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<直言!日本と世界の未来>トランプ米大統領は「分断」止め「融和」を―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2020年6月7日(日) 5時20分
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米ミネソタ州で白人警官が黒人男性に暴行して死なせた事件をきっかけに、全米各地でデモが起きている。トランプ大統領は、米社会を「分断」ではなく「融和」に導くことこそが、責務であることを自覚してほしい。

米ミネソタ州で白人警官が黒人男性に暴行して死なせた事件をきっかけに、全米各地でデモが起きている。1960年代のキング牧師暗殺以来の事態だという。トランプ大統領は「国内テロだ」と非難。米軍の投入も辞さない強硬姿勢を示しているが、抗議の声に耳を傾け国民に寄り添う姿勢は見えない。米大統領は国家元首であり、すべての国民の代表である。米社会を「分断」ではなく「融和」に導くことこそが、責務であることを自覚してほしい。

暴力や略奪は決して容認されず治安の回復は必要だが、ほとんどのデモは平和的に行われているようだ。人々の憤りの根源を直視せず、抑止だけを強調するのは多くの善良な国民を敵視し、分断を助長する行為でしかない。トランプ氏は抗議に耳を傾け、なぜこうした事件が繰り返されるのか分析し、抜本的な対策を打ち出すべきである。

この背景にある米人種差別は根深い。世界大戦後も、南部諸州を中心に差別が公然と制度化されていた。50~60年代の公民権運動が弾圧にくじけず、法的差別の撤廃を勝ち取った。ところが不平等は今も厳然と存在。全米有色人地位向上協会によると、黒人の投獄率は白人の5倍に及ぶというから深刻だ。その一方で求職活動では、犯罪歴のある白人男性の方が、犯罪歴のない黒人男性よりも面接を受けられるチャンスが大きいというから異常である。

コロナ禍により米国では10万人超が亡くなったが、そのうち黒人の比率は人口比より突出して高い。積年の差別をコロナ禍が顕在化させたタイミングで、おぞましい暴行死事件が起き、火が着いたのだろう。「黒人の命を守れ」との掛け声の下、デモは拡大し、参加者は人種や世代を越えている。

多民族国家である米国の歴史は人種差別の歴史といってよい。それでも、面と向かって差別的な単語を発しないなどの「政治的正義」を確認することで、最低限の調和を保ってきた。

この秩序を崩したのがトランプ大統領である。差別的な言動を繰り返すことで、白人の支持を集め、2016年の大統領選に勝利した。今回の暴動が激化し収まらないのは、秋に次の選挙があり、再選を目指すトランプ氏が「支持者ファースト」の姿勢を強め、再び対立をあおる姿勢をみせているからだ。

私は1970~80年代に立石電機(オムロン)の海外営業担当として米国各地を飛び回ったが、人種を問わずどんな人にも成功の機会があるといわれる「アメリカン・ドリーム」は活力の源泉であり、内外のビジネスマンにとって理想だった。新たな移民がもたらすニューアイデアこそが米経済を発展させてきた。トランプ氏のルーツもドイツ系移民であり、その恩恵に浴してきたことを理解すれば、「国境の壁」にこだわることの無意味さがわかるだろう。

世界のリーダー国家・米国の混迷は、国際政治にも影響を与える。日本にとっても、看過できない事態である。トランプ大統領はそのトップにふさわしい品格ある言動や行動に努めてほしい。

<直言篇120>



■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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