<コラム>動き出した第4キャリア「中国広電」、中国は5Gを機に“三網融合”へ向かうのか?

高野悠介    2020年10月4日(日) 14時50分

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日本と中国は、ともに電信3大キャリアの時代が続いた。それが両国とも、ほぼ時を同じくして第4キャリアが登場してきた。

日本と中国は、ともに電信3大キャリアの時代が続いた。それが両国とも、ほぼ時を同じくして第4キャリアが登場してきた。ともに政策的な期待を背負っているが、その役割には、大きな違いがあるようだ。日中の第4キャリアと5G時代を少しのぞいてみよう。

■日本の第4キャリア・楽天

政策目標達成へ期待のかかる楽天、スタートは遅れたが今のところ好評。

日本では菅内閣の誕生以来、携帯料金の引き下げが内政の目玉となっている。携帯3大キャリアNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの料金が高すぎるから、下げろというのだ。そのため第4キャリアとして参入した楽天による価格破壊に、期待が集まっている。

楽天は先進の「完全仮想化」回線設備を採用するため、3大キャリアよりシンプルな基地局構成で済み、建設、運用コストが安いという。理論上、低料金で済むはずだ。実際当初予定の半年遅れとなった2020年4月の本格スタートでは、「Rakuten UN-LMIT」を2980円、しかも初年度無料を打ち出した。6月末の調査では、80%のユーザーが満足と答えている。まずまずの滑り出しといえそうだ。

■中国の第4キャリア・中国広電

第4キャリア中国広電は、特別な使命を帯びていた。

中国も昨年まで3大キャリア体制だった。中国移動、中国電信、中国聯通の3社を電信「三大運営商」と呼んでいた。中国の都市を歩けば、必ず3社の看板に遭遇する。

中国の三大運営商は、同一ルーツの国有企業である。1998年に郵政から通信を分離、さらに翌99年に通信を、移動、電信、聯通の3社に分割し、それぞれ固定電話、移動電話、インターネット網などの業務を受け持たせた。固定電話は、電信と聯通の2社に割り当てたため、中国移動は身が軽い分、有利だった。現在のモバイル契約数は、圧倒的なトップである。20年続いたその体制に、昨年、中国広播電視網絡(中国広電)が加わった。

中国広電は4Gの実質初年度である2014年に設立された。財政部(財務省相当)の出資による新しい国有企業だ。使命は“三網融合”の推進にある。三網融合とは、電信網、コンピューターネットワーク、有線テレビ網の3つを、物理的に“合一”することである。より優秀な統一通信網を建設したいようだが、果して何の目的だろうか。

ただし統一は、市場を主体として行われるという。その手始めとして中国政府は昨年6月、中国広電に5G営業許可を交付した。第4キャリア誕生である。最後発の弱小キャリアの一方、三網融合の“推進主体”である。やがて巨大な三大運営商を、意のままに動かすのかもしれない。同じ第4キャリアでも、日本の楽天とは、全く別モノであった。

■オールチャイナで推進

中国広電、オールチャイナの子会社を設立し、本格稼働へ

9月下旬、注目の記事が出た。それによると、3大キャリアは、既存の全国ネットを生かし、順調に5G基地局を建設中だ。この1年で50万局を突破している。しかし、第4キャリア中国広電だけは、実際の動きが見えなかった。

ところがここへ来て、動き出した。9月末、子会社の「中国広電網絡股份有限公司」を設立し、同社が広電の全国展開プロセスを担うことがわかった。広電網絡の株主構成は、広電51%、次の2位株主には、世界一の発送電会社・国家電網と、IT巨頭・アリババが、9.9%で並んでいる。4位以下には、各地方の電信関連会社がズラリと名を連ねている。オールチャイナで第4キャリアを支える体制だ。三網融合の第一歩を踏み出したのだろうか。

また中国移動と、5G設備の共同建設、シェアについて協議中と報道された。まだ実質的進展はなく、中国移動の董事長は、具体化するのはは来年だろう、と発言している。突き放したようにも聞こえ、天下の中国移動としては、内心面白くないのかも知れない。

■勢いづく中国の5Gだが…

中国の5Gは、勢いがついている。ハードウエアでは他を寄せ付けない。

9月末の「中国互聯網発展状況報告」によると、現在毎週1万5000カ所の5G基地局が建設されている。年末には60万を超え、地方都市までカバーできそうだ。応用研究も進み“5G+工業インターネット”の新プロジェクトは600を超えた。

またCounterpoint Researchの最新レポートでは、7月の世界5G端末のうち79%は中国から出荷されていた。5Gスマホのシェアは、ファーウェイシャオミOPPO、VIVOの中国4社で80%を超え、2020年の出荷量は1億4000万台に達するという。大した勢いだが、iPhoneの5Gがこれからであることや、米中対立によるファーウェイの苦境など、まだ不確定要素ばかりである。

運営面では、4大キャリア体制が、ようやく形を表した。ネットメディアは5G“四国混戦”、で、新しい競争が始まるとしつつ、広電の未来については、明言を避けている。結局、いずれも国有企業で、政府の采配により、どのように展開するかわからないからだろう。広電は予定どおり、三網融合の主体となるのかどうか。

日本は5Gの展開で遅れたが、楽天は9月末、5Gの2980円プランを発表した。3大キャリアは9000~1万円以上だ。価格破壊者として、期待された役割を果たすつもりのようだ。それぞれ政策課題を担う日中の第4キャリアだが、日本は民間の争い、中国は政府内の争いのようである。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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