日本の銃弾1万発は一体誰のために提供されたのか=安倍内閣は変化に敏感、韓国は政治的失点―中国有識者

Record China    2014年1月10日(金) 19時21分

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10日、銃弾数発をめぐって日韓は数日前に舌戦を繰り広げた。韓国側は感謝していない様子で、国防省と外務省が直ちに日本側の説明を否定した。写真は38度線の韓国軍兵士。

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2014年1月10日、銃弾数発をめぐって日韓は数日前に舌戦を繰り広げた。原因は単純なようだ。日本メディアの12月24日の報道によると、同月22日早朝、南スーダン・ボル地区で国連平和維持活動(PKO)に参加している韓国工兵部隊の司令官から自衛隊のPKO部隊に電話があり、「周囲を敵に囲まれ、事態は非常に切迫している」として、銃弾1万発の提供要請があった。日本側は直ちに行動し、翌23日に銃弾1万発を韓国側に引き渡した。日本の各種報道はこの件を大いに称賛し、日韓関係の改善につながる等々と主張した。だが韓国側は感謝していない様子で、国防省と外務省が直ちに日本側の説明を否定。日本に感謝の意を表することはないとの声明を出した。(文:趙剛(ジャオ・ガン)中国社会科学院日本研究所日本問題専門家)

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PKOに参加する友軍間で必要な支援を行うことは、極めて正常な事であるはずだ。だが問題はそれほど簡単ではないようだ。日本政府の制定した「PKO協力法」によると、PKO参加時に日本が国連加盟国に提供できる物資に武器・弾薬は含まれない。この規定を日本の歴代内閣は繰り返し説明し、約束してきた。ここ数年、日本は海外での準軍事活動への参加に過度に積極的なきらいがあるが、「専守防衛」原則に基づき、この規定は遵守してきた。だが安倍政権が「積極的平和外交」政策を打ち出してから、事態に大きな変化が生じた。

今回の銃弾1万発は、「韓国軍の要請を受け入れて」(括弧付きにしたのは、日本側に直接要請したことを韓国側が正式に否定しているからである)から提供までに、わずか1日しかかからなかった。注目に値する点が2つある。

▼第1に、日本政府の反応の速さと効率の高さは驚くばかりだった。

日本では23日は天皇誕生日で祝日だった。だが韓国を「助ける」ために、菅義偉官房長官、岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、安倍首相は休みを返上して、12月4日に新設された国家安全保障会議(NSC)初の「4大臣会合」を首相官邸で開き、銃弾1万発の韓国側への提供を決定したうえ、同日中に引き渡した。戦後の日本の内閣は衆議制で、首相は内閣の総招集者に過ぎず、重要問題の決定時には閣僚の一致した同意を必要とする。今回韓国側に提供した物資(弾薬)は事実上武器の性質を備えており、PKO協力法の改正に関わる。手続き上は、まず閣議を招集し、全閣僚の一致した同意を経て新たな法案を作成し、国会に上程し、可決されて初めて執行できるようになる。だが今回安倍内閣は全ての手続きを完全に省き、少し前に可決した「国家安全保障会議設置法」に基づき、国家安全保障会議の4人体制の決定機関によって最終決定し、実行に移した。対応全体に1日しかかからなかった。

▼第2に、韓国側は結果の予測が不十分で、対応が混乱した。

今回の「銃弾」提供についての日本側の説明は冒頭で述べたように「事態の緊急性と人道面的観点から、韓国側部隊の要請に応じた」(菅義偉官房長官の25日の記者会見)というものだ。この説明を裏付けるため、テレビ局は小野寺防衛相と南スーダン前線の自衛隊司令官とのテレビ会談をわざわざ放送。井川賢一1等陸佐は緊急事態で弾薬が不足しているとして韓国側から要請があったこと、弾薬引き渡し後にわざわざ電話で感謝の意が伝えられたことを証言した。だが、韓国側の説明はこれと大きく食い違う。韓国国防省は24日の談話で「現地の事態は平穏であり、韓国軍は緊急事態に置かれておらず、弾薬不足の問題もない。国連から弾薬を借用したのは万が一に備えてだ」と発表。韓国外務省も同日「今回の弾薬支援は国連からのものであり、これについて評価は行わない」と表明した。韓国側は一体、直接日本側に弾薬支援を要請したのか、しなかったのか?双方の発言を聞くと判断は難しい。一つ確かなのは、韓国側は日本側が今回の件を利用することを望んでいないが、日本側はその反対だということだ。

▼今回の弾薬提供について、日本紙は25日付で各々社説を掲載した。各社説からは、この件に対する日本社会の全く異なる2つの見解が見てとれる。

日本紙は「弾薬の提供―『例外』の検証が必要だ」との見出しで、いわゆる「緊急事態」「人道性」との説明は、武器・弾薬は提供しないとの歴代内閣の原則に違反し、武器輸出三原則にも違反すると指摘。政府によるこうした「例外」決定は危険な行為であり、国際社会の日本に対する懸念を招くとした。また、安倍内閣が示した「例外」との理由に対して、韓国側の事後説明と比べて、疑問を呈した。

別の日本紙は「銃弾1万発提供 武器輸出見直し加速せよ」との見出しで、武器輸出三原則の条文はすでに時代遅れであり、この条文の見直しは日本の現実的な国家安全保障戦略と「積極的平和外交」における重要な措置だと指摘。今回の弾薬提供を契機に、武器輸出三原則の見直しを加速するよう政府に求めた。

韓国側に対する日本のネットユーザーの声がほぼ非難一色であることから、今回の弾薬提供は表面的には単なる対外支援だが、実は日本国内の政治動態にすでに急激な変化が生じたことの確かな表れであることが分かる。つまり戦後の平和路線を堅持する勢力と、米国のアジア回帰の機に乗じて戦後体制から脱して、いわゆる「普通の国」になることを望む勢力との力の拮抗に大きな変化が生じたということだ。

また、今回の出来事の経緯と結果から、安倍内閣が時局の変化に非常に敏感で、一瞬のチャンスを捉えることに長けていることが見てとれる。一方、韓国側の事後の釈明と声明は少し無理があるようだ。借用したのであれ譲渡されたのであれ、弾薬1万発は最終的に自衛隊から渡されたのであり、少なくとも現場の韓国PKO部隊は事前に知っていたはずだ。韓国側が現場と本国との意思疎通がスムーズでなかったのは明らかだ。しかも韓国は、その4日前の12月19日に「日本の集団的自衛権行使容認に深い懸念を表明する」との国会決議を採択したばかりだった。だが今回の国家安全保障会議名での韓国側への弾薬提供は、安倍内閣が危機を迅速に処理した成功例に変わるとともに、国家安全保障会議が今後類似の事態を処理する権限を強化する根拠とされる可能性が高い。結果的に韓国側が今回難題に足をすくわれ、政治的失点が多かったことは明らかだ。

安倍内閣の打ち出した「積極的平和外交」の第一歩は武器輸出三原則を見直して、日本の軍需産業の世界との連結、海外市場進出を果たすと同時に、武器・装備面の過度の対米依存から脱して、軍事産業の自主化を真に実現することだ。この点は来年初めにも閣議または国家安全保障会議で正式に決定されうる。

安倍内閣の最終目的は憲法改正だ。「国家安全保障会議設置法」によって、国家安全保障会議を設置する。「特定秘密保護法」によって、国家による世論コントロールを強化する。武器輸出三原則を見直し、さらに集団的自衛権の行使を容認する。その最終目標が憲法改正なのだ。(提供/人民網日本語版・文/趙剛・翻訳/NA・編集/武藤)

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