端っこのマークからみんなのお祭りへ、「弾幕」はなぜ若者に人気なのか―中国メディア

人民網日本語版    2020年8月2日(日) 15時10分

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「名作+弾幕」というアートのミックスアンドマッチにより、4大名作は今また夏休みシーズンに大勢の若者の文化にまつわる記憶の扉を開けた。

「名作+弾幕」というアートのミックスアンドマッチにより、4大名作は今また夏休みシーズンに大勢の若者の文化にまつわる記憶の扉を開けた。

6月12日、中国の動画共有サイト、ビリビリ(bilibili)に中国中央テレビの4大名作ドラマがアップされて広く注目を集めた。評価、再生回数、弾幕(コメント)の量ともに断トツで、瞬く間にビリビリの各種ランキングを独占し、関連の話題や討論のアクセス数もうなぎ登りとなった。1カ月以上たった7月27日になっても熱は冷めず、4大ドラマはテレビドラマランキングの上位にどっしりと座っている。

この弾幕文化はどのように形成されたのか、若者はなぜドラマを見るときに弾幕を張るのか。

弾幕:オタクが発信する記号から新たな相互連動スタイルへ

「舶来の文化」としての弾幕は日本に起源があり、ニコニコ動画が真っ先に打ち出したものだ。サイトのメインユーザーはいわゆる「オタク」で、パソコンの画面の上に小さなフォントで記号を打ち込み、オタクコミュニティーの中で存在感を示していた。どこかにこもって、パソコンの画面にだけ向き合う彼らだが、打ち込んだ記号で意気投合し、結びついていた。

弾幕は通常は画面の中でのドラマの即席コメントであり、表現スタイルは短く簡潔で、一言か二言のコメントが多く、1語だけのものもある。弾幕は新しい流れの相互連動スタイルで、動画ユーザーを「傍観者」から「参加者」に変え、さらには動画作品の重要な構成要素にさえなった。

目下の弾幕の相互連動モデルは漫画アニメバラエティー、映画などの動画サイトに多く集中しているだけでなく、各種の動画配信プラットフォームもこのモデルを利用してネットユーザーと送り手との間のコミュニケーションを実現した。ネットユーザーが自前で動画を作成する割合がどんどん高くなると、「弾幕の大軍」が徐々にユーザーが自発的に制作する「Vlog」(ビデオブログ)やオリジナル動画に流れていった。弾幕の登場で、受け手の伝統的な意味での動画やライブ配信の視聴行為がより豊富になったといえる。

弾幕の特徴:断片化する解読、リアルタイムでフィードバック

弾幕という言葉から断片化した状態がイメージされる。電光石火、片言隻句、率直、ウィット、風刺、ほんの一言二言で奇抜な意見を述べる、これが弾幕だ。そして一部の弾幕には感嘆の気持ちが表されている。

弾幕は「コメント」の範疇に入れられてはいるが、弾幕文化と伝統的な文芸評論との間には非常に大きな開きがある。相対的に言って、弾幕の一番目の特徴は「リアルタイム」だ。弾幕の評論の対象は作品の中のごく小さな短い断片であることが多く、たとえば役者の外見、登場した時の歩き方、服装、表情、話し方、一言の台詞、1つのシーン、小道具が本物らしいか、などだ。弾幕のコメントには当意即妙さが目立ち、注目するのは今ここであり、ユーザー同士が関わり合う中でお祭りムードが盛り上がり、決して真剣な思考や真の知識や鋭い見解を交換するものではない。弾幕はネット時代の産物だ。「深さ」が「速度」に置き換わると同時に、個性、断片化、平面化、喜劇的精神と、風刺、アンチエリートの傾向などはいずれも「ポストモダン」時代のもう1つの表現だといえる。

リアルタイム性、相互連動性、視覚的経験が弾幕文化の巨大な魅力を形作る。多くの人が、伝統的な文芸評論にはこうした魅力をもつことができない、さらに「深さ」があっても生き生きとした喧噪の中で生まれる呼びかけの声にはかなわないと感じている。

多くのユーザーは黙って動画を享受するだけではなく、心の内に自分を表現したい強い欲望をもっている。大衆には自分の考えを表現する権利があり、自分が楽しいと思うこと、いやだと思うことを率直に述べる権利があり、それが本当のことでありさえすればよい。

若者はなぜ弾幕の熱狂を享受するのか?

弾幕を通じて、受け手はオリジナル動画コンテンツを「二次加工」できるようになる。弾幕が相互に連動して、動画制作者と受け手の間の境界をあいまいにする。人々はもはや受動的に「流されたコンテンツを見るだけ」の従来のモデルを受け入れることはせず、動画コンテンツをリアルタイムで解説・批判し、さらにはパロディーも作り出す。

弾幕は知らない人同士のバーチャルな相互連動を促進する。これまでのような動画の下に書き込むコメントでは時間のずれが生じたが、弾幕はユーザーたちに「世界のあちらとこちらで同じ時を共有する」相互連動のシーンを提供し、お互いに知らないユーザー同士が動画のプログレスバーを見て同じ時間に自分たちのリアルタイムの感想や気持ちを表出できるようになった。

また、弾幕はバーチャルな観客になることもできる。湖南衛視の今年の春節(旧正月、今年は1月25日)特別番組の中で、安全な収録を行うため、会場に初めて「弾幕式観客席」を設置した。当日夜、全国の億単位の視聴者が設置されたスクリーンを通じて、「リアルタイム弾幕」の双方向方式で参加し、新型コロナウイルス感染症の中で温もりと力を届けた。

弾幕という創造性に富んだ相互連動スタイルが、遠く離れた場所にいる人々をバーチャルネットワークの中に集結させた。このことは私たちにロシアの思想家ミハイル・バフチンの「カーニバル性をもった広場における生活」を連想させる。それは階層、富、職業、年齢、身分などの違いを打ち破り、誰もがその中で平等に交流し、対話し、遊ぶことのできる空間だ。

もちろん、こうした一時的なバーチャルのカーニバルが実体ある空間の日常生活に代わるわけではない。なぜならそこには現実の暮らしにおける重要な要素の「現場感覚」がないからだ。動画サイトで弾幕を打ち込んでオンラインで初めて発信された映画の評論をするより、映画ファンらは一日も早く映画館に行って映画鑑賞の楽しみに浸りたいと考える。クラウド端末で歌手のライブを見るより、音楽ファンらはライブ会場で自分たちのスターに合わせて歌いたいと願う。こうしたわけで、私たちは感染症が完全に終息した後には、現場での体験がもたらす感動を再び味わいたいと願うのだ。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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