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<直言!日本と世界の未来>米中はコロナ退治へ総力結集を=過去の危機から学ぼう―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2020年5月24日(日) 5時0分
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世界中で新型コロナウイルスが蔓延する中で、米中間をはじめとする国際関係が険緊迫化し、世界経済の先行きにも暗い影を落としている。コロナ禍は大惨事であり国際協調への回帰へ待ったなしだ。写真は米議事堂。

世界中で新型コロナウイルスが蔓延する中で、米中間をはじめとする国際関係が緊迫化し、世界経済の先行きにも暗い影を落としている。

米疾病対策センター(CDC)によると、米国内の新型コロナウイルス感染者が5月21日時点で157万人。死者は9万4000人に達し、トランプ政権の初動の遅れが批判されている。「コロナ失政」不人気に焦るトランプ大統領は11月の大統領選に向け、対中強硬戦略で挽回しようと必死のようだが、人類共通の敵「コロナウイルス」との戦いに水を差すだけでなく、世界経済の発展をも阻害する恐れがあると思う。

こうした中、トランプ大統領は一時、ツイッターで「中国ウイルス」と連呼。ポンペイオ国務長官は5月初めに新型コロナウイルスが武漢の研究所から流出した「大量の証拠」があると非難した。その後、ポンペイオ氏は5月16日に「どこから、また誰から伝染したかはわからない」とトーンダウン。「証拠」発言を取り下げた。

そもそも、米国内の感染爆発は、中国ではなく欧州から来たものである可能性が高いとされる。日本の国立感染症研究所による新型コロナウイルスのゲノム解析によれば、米国東海岸で猛威をふるっているウイルスはヨーロッパで広まっているものと近接性が強いようである(国立感染症研究所「新型コロナウイルスSARS-CoV-2 のゲノム分⼦疫学調査=2020年4月)。アメリカが中国からの入国を制限し始めたのは1月31日で、それから1カ月経った3月1日時点でのアメリカ全土の感染確認数はわずかに30人。この頃にはすでに中国での感染は終息しかけていたので、米国は中国からの感染伝播をほぼ完全に阻止することに成功したと見られるという。

米国で感染が急速に広まるのは3月半ばからで、この時期はイタリアなど欧州で感染爆発が起きていた。このタイミングから判断すると、米国に広まったウイルスは欧州から伝わったものとみられ、米国で感染が広まった理由は欧州からの伝播を防げなかったことにあるという。

トランプ米大統領の支持率は新型コロナウイリス対策の遅れや景気失速により低下。各種世論調査でバイデン民主党候補に10ポイント近く差を付けられているという。トランプ氏は「起死回生策」として、対中強硬策を次々に打ち出した。対中経済デカップリング(切り離し)策を掲げ、様々な分野の製品を対象に中国への依存を減らす方策を検討。税制優遇策や政府補助金を使い、中国外に生産や調達の拠点を移すよう働きかけている。

ところが、グローバル・サプライチェーン(世界的供給網)の中国依存をなくすのは容易ではない。新型コロナウイルスの感染拡大によって、自動車や電子、製薬、医療設備、消費品など、ほとんどすべてのサプライチェーンが中国に張り巡らされていることが浮き彫りになった。特に製造業は部品や素材の数が多く、生産の多元化を志向している企業でも、中国の影響から完全に脱却するのは難しい。

「米国第一主義」を掲げるトランプ政権は、国連やWTO(世界貿易機構)、WHO(世界保健機構)などの国際機関と距離を置き、パリ協定、イラン核合意、米ロ軍縮協定などからの離脱を打ち出した。歴史的な同盟の価値に疑問を呈した。この延長線上にある、米国のコロナウイルス禍への独善的な対応が世界に更なる災いと混乱をもたらすことを恐れる。

コロナ感染は国境を越えたもので、治療薬やワクチン開発などで国際協力が欠かせないが、今多くの国が国内の解決策に追われている。感染収束に一歩踏み出した中国も、当初から、外部からの支援や情報共有に消極的だったのは否めない。米中2大国による非難の応酬や他者への責任転嫁は、感染を封じ込めたり、サプライチェーンや金融市場を維持したりするのには役に立たない。

欧州でも欧州連合(EU)を離脱した英国に続いて、ハンガリーなど多くの国が地域統合に背を向けつつあるようだ。中国の指導者はハイテク育成政策「中国製造2025」のような唯我独尊的な構想を通じ、技術的自立の必要性を強調している。

以前の世界的な危機では、世界の指導者は協力する利点と、単独の行動が有効でないことを意識していた。1997年のアジア通貨危機では、危機が拡大するおそれが生じ、地域の首脳や米国、国際金融機関が対応に乗り出した。2008年のリーマンショックでは国際会議での協調的な戦略が、通貨切り下げ競争を抑制。中国が4兆元(当時のレートで約57兆円) の景気対策は「世界を救った」とされた。

今回の新型コロナウイルス禍は世界大恐慌(1930年~)以来の大惨事と言われる。国際協調路線への回帰へ待ったなしである。オバマ前大統領は5月8日、「米国人が今対抗すべきなのは、自己中心や人種主義、分裂主義、他人を敵と見なす思想で、これらは世界的な危機への対応において、力不足で不安定な原因のひとつとなっている。『自分にどんな利益があるか』『他人のことはどうでもいい』という考え方が政府の中で働く時、間違いなく混沌とした大惨事になる」と指摘した。トランプ氏の「大統領選ファースト主義」にくぎを刺したものであろう。

<直言篇119>



■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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2020年4月5日 7時20分
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