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憲法改正が国際問題化することは通常ありえない話だ。しかし、中国は「安倍首相、憲法96条改正に意欲」というニュースを、いわゆる日本脅威論の一環として大々的に報じた。写真は国会議事堂。
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憲法改正が国際問題化することは通常ありえない話だ。しかし、中国は「安倍首相、憲法96条改正に意欲」というニュースを、いわゆる日本脅威論の一環として大々的に報じた。中国国民にこうした意識が浸透すれば、本来国内問題でしかない「改憲」が国際問題化しかねない状況だ。
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■安倍首相、憲法第96条改正に意欲
安倍晋三首相は2月4日の衆議院予算委員会で、「たった3分の1の国会議員が反対することで国民投票の機会を奪っている。世論調査で十分な賛成を得ていないが、必要性を訴えていきたい」と答弁。憲法第96条改正に意欲を示した。
この発言は中国で大きく取り上げられた。「憲法第9条改正の道を開くことが目的」だと指摘し、批判的に報じている。中国メディアは海外ニュースを報道する際、通常、海外メディアの翻訳、紹介という形式を取ることが多いのだが、今回の場合では日本主要メディアはそこまで踏み込んでいないにもかかわらず、憲法第9条改正の危機だと大々的に喧伝している。特に中国中央テレビ(CCTV)のニュースで大きく取り上げられた。
■中国の過剰反応
外国の憲法改正がニュースになるなど通常ありえない。自国民の生活には何の関係もないのだから。さらに言えば、今回の話は改正要件の改正に意欲を示しただけの話でしかない。
しかも話は第96条に関してのものなのだが、ニュースでは「憲法第9条改正の布石」とテロップが出たり、憲法第9条の「戦争の放棄」という言葉を大きく映し出すなど、まるで9条改正案が提出されたかのような騒ぎっぷりだ。
逆に言えば、中国憲法がいつ改正されたか知っている日本人はどのくらいいるのだろう。しかし、そもそも中国の中華人民共和国憲法は制定以来たびたび改定されてきたが、いつも極秘裏に進められ突然発表されてきたのだが。そのため中国の憲法改正は学界やメディアで事前の議論がなされることはほとんどない(註1)。そのため事前に外国で中国憲法改正を報道することはまずできないと言ってよい。
■憲法改正は外交問題化するのか?
誇張された報道の裏側には、日本脅威論を喧伝する機会を逃したくないという中国の本音が透けて見える。
改憲は日本の国内問題であり、中国には何の関係もないはずだ。中国全土で改正反対のムーブメントでも起こそうというのだろうか。とはいえ過剰な報道が続き、「改憲=日本の軍国主義化」という認識が中国国民に広がれば、たとえ第9条に手を付けない憲法改正であっても、外交問題化しかねないという懸念はある。あるいはそれこそが中国の狙いなのだろうか。
今このような報道が続けば、日本の改憲も靖国問題などと同じように中国政府が妥協できない問題となってしまうのではないか。
さて、この報道を一般の中国人はどう受け止めているのだろう。そもそも「日本の憲法第96条が」「日本の憲法第9条が」と聞いても、条文の内容を知っている人はそうそういないだろう。もし一般の中国人までもがそこまで日本の憲法を知っているようになったとしたならば、外交問題化は近いかもしれない。
(註1)高見沢磨=鈴木賢『中国にとって法とは何か―統治の道具から市民の権利へ』岩波書店、2010年、112頁。
◆筆者プロフィール:高橋孝治(たかはし・こうじ)
日本文化大学卒業。法政大学大学院・放送大学大学院修了。中国法の魅力に取り憑かれ、都内社労士事務所を退職し渡中。現在、中国政法大学 刑事司法学院 博士課程在学中。特定社会保険労務士有資格者、行政書士有資格者、法律諮詢師、民事執行師。※法律諮詢師(和訳は「法律コンサル士」)、民事執行師は中国政府認定の法律家(試験事務局いわく初の外国人合格とのこと)。『Whenever北京《城市漫歩》北京日文版増刊』にて「理論から見る中国ビジネス法」連載中。
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