<コラム>中国のドラッグストア事情

内藤 康行    2020年11月25日(水) 23時40分

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中国では消費者が「薬用化粧品」の概念を区別するのが難しく、グレーゾーンを形成している。

中国では消費者が「薬用化粧品」の概念を区別するのが難しく、グレーゾーンを形成している。現在、この「薬用化粧品」市場では、「安全」を全面に出し消費者の購買意欲を掻き立て、多くの企業がこの“集金市場”に参入しており、近年、中国のドラッグストア市場の急成長につながっている。 ドラッグストアに対する厳格な国家管理下で、ドラッグストア市場はすでに標準化されている。これに関連して、「ドラッグ&コスメティックス(薬用化粧品)」として知られる企業やブランドも、消費者の要求に沿ったよりプロフェッショナルな製品を提供するために、企業と市場の変革は喫緊の課題となっている。

欧米、日本及び韓国のドラッグストア業界の普及率は50~60%に達しており、中国のドラッグストア業界の売上高割合は国内化粧品市場の20%に過ぎない。この割合から判断すると、中国のドラッグストア市場はまだ揺籃期にあるものの、所得水準の上昇とドラッグストアへの理解の深まりにより、この市場の潜在的な需要が高まりつつある。

ある有力研究機関のデータによると、中国のドラッグストア市場の規模は、2010年の110億元(約1743億円)から2017年には625億元(約1兆円)に急成長し、年間成長率は28.16%だった。 ドラッグストア市場の売上高は、2023年には811億元(約1兆2000億円)に達すると推定される。

製薬会社 成長の足踏み

伝統的な製薬会社(雲南白薬、同仁堂など)は、主に伝統的な漢方薬に注目し、ハーブを切り口に「化粧品」分野に参入するとしていたが、結果理想的な効果を得られていない。効果を得られない現象の理由は、一つは、中国の消費者が欧米諸国や日本のように薬局を通じて「薬用化粧品」を購入する習慣がないためである。2つ目は、国家による管理監督が厳しくなり、国産化粧品の 「薬用化粧品」への道をさらに難しくしている。第3に、市場に出回っているほとんどの薬用化粧品ブランドは、過剰な豪華パッケージに重点が置かれ、実際の材料使用量が少ないといった問題があり、消費者の購買意欲と選択を難しくしている。


薬用化粧品のサプライチェーンの構築も企業にとって課題だ。消費者の肌のタイプやニーズに応じて製品を長期に亘り開発する必要があるため、企業は研究開発チームを設立するために一定の資金力と実力を備える必要があるからだ。同時に、原材料の調達、梱包、製造プロセスはすべて倫理基準に従う必要があり、消費者の嗜好やニーズの変化に対し、サプライチェーンの安定性と効率を確保するには様々な戦略が必要である。チャネル運営に関して、国内の化粧品も多様化している、例えばワトソンズなどのCSチャネルや、eコマースプラットホームを介したオンライン販売などがあるものの、結局その転化率は期待したほど良くない。

業界禁止令が頻繁に発令

「薬用化粧品」という用語は日本に由来しするが、日本の薬用化粧品の起源は早くから規範化されている。対照的に、中国の薬用化粧品業界には明確な法律、規制、政策規定がなく、比較的野放図な成長段階を経ている。さらに、「薬用化粧品」という用語の定義は非常に不明確であり、医療機器でも医薬品でもない。このような市場情勢で、国家医薬監督管理局は昨年1月10日、関連公示を出している。「化粧品の監督管理に見られる問題解決(1)」では、化粧品の名義登録または提出された製品について、 「薬用化粧品」や「医療用スキンケア製品」などの「薬用化粧品」の概念を宣言することは違法としており、また化粧品を薬品の代替使用は禁止している。

「薬品と化粧品」市場の現状

関連情報によれば、現在「薬用化粧品」の専門的な監督と監督を実施するために、法定レベルで通常の製品と医薬品の間で「準医薬品」に関する規制を個別に設計している唯一の先進国は日本だけだ。しかし、「薬用化粧品」の概念は、中国やほとんどの国の規制レベルでは存在していない。中国の「禁止令」に対し国内外の薬用化粧品ブランドにとっては大きな課題であり、裏を返せばビジネス機会でもある。課題は、製薬会社が短期間で市場でのポジッションを再調整する必要があるだけでなく、消費者の需要を満たすために製品を継続的に刷新する必要があることだ。

ビジネス機会とは、規制強化政策で、消費者を欺く「薬用化粧品」の使用を取り締まることで、市場秩序から悪徳業者を一掃することができるからだ。淘宝、京東のオンラインではすでにこうした関連商品は無くなっている。例えば「森田薬粧(Sen Tian Cosmeceutical)」のWeChat公式アカウントの名前はすでに「森田ブランドインフォメーション」に変更されている。

「薬品と化粧品」市場は、長年の成長過程を経て、化粧品の市場セグメントの1つとして成長してきた。化粧品の販売チャネルの多様化やeコマース、消費上昇により、「薬品と化粧品」市場は熱を帯びており、中国国内ブランドも布石を打っている段階だ。たとえば、2018年、中国のスキンケアブランドである薇諾娜(Winona)は22億5400万元(約358億円)の収益を上げており、この成果は主に、雲南の薬用植物と最先端の技術の組み合わせと、「eコマース+カウンター+薬局」の正確な市場ポジショニングとマルチチャネル販売によってもたらされた。

「双十一」(独身の日)の期間中、天猫薇諾娜(Winona)の旗艦店は、「Deep Customized Sensitive Skin Repair Box」や「Million Samples Distributed」などの活動を開始したことで、消費者の購入スポットに直接ヒットし、販売額は4億元(約63億円)を超えた。市場ではeコマースプラットフォームやブランディングと販売のベンチマークモデルを確立させている。カウンターでは、ブランドサービスを強化し、オフライン購入者とカスタマイズされた対面サービスを提供するために、500以上のカウンターを開設している。

サプライチェーンの改善は成長を加速させる

新しい小売の成長モデルで、中国の薬用化粧品チャネルの成長は今後のトレンドになりそうだ。大規模なグループ企業は中小企業の買収や合併を通じて、製品ラインの拡大と製品構造の強化し、リスク防止能力を高めつつ、市場チャネルを拡大し、競争上の優位性を高めようとしている。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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