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<コラム>幼保一元化 果てしなき日本の夢

配信日時:2020年8月2日(日) 10時30分
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幼児教育は、世界中の隠れていて、そして重要な教育である。

幼児教育は、世界中の隠れていて、そして重要な教育である。生まれてから、3歳頃までは、人間は極めて狭い範囲しか認識しない。一般的に母子関係だけである。3歳頃になると、父-母-自分という三角関係、つまり「人間社会」を学び始める。もちろん兄弟姉妹などがいるとこれはより複雑にはなる。

言語能力も「聞く・話す」が成長し、意思の伝達がまだ頼りないとは言え可能になりだす。幼稚園が早い場合3歳児からを入園させるのは他人でも「教え育てること」が可能になるからだ。

幼稚園は「キンダーガーテン」という。ドイツのフレーベルという教育学者が作った言語である。適切な早期教育は、人間の可能性を広げることが多い。とはいえ、個人差も大きく、この期間は義務教育には含まれない。

また、長時間の教育は無理なので、午前中だけなどになる。登下園も一人では無理である。必然的に、母親の関与が必要になるから、家族構成、経済面でも義務教育には含まれない。

「なんか、エライ論説みたいでんな」

「吾輩、3年ほど幼児教育に関わった経験があってな」

「ああ…そういえば、聞いたような」

「ワン、お前にそんなことは話していない!」

「ウウウ…、ワン」

不可思議な柴犬、ワンのことは置いておく。

教育は、「国家百年の大計」であるが、明治時代との大きな違いは、知的世界・技術世界・産業世界の進歩や高度化が、凄まじいスピードで加速化していることである。

吾輩のこども時代、1950年代は貧しい日本であった。書いたことがあるが、当時、神戸市の家庭の電化製品は、傘電球、アイロン、ラジオだけだ。こういうのが一般的庶民の生活。鉄製扇風機は豊かな家にはあったらしい。

また例えば、いま現在、吾輩の住む鉄筋マンションの一部屋には水道の出口が4つもある。台所、洗面所、風呂場、トイレだ。戸建てなら、庭にある家も多い。昔は台所だけだ。どれだけ豊かになったことか…。

そして進歩も凄い。1980年代にビデオカメラが普及しだした。VHSのカセットで録画する。DVDになり、メモリーになった。なんとSDの264ギガ(録画方法とかでバラツキが大きいが、たぶんVHSカセット70本くらいが入る。2時間映画も70本くらい入る)は安売りで数千円である。

19世紀後半にでてきた電話。その家庭版の黒電話は、1950年代憧れだったが、音声とともに画像も通信できる一人一台の携帯に変わり、いまやスマートフォン時代である。こいつはGPSを使い、位置まで把握する。

「話し出すとキリがありまへんで」

「ありがとう、ワン」

こう言う新しい時代に、教育は対応しないといけないから、期間も長くなる。「生涯学習社会」である。

基礎的な知識を学ぶ学校教育も、小中学校9年でいいのかという議論をしている間に、日本では高等学校が90数%の進学率になり、実質的な学校教育期間は12年になった。

大学の方も、短大などを含めると50%の進学率を超えている。

そして幼児教育は、女性の社会進出とともに、保育所・保育園が増加し、この勢いは最近加速度的になっている。

因みに、中国などでは幼児教育の内容はドンドン進んでいる。一部では過熱化しているが、如何せん都市と農村間の差が大きすぎる。韓国などと同じく、大学などは「生涯を決定する」機関化している。日本でも似た状況とも言えるが、中韓は極端化しているのだ。

現在の日本は、封建・農村社会から殖産興業の明治維新・戦後の民主主義、高度経済成長と150年ほどの歩みで作られてきている。識字率などは江戸時代半ば以降の高さである。

韓国では李氏朝鮮という、農奴に近い極めて遅れた農村社会が500年続いた後、1910年の日韓併合から近代化が始まったとしても朝鮮戦争を挟んで100年ほどである。

中国は1949年の建国後70年である。しかも1978年の改革開放で資本主義的手法を取り入れて40年ほど。

中韓とも経済的に急成長したがこなれていない。また民度は経済後の発展である。その民度や道徳と密接に関係する教育制度は、極めて跛行的だ。

さて、幼児教育の日本の課題は、保育所(以下、保育園も含む)と幼稚園の乖離である。保育所は厚労省管轄、幼稚園は文科省管轄、というと、「読まれた方」は「ああ、そうか」と思われるかも知れない。最近、コロナで大騒動があったばかりである。

PCR検査が少ない、と思っていたら、なんと厚労省は、自分の管轄の保健所などしか手配していなかった、という事件である。民間検査機関も除外していたのは驚きだが、文科省の所管する大学には検査能力が十分にあったのに、これを利用しなかった。

役人全般の縦割り思考は首肯できるとしても、トップクラスのキャリア官僚の保身や頭のさび付き具合が心配だ。なにより、大局的に物事を把握して運ばねばならない政治家そのものが劣化していると心配になった。

この行政組織の縦割り、実は「幼保一元化」の支障になっている。「同じことしてるで」とまあ、一般の人は幼稚園も保育所も似たようなものだと思っている。もちろん、幼稚園は教育機関であり、保育園は保育機関で、目的が違う。でも内容的には重複している。

そこで2006年「認定こども園」という制度が出来た。幼保を一元化するのだが、これがなかなか進まない。親の働き方の変更にも対応できるし、育児相談などの子育て支援のサービスもしている。もちろん利用料金の設定などもあるが、なにせ既存の幼稚園は、職員の意識から変えねばならない。

勤務時間も給料も根底から違う。多くの地方自治体では、公立幼稚園の園長は、小中の校長先生と同格である。つまり、自治体の課長などの管理職と同じだ。(厳密に言うと教育職で差異がある)

ところが保育所の所長さん(俗には保育園の園長さん)は、係長扱いである。管理職に位置づけているところはあるかも知れない。これだけで、待遇や社会的な扱いが異なるのが判る。

言い方はキツイが「水と油」になってしまっている。抜本的な政策がないために、「認定こども園」になったものの、後戻りしたところなども見られる。

これを解消するには、最早、大きな政治的決断と、予算措置しかない。残念なことだが、タイトルのように「見果てぬ夢」である。100年後の少子化社会が懸念される。

■筆者プロフィール:石川希理
1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、仏教の勉強と瞑想を10年ほど。明石市と西脇市の文芸祭り選者。児童文学のアンソロジー単行本、小説の自家版文庫本など。

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