東京の原宿・表参道エリアの発展から考えるこれからの商業復興―中国メディア

人民網日本語版    2020年4月25日(土) 7時10分

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新型コロナウイルスが感染拡大している中、中国の都市商業の復興をどのように加速させたらよいだろうか。写真は新型コロナ感染拡大前の原宿。

新型コロナウイルスが感染拡大している中、中国の都市商業の復興をどのように加速させたらよいだろうか。東京の原宿・表参道エリアの「個性的な店舗とコミュニティーの共同建設」が進む多様な商業エリアの発展状況は、都市商業の復興に有益なヒントを与えてくれるかもしれない。(文:陳雯・中国科学院南京地理・湖沼研究所研究員、中国科学院大学資源・環境学院教授、長江デルタ地域一帯化の政策決定諮問専門家。王震霆・中国科学院南京地理・湖沼研究所ポストドクター、熊本大学博士)

原宿・表参道エリアは渋谷に近い有名なファッション産業エリアだ。これまで何度も危機に直面しながら、打ち負かされなかっただけでなく、危機をチャンスに変え、適応力のあるモデル転換をして、繁栄し続ける旺盛な生命力を保ってきた。その経験や手法は大いに参考になる。

20世紀初頭にコレラの流行を経験した日本は、コミュニティーの緑化と公衆衛生に関する法律を制定して清潔を保つよう努め、日本の清潔さは世界でも知られるようになっていった。1950-60年代には明治神宮の表参道が建設され、沿道にケヤキが植えられた。環境が美しく整い、米軍施設のワシントンハイツや東京五輪の選手村が作られ、異国文化にあこがれる若者を引きつけ、消費エリアと文化的企画が静かに発展していた。原宿セントラルアパートと同潤会青山アパートは当時の2大流行発信地で、前者には荒牧太郎さんのファッションブランドの店、伝説の喫茶店・レオンなどがあり、後者は当時の日本で最先端の鉄筋コンクリート造りのランドマーク建築だった。

70年代にオイルショックが起きると、日本経済は低迷した。そうして都市エリアでは新しい消費スタイルと文化クリエーティブ企画が必要とされていた。雑誌では前衛的な「原宿特集」が組まれ、森ビルグループのファッションビル・ラフォーレ原宿は大学生や社会人の好むデザイナーズキャラクターブランド(DC)に狙いを定め、竹下通りは中学生向きの安い服、華美で反抗的ムードの「竹の子族」に狙いを定め、消費層の位置づけに成功し、原宿・表参道エリアは大いににぎわった。ライフスタイルプロデューサーの浜野安宏さんはファッションビル「FROM-1st」をプロデュースし、自然-クリエイション-建物-商品の融合を理念に、互い違いになった個性的な造りの中小規模店舗が並んだ商業建築群を生み出し、このエリアの商業的価値が急速に上昇した。渋谷区は区内一部地域の用地の用途変更を決議し、裏通りの住宅の約3分の2が商業施設と住宅が一体になったビルや店舗に改造された。

90年代初めにバブルがはじけると、このエリアの市場は徐々に竹下通り風のローエンド路線へ向かい、DCの店は多くが姿を消した。やがてエリアの中心は資産が相互に支援し合い、経営が相互に助け合い、交流を通じて共同でクリエーティビティを生み出す産業協力へと移っていった。93年にはセレクトショップ「NOWHERE」がセントラルアパートに開店し、アーティスティックなファッションブランド「MILK」とコラボレーションして若い男性を引きつける「ストリートファッション」を打ち出した。すると「裏原系」と呼ばれる裏通りの店が次々開店して、新たな消費の創造に乗り出した。こうした店舗は全体として元の街並みの雰囲気を残しながら、自然と一体化し、道に迷ったり道を尋ねたりすることでデザイナーも消費者も絶えず何かにぶつかるような感覚を味わい、それがきっかけとなってより多くのビジネスのアイデアや創作のインスピレーションが湧くとされた。とても重要なことは、ラフォーレが打ち出した若いデザイナーをはぐくむインキュベーター型サブブランドが、整った経営のプロセスとカリキュラムを備えた店舗支援システムを構築し、ストリート消費を牽引したことだ。

その後、このエリアには独創的な建築物が次々登場した。安藤忠雄さんと浜野安宏さんなどの建築家やプロデューサーが同潤会アパートの建て替えに関わり、文化的ランドマークの表参道ヒルズが誕生した。また、表参道にはディオール、トッズ、プラダなど高級ブランドの旗艦店が次々オープンし、どれも世界的に有名な建築家がデザインした前衛的な建物だ。こうして竹下通りを中心とするローエンド路線、ファッションブランドのア・ベイシング・エイプを創業した長尾智明さん、アンダーカバーのデザイナーの高橋盾さん、ファッションブランドのグッドイナフを創業した藤原ヒロシさんを擁する裏原宿のストリート消費、表参道の高級ブランドという3タイプの商業文化エリアが融合しつつ発展することになった。

新しい時代を迎え、日本経済の低迷とグローバル金融危機の影響により、日本のファッション消費は変化した。単身世帯の消費、一人分の「個食」、移り気でサイクルの短い商品の流行などを受けて、街並みとコミュニティーの商業は再びモデル転換し、クリエーティビティ、文化、商品の種類がさらに細分化し、位置づけもより精密になった。「カワイイ」文化を体現する店舗、よいものの魅力を伝える高級古着店、流行中のブランドを扱うセレクトショップ、快適で落ち着いたショッピングセンター、根津美術館などがある。

さまざまな発展段階の中で、このエリアでは昔からの住民と商業施設とのトラブルも起きている。表参道の発展の過程は、各方面の利益は常にぶつかり合いながら、住民と商店のコミュニケーションが少しずつ円滑になっていったプロセスでもある。町内会、店舗のオーナー、建物のオーナー、NPOの渋谷・青山景観整備機構(SALF)などさざまな主体が共同で原宿・神宮前エリアの改善を目指す団体を立ち上げ、定期的に会合を催し、問題を速やかに処理するとともに、地方自治体に改善改革を提起するなどした。かつて日本で行われた21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)では、住民と店舗オーナーが一緒に街の掃除をしたり、道路を補修したり、緑を植えたりして、環境が全体的に向上した。成果が目に見えるようになると、店舗やオフィスが次々とこの団体に加入し、住民、地方自治体、店舗のコミュニケーションの橋渡し役になった。このようなコミュニティー作りは街の繁栄を支える非常に重要なものだ。

大きな危機は大きなチャンスでもある。現在、中国も世界もビジネスの発展は最も困難な時期にあるが、これは同時に新たなビジネスチャンス、新たな市場、新たな環境をはぐくむ時期だともいえる。原宿・表参道の街並みの発展とモデル転換の過程では、消費層についての社会心理学的な正確な把握、清潔で自然豊かで安全な街並みという環境作り、建築物の形態の有機的な溶け合い、店舗のサービスのイノベーション・バージョンアップを誘導する総合的インキュベーション、コミュニティーとエリアが共同で作り出すガバナンスシステムなどは、中国の都市商業の発展にとって参考になる。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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