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<コラム>中国の国慶節で目の当たりにした、こちらのお国事情

配信日時:2020年10月2日(金) 10時0分
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数年前の北京の知⼈の⼦供の夏休みの課題図書、「閃閃的紅星」と「両个小八路」。定番中の定番な中国の抗日図書であるにもかかわらず、日本語でいくらググっても見つからないぐらい日本人には知られていない。
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国慶節前後のこの季節になると、否が応でもこちらのお国での国威掲揚の諸々を目の当たりにせざるを得なくなる。国慶節がらみの諸々の催し物もそうだし、抗日に絡んだ諸々もそうだ。

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そんなわけで先日もインターネット上で日本語を教える多人数レッスンを担当していた時に、チャット欄に突然「明天是9.18 日本真是不知恥辱!(満州事変の発端となった柳条湖事件/南満州鉄道爆破事件が生じた明日9月18日に日本は恥を知れ!)」という書き込みをする生徒さんが現れた。

日本語レッスンの時にそれを言うのか…と不意を突かれたこともあり、驚いて机の上にあったコップの白湯をこぼしてしまったのだが(買ったばかりのレノボのパソコンは無事だった)、チャット欄ですぐに別の生徒たちから、そんなこと先生個人に言うもんじゃない云々といったフォローが入る。

僕もそれなりに真顔で「中国で実際に人を殺した年配の人からじかに話を聞いたことがあるけど(これは25年以上も前の実話である)、本当に後悔していたよ。許してあげたらいい、もう十分苦しんでいるんだから」と中国語で話してからレッスンを再開する。

すると後になって、なんと当の生徒さんが、僕との日本語の会話レッスンのために手を挙げてくれているではないか。おうおう、いらっしゃい。

それでその生徒さんと会話練習をして初めて(多人数レッスンは回線環境の関係で生徒さんは音声だけで会話に加わるため、声は聞こえるが顔が見えない)、その生徒さんが実は小中学生ぐらいの年齢の子供であることを知り、思わず苦笑してしまった。

このことを中国人の妻に話して改めて思うに、純粋な中国の人(特に子供たち)ほど、分かってほしいと思うあまり、たとえ日本語レッスンの途中であってもそういう書き込みをしてしまうらしい。

だから会社(つまり中国大連にあるオンライン日本語学校)から、今回の件はお詫びします重く受け止めていますと言われても、いや子供たちには絶対罪はないし、他の日本人の先生方も中国の企業で中国の人を教えているんですから同様のことがあってもまあ大丈夫だと思います、と答えざるを得ない。

簡単な言い方をしてしまえば、それがこちらのお国の事情なのだから。

5年ほど前に「中国・北京で抗⽇戦争勝利70周について思う」という記事を書いた折にも紹介させていただいたが、北京でメガネ店に勤める知⼈のところに⾏った折、その知⼈の⼩学校5年⽣になる⼦供の夏休みの課題図書は、「閃閃的紅星」(長じて抗日戦争に身を挺した輝く赤い星のような少年の意)と「両个⼩⼋路」(抗⽇戦争で主力を担った中国⼋路軍の二人の少年の意)だった。

この課題図書は中国語の分かる人が簡体字で「百度」すればすぐに見つかる定番中の定番な中国の抗日図書(しかも映画やアニメも有名)であるにもかかわらず、日本語でいくらググっても見つからないぐらい日本人には知られていない。

少し前に「中国、『ハリポタ『が推薦図書に 『窓ぎわのトットちゃん』も|共同通信」というニュースがあったが、「ハリポタ」が推薦に価する図書なのかどうかは置いておくとしても、こちらのお国の事情が本当にそうなのであれば、上述のような「閃閃的紅星」な「⼩⼋路」ちゃんの罪のない発言は決してないのである。

そのぐらい、日本人は「こちらのお国の事情」を知らない。だから、中国また中国の人との間に相応のねじれが生じるのは無理からぬところなのだろう。

では、中国人と結婚し、中国に10年以上住み、中国籍の娘を中国の公立小学校に行かせている、「こちらのお国の事情」を相応に知る僕たちはどうなのか。

実のところ、僕らはあの尖閣諸島(中国名:釣⿂島)の諸々があった頃に付き合いだしたから、⻘島(当時は⽇本企業への焼き討ちがあった反日運動の拠点の一つだった)出⾝の中国人の僕の妻はその当時、どうしたら⽇本⼈の僕の⾝の安全を確保できるかと、かなり真剣に悩んでいた。

最近小学校に入学したばかりの娘にしても、毎週月曜日は国旗掲揚の儀式があるそうで、小学校の隣の小区(日本の公団の街区のようなもの)に住んでいるせいもあり、小学校から流される大音量の中国国歌を毎週否応なしに聞かされている。

幸い小学一年生はまだ国旗に敬礼したり国歌を「歌う」ことまで求められていないものの、昨日も「何か愛国な絵を描く」という宿題を持って帰ってきたので、じゃ学校の校舎の絵でも描いたら?と事なきを得たが、この程度の「ねじれ」は既に日常茶飯事である。

やがては、学校で抗日関連の授業もあろう。

当然、じゃ皆で抗日寸劇を演じましょう!となるかもしれず(例のTikTokでは父兄がその手の動画をシェアしたりしている)、娘の小学校就学中はずっと、否が応でもこちらのお国の事情を目の当たりにせざるを得ない。

そう、これからは国慶節がらみの諸々もそうだが、国慶節が終わっても、ずっとそうなのだ。

■筆者プロフィール:大串 富史
本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間滞在、中国・青島に3年間滞在。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。

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