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<コロナ禍の米中関係>トランプ大統領の対中強硬戦略に高い壁=「Gゼロ」時代到来か

配信日時:2020年5月19日(火) 5時40分
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米中関係が険悪となり、世界経済の先行きにも暗い影を落としている。「コロナ失政」不人気に焦るトランプ大統領は11月の大統領選に向け、対中強硬戦略で挽回しようと必死だ。写真は人混みが消えたニューヨーク。

米中関係が険悪となり、世界経済の先行きにも暗い影を落としている。米国では新型コロナウイルス蔓延の被害が感染者、死者とも世界最多で、トランプ政権の初動の遅れが批判されている。「コロナ失政」不人気に焦るトランプ大統領は11月の大統領選に向け、対中強硬戦略で挽回しようと必死だ。ところが米中経済は緊密な相互依存関係にあるため、金融産業界は猛反発。株式市場の逆襲を浴び、デカップリング(経済切り離し)策は失敗に終わるとの見方が高まっている。

◆大統領選「挽回」へ対中攻勢

トランプ米大統領の支持率は新型コロナウイリス対策の遅れや景気の落ち込みにより低下。各種世論調査でバイデン民主党候補に10ポイント近く差を付けられている。トランプ氏は「起死回生策」として、中国に対し「武漢ウイリスが世界に広げた」と強く非難。対中デカップリング策を次々に掲げ、様々な分野の製品を対象に中国への依存を減らす方策を検討。税制優遇策や政府補助金を使い、中国外に生産や調達の拠点を移すよう働きかけている。

まず優先されるのは原料のほとんどを中国に頼っている医療品だが、電力や通信、IT、交通の関連機器など広い分野が対象になるとみられる。米国では、既に華為技術(ファーウェイ)を対象に、半導体や次世代通信規格「5G」設備などから締め出す動きを加速させている。

ところが、グローバル・サプライチェーン(世界的供給網)の中国依存をなくすのは容易ではない。新型コロナウイルスの感染拡大によって、自動車や電子、製薬、医療設備、消費品など、ほとんどすべてのサプライチェーンが中国に張り巡らされていることが浮き彫りになった。特に製造業は部品や素材の数が多く、生産の多元化を志向している企業でも、中国の影響から完全に脱却するのは難しい。

IT・家電業界では中国のインフラや専門化した労働力に依存している。中国政府は戦略的に資源を集中管理集し、製造基地としての優位性を維持・発展させる対抗策を展開している。

◆中国はコロナ禍脱出、生産・輸出戻る

米国をはじめとする世界のメーカー・流通各社は世界最大の消費市場としての中国の潜在力を重視。既にアップルのスマートフォンや米自動車・建設機械メーカーの主要市場となっており、将来ロボットや自動運転車、スマート設備などの主な消費市場になると見られている。トランプ政権の政治ショー的な対中強硬策とは裏腹に対中投資は活発化している。

米国の製造各社は世界最大の消費市場としての中国の潜在力を重視。既にアップルのスマホ、半導体各社製品や自動車の主要市場となっており、将来的にはロボットや自動運転車、スマート設備などの主な消費市場になると見られている。中国はコロナ禍による経済の落ち込みからいち早く脱却、4月の経済統計は軒並みプラスに転じた。輸出は前年同月比3.5%増と4カ月ぶりに拡大に転じた。工業生産は前年同月比3.9%増加。新車販売台数も前年同月比4.4%増えた。

新型コロナウイルス感染の拡大によって、世界の企業生産活動は厳しい状況に直面している。日本企業は中国で消費される製品の多くを日本から基幹部品等を中国に持ち込み製造しているが、基幹部品も含めて中国国内で現地生産をする戦略に転換する企業も増えている。

中国で5Gサービスは20年3月末には5千万件を超えた。5Gサービスは主要都市の多くをカバーし、対応スマホの機種は三月時点で70機種超と世界トップ。累計出荷台数は二千六百万台を超えた。ファーウェイや小米などが対応機種を増やしており、年内に100機種程度まで増える。米国の各国へのファーウェイ製品排除の働きかけも、日本、カナダ以外にはほとんど浸透していない。

◆米経済界、対中強硬策に反発

トランプ氏は5月中旬のテレビ番組で、新型コロナウイルスへの中国の対応について「とても失望している」と改めて不満を表明。「中国との関係を遮断することもできる」と豪語したが、米企業の多くは中国市場で、貿易・投資両面で大きな収益を上げている。米銀幹部は「実態を知らない暴論。中国は巨額の米国債を保有している。米金融市場は大混乱に陥り、株価は暴落してしまう」と冷ややかだ。

中国で5Gサービスは20年3月末には5千万件を超えた。5Gサービスは主要都市の多くをカバーし、対応スマホの機種は3月時点で70機種超と世界トップ。累計出荷台数は2600台を超えた。ファーウェイや小米などが対応機種を増やしており、年内に約百機種まで増える。現在は対応端末がないまま5G契約を結んだ消費者も多いが、切り替えが進んでいる。米国の各国へのファーウェイ製品排除の働きかけも、日本、豪州、ニュージーランド以外にはほとんど浸透していない。

◆対中経済強硬策は鬼門

米ニューヨーク市場ではトランプ政権の対中強硬発言による米中関係悪化を材料に株価が急落するパターンが目立っている。「経済のパフォーマンス」「高い株価」を看板政策としているトランプ氏にとって「対中経済強硬策は鬼門」(米アナリスト)である。

習近平政権は2017年10月の党大会で、2050年までに米国に並ぶ最強国になると宣言し、軍やハイテクに巨額の資金を注ぐ。「一帯一路」構想で世界に影響圏を広げ、サイバーや宇宙でも米国主導の秩序を切り崩しにかかっている。米中が新冷戦に突入すれば、世界経済への影響は甚大だ。

中国が重視するのは主に経済だが、中国経済の2桁成長はもはや過去のものであり、環境問題や高齢化、人口減少の問題に対処しなければならない。中国が早晩覇権国家となるとの見方は過大評価だろう。経済分野で、米中が並走し覇者が存在しない「Gゼロ」の時代が到来するとの見方が有力だ。(八牧浩行)

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