<コラム>中国、アフター・コロナの金融経済秩序を主導?(前編)ブロックチェーン展開で新システムを構築

高野悠介    2020年5月8日(金) 22時20分

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4月下旬、中国各地で学校再開のニュースが世を賑わせた。同時に経済、金融の重要ニュースも駆け巡った。ブロックチェーンとデジタル人民元である。資料写真。

4月下旬、中国各地で学校再開のニュースが世を賑わせた。同時に経済、金融の重要ニュースも駆け巡った。ブロックチェーンとデジタル人民元である。いずれも中国と世界のアフター・コロナに、大きな影響を与える内容を含む。一般の日本人は、どのように理解すればよいのだろうか。まずブロックチェーンから見て行こう。

■国家の動向-BSN

2019年10月、習近平主席は、ブロックチェーン技術開発を推進する発言を行った。ブロックチェーンとは、管理者不要の分散型トランザクション処理システムだ。中央集権の中国政府が、なぜその研究を促すのか。それは構想、BSN(Block-chain-based Service Network)があるからだ。ブロックチェーンの典型は暗号資産だが、金融、不動産業界、サプライチェーン、トレーサビリティ、行政など応用範囲は拡い。これらを根こそぎまとめてしまおうというのである。

BSNは2018年8月、国家情報センターと北京大学、大連理工大学が設立した“ブロックチェーン技術応用実験室”に始まる。スマートシティとデジタル経済の実現に向け、現実的なソリューションを提供しようという構想だ。2019年10月、内部テストを開始する。電信キャリアの中国移動や、銀聯カード等の企業が参加し、400社、600人の開発者に無償版を提供した。そして当初予定の通り2020年4月から、商用提供を開始したのだ。

■民間の動向、投資は量から質へ

民間の動きを見てみよう。IT巨頭テンセント創業者・馬化騰は「ブロックチェーンとは、生産要素としてのデータをより合理的に共有し、かつ分配可能にする技術だ。そのデジタル変革はあらゆる業界・業種に革新とひらめきをもたらす。一方、同技術はまだ発展途上で、解決すべき、挑戦すべき課題は多い」と述べている。

4月中旬、IPRdailyの「2019年世界ブロックチェーン特許ランキング」が発表された。首位はアリババ2314件、2位テンセント1296件、4位中国平安765件、6位微衆銀行396件と中国勢ばかりである。6位の微衆銀行はテンセント系ネットバンクだ。アリババとテンセントはダントツだ。

一方、投資はすでに調整期に入っている。2019年、中国のブロックチェーン投資は244億元(3700億円)、前年比40.8%減少した。投資傾向は初期投資から、買収合併、戦略投資へ向かっている。

そして中国では2万6089社(2020年1月)のブロックチェーン企業が登録されている。その46%は資本金5000元以下の小企業で、未だに新規の設立も活発だ。しかし、すでに投資家は量より質へ向かい、資金集めのハードルは高い。今年の投資動向が注目される。

■世界のブロックチェーンを統括

BSNは、いわばブロックチェーンのプラットフォームだ。企業や開発者は、BSNに接続すれば、ブロックチェーンベースのアプリケーション開発が容易となる。企業や公的機関等が、独自のブロックチェーン環境を構築する場合、年間のコストは10万元(153万円)以上かかるとされる。これがBSNを介せば、2000~3000元(3~4.5万円)ほどで、ブロックチェーン技術を利用できる。これによって新しいビジネスの成長を促し、ブロックチェーン技術の発展と普及を図る。

アリババの通販プラットフォームに出店した業者のようである。アリババに情報が集中するように、BSNに情報が集まるだろう。データセキュリティーは万全と強調しているが、実際はどうなるのだろうか。

そんな疑心暗鬼の中、4月25日、商用バージョンと国際バージョンがスタートした。現在国内76都市にノード(ネットワーク上の結節点)があり、さらに44カ所を建設中だ。海外にも8つのノードを展開している。

■まとめ

馬化騰の言うとおり、ブロックチェーン技術はまだ発展途上で課題は多い。BSNはプラットフォームに参加した上で、課題解決を図ればよい、というスタンスだ。とにかく管理者不要の分散型システムのブロックチェーンに、専用のプラットフォームが誕生した。BSNの先行きについて正確に見通せる人は、ほとんどいないだろうが、確かなことは、中国には戦略がある、という一点だ。研究は活発に行われ、民間投資は新しい段階に入っている。アフター・コロナ、中国をめぐる国際関係は厳しさを増す。BSNは順調に船出できるのだろうか。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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