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<コラム>ちょっと昔の中国の話=来日した内モンゴル人、深夜のコンビニで「トラブル」(前編)

配信日時:2020年11月8日(日) 21時30分
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今回の主人公は、内モンゴル出身のモンゴル人。日本人に対してジェスチャーで意思疎通しようとしたら、相手が「警察に通報せねば」と思ってしまったというお話です。資料写真。

「<コラム>ちょっと昔の中国の話」のシリーズとして、私が中国に関連して見聞きしたことをご紹介しているわけです。ただし、今回は日本国内で発生した「事件」についてです。

知り合い、というよりか、さまざまなことを教えていただいたモンゴル人の先生がいらっしゃいました。モンゴル人といっても内モンゴルの人。ドルボン・オタスト・ホールという楽器を使った語り物の名手で、日本で言えば人間国宝にも匹敵する地位の先生でした。

ドルボン・オタスト・ホールという楽器は、弦が2本ある中国の「二胡(アルフー)」に似ているけれども、弦が4本です。中国語では「四胡」(スーフー)」。この楽器についても、いろいろお伝えしたいことがあるのですが、長くなるので割愛します。

さて、この先生のことですがD先生としましょう。日本には、公演のためにやってきました。1週間も滞在すれば、予定のステージはおしまい。ところが、ビザはたしか、2週間ぐらいあった。興行目的ということで、ビザの最低期間が一律に決まっているそうです。D先生は「せっかく、ビザがあるんだから、日本でできるだけ見聞を広めたい」と考えました。当時はまだ、中国人が観光目的で日本に気軽に来ることはできない時代でした。

このような場合、気になってしまうのは「不法滞在」の問題ですよね。日本側でまず責任を問われるのは招聘元ということになるのですが、D先生は地位のある人ですから、「トンズラ」する可能性はない。そこで招聘元は「ビザが切れるまでに、かならず帰国してください。こちらからも、連絡を密にしますから、そのつもりでいてください」と念を押してOKした。

仕事は終わっていますから、滞在費は自腹ということになりました。D先生がどうしたかというと、知り合いの知り合いの知り合いぐらいを頼って、東京にいる内モンゴル出身の留学生のアパートに転がり込んだ。

先ほど説明したように、D先生は本国に帰れば「人間国宝クラス」なのですが、このあたり、少なくとも当時のモンゴル人は、漢族ほどには面子(メンツ)にこだわらなかったみたいですね。わりとあっさり「こうした方が合理的」ということになった。

D先生と臨時同居することになった内モンゴルの留学生君ですが、仮にA君としましょう。学費と生活費をアルバイトで稼いでいるのですから、帰りは毎日遅い。午前0時を少し過ぎるぐらい。D先生は昼間、自分でいろいろなところに行って見学しているのですけど、帰りはそれほど遅くない。先に帰っている。いつも、遅く帰って来るA君を迎えては「日本留学というのは大変だなあ」なんて、ねぎらっていたそうです。

2、3日して、A君は帰宅する時に、自分のアパートの近くのコンビニに立ち寄りました。すると、カウンターのところにD先生がいる。異様な雰囲気。店員さんが困惑している。A君は「いったい、何事か」と思い、D先生に「どうしたのですか」と聞いた。A君とD先生の会話はもちろん、モンゴル語です。

するとD先生が話しはじめる前に、店員さんが割り込んだ。「あ、お知り合いですか。日本語、分かりますか? ちょうどよかった。この人(D先生)、なにかトラブルに巻き込まれたらしいんですよ。警察に通報しようとも思ったのですが、とにかく言葉が通じないので、困っていたところなんです」――。

A君も驚いた。故郷のエライさんがトラブルに巻き込まれたのでは、大変だ。改めてD先生に事情を聞くことにしました。

D先生はD先生で、コンビニの店員さんが大慌てしていることが、不思議でならない。「バターを買おうと思ったが、どこに置いてあるかが、分からない。言葉が通じないから、身振り手振りで尋ねてみただけ」と言う。

モンゴル語でバターは「シャル・トス」と言います。直訳すれば、「黄色い油」。中国語では「黄油(ホアンヨウ)」。D先生は内モンゴルの人なので、中国語で書いてあれば分かるのですが、英語はおできにならない。商品に日本語で「バター」と表示していても、英語で「butter」と書いてあっても、よく分からない。

ということで、店員さんに「ジェスチャー」を試みたそうです。D先生は、【A】牛がいて、【B】その乳をしぼって、【C】パンに塗るもの――と、仕草で示した。これが、とんでもない誤解を招くことになった、というわけです。どんな誤解を受けたのかは、後編でご紹介しましょう。よろしければ、D先生がどんな身振りをしたのか、店員さんがどう解釈したのか、考えてみてください。

■筆者プロフィール:如月隼人
日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは編集記者を稼業とするようになり、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。同時に、経済記事や政治記事、解説記事などにも注力。

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