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<直言!日本と世界の未来>繰り返される豪雨被害、治水対策に万全を―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2020年7月12日(日) 7時0分
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九州、四国、東海の広い範囲で河川が氾濫。日本は災害大国であることを改めて思い知らされた。高齢者が逃げ遅れて犠牲になるケースが目立ち、治水対策のあり方が問い直されていると思う。

「令和2年7月豪雨」によって九州、四国、東海の広い範囲で河川が氾濫。住宅街や特別養護老人ホームが浸水して多数の犠牲者が出た。日本は災害大国であることを改めて思い知らされた。高齢者が逃げ遅れて犠牲になるケースが目立ち、治水対策のあり方が問い直されていると思う。

熊本県球磨川など1級河川で氾濫や決壊が起き、氾濫危険水位を超えたのは130河川を上回る。国土交通省によると、梅雨時の大雨や台風で氾濫危険水位を超えた河川はこの5年間で5倍に増えたという。地球温暖化を背景に、従来の治水対策では通用しなくなってきているのが実情だろう。

政府は、災害リスクのある場所に立地する福祉施設や病院については移転を促す財政支援に取り組むというが、高齢者ら災害弱者を守る対策は優先的に進めてほしい。

経験したことのない豪雨によって緊急放流を余儀なくされ、下流域に危険が及ぶ事態も起きている。堤防などハードとソフト両面で対策の質を高め、地域防災の総合力を底上げしていきたい。

警戒を呼びかける大雨特別警報は11の府県で発令され、避難勧告も各所で出されたが、徹底されなかったケースもあるようだ。典型的な「同時多発型」豪雨で、被災情報の把握や救助は困難を極め、避難者は15府県で約7000人に上る。

電気、水道、鉄道、道路など公共インフラも大きなダメージを受けた。政府は激甚災害に指定し、財政措置を講じるというが、これだけの広範囲の災害には一刻も早い復旧のために、手厚い支援が必要だろう。新型コロナウイリスのリスクが高い中で不明者の捜索やがれきの処理に当たっている自衛隊や自治体職員、ボランティアの方々の尽力には頭が下がる。

日本では洪水や土砂災害のリスクが高い山あいや川沿いに多くの人が暮らす。今回の豪雨では堤防の決壊が相次ぎ、砂防ダムも十分に効力を発揮できなかったと聞く。そこで指摘したいのは、老朽化したインフラの更新など震災対策の見直しが急務なことだ。防災のための公共工事への対応が適切だったかどうか。「国土強靭化」計画なども打ち出されているが、必要な公共事業が後回しにされたと指摘する声もある。

国土交通省は計画中の主要河川の堤防整備を急ぐべきだ。前提となる雨量の見積もりなどについても、見直す必要がないか早急に検討してほしい。豪雨の危険を住民にいち早く知らせ、早期の避難を促す工夫も必要だろう。

深刻な自然災害は毎年のように起きている。海外でも米国、ヨーロッパや中国、インドなどアジア・アフリカ諸国で自然災害の猛威に直面している。世界で頻発する自然災害は、地球温暖化現象とも関係があるとされる。地球環境問題研究者によると温暖化が進むと大気中の水蒸気量が増え、一気に雨となって落ちるので豪雨が増えるという。

気候変動に関するパリ協定から米国が離脱するなど地球温暖化対策には逆風が吹いているが、改めて同対策の強化を促すよう各国政府や企業に求めたい。無公害車普及や化石燃料の抑制などを促進すべきであろう。

災害大国・日本では今後も集中豪雨など大規模な自然災害が起きる可能性は大きい。今回の豪雨を徹底的に検証して、教訓として対応策に生かしてほしい。

<直言篇123>



■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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