕にそんな力があれば、元から陸軍特殊部隊司令部配下のデルタフォースの軍事作戦も止められたんじゃなかろうか?はてさて、いかがなものだろう…

マキナニー氏の話が真実だとすると、いろいろ辻褄があわないと思える点も気になるのだが、陰謀論者からすれば、そんな考えもゲスの勘ぐりということになってしまうのかもしれない。

たしかに、マキナニー氏の経歴は素晴らしい。ジョージ・ワシントン大学で国際関係学の修士号を取得し、その後、アメリカ空軍に入隊してベトナム戦争で400回以上の戦闘任務を飛び、数々の勲章を受けた。さらに、空軍副参謀総長補佐官となっている。軍を退役した後は、数々の防衛関連企業の重役を務めてきた。

しかし、マキナニー氏の発言を追ってみると、過去にも論理が飛躍した不可思議な話をいくつもしているのが目につく。その内容の多くが、あやしげな陰謀論だ。

一例をあげると、2014年に起きたマレーシア航空370便墜落事故のときである。当時、マレーシアのナジブ・ラザク首相は、370便がインド洋南部に墜落したとみられるとし、生存者はいないと発表している。

しかし、マキナニー氏は、370便はハイジャックされ、自らをレーダーから隠すために別の飛行機である68便の後ろを尾行したとFoxニュースで話している。彼によれば、多くの国が深夜には一線級のレーダー操作員を配置しておらず、インドのレーダー操作員は370便の機影を補足することができなかったのだという。しかし、この場合、68便が別の場所に移動した後に、370便がどうしてレーダーに映らなかったのかについて疑問がわく。マキナニー氏はなにも語っていない。マキナニー氏によると、370便はパキスタンの都市ラホールに着陸し、乗客は人質にされているのだそうだ。

さらに、マキナニー氏のもっとはるかに奇妙な発言が、同じ2014年にFoxニュースに語ったものだ。当時、マキナニー氏は、すでにISISがアメリカ本土内に多数いて、大規模のテロ攻撃を行う見込みであると発言した。このとき、マキナニー氏は、アメリカが「デフコン1」にするべきだと警告している。デフコンとはアメリカの防衛準備状態のことを意味し、「デフコン5」が平時の状態で、「デフコン1」は最高の警戒態勢を意味する。「デフコン1」は、核戦争が今にも起ころうとしている状態か、すでに始まっている状態のときにとられる態勢だ。第二次世界大戦後も世界中で数多くの戦争をしてきたアメリカだが、これまで「デフコン1」の態勢をとったことは一度もない。キューバ危機のような核戦争瀬戸際のもっとも緊迫した事態のときに、一度だけ、「デフコン2」が宣言されているだけである。

マキナニー氏はこのとき、ISISの大規模攻撃では、核、電磁パルス兵器、サイバー攻撃がつかわれ、アメリカが滅びる可能性あると主張した。たしかにISISはアメリカにとって脅威であったかもしれない。しかし、ISISにアメリカを滅ぼす能力があると考える人がどれほどいるだろうか。たとえば、ニューヨークのワールドトレードセンタービルが崩壊したことで有名な「アメリカ同時多発テロ事件(9.11事件)」はアメリカに大きな被害と衝撃をもたらした。しかし、アメリカを滅ぼすには程遠かった。

「Military Times」がマキナニー氏に今回のドイツ・サーバー襲撃についてたずねたところ、彼は情報源について語らなかったし、米陸軍広報の反論に対してもなにも答えなかったという。「Military Times」は、主張のエビデンスを提供するように求めたが、マキナニー氏はメールで長々と陰謀について書かれたニュース記事を転送してきただけだったそうだ。

この記事のコメントを見る

コロナ休業で卸先が……その商品、レコードチャイナで販売しませんか?
あなたに代わって在日外国人コミュニティーにセールス致します!
詳しくはこちら

関連記事



   

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携