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<コラム>新型肺炎後の中国、「ブロックチェーン」「数字貨幣」の報道はデジタル人民元への啓蒙活動?

配信日時:2020年4月8日(水) 10時20分
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中国のネットメディアには、連日「区快鏈(ブロックチェーン)」「数字貨幣」「虚疑貨幣」「比特幣(ビットコイン)」等の見出しが踊る。資料写真。

中国のネットメディアには、連日「区快鏈(ブロックチェーン)」「数字貨幣」「虚疑貨幣」「比特幣(ビットコイン)」等の見出しが踊る。これらニュースの多彩さは、日本の比ではない。もう新型肺炎は過去になったようである。政府と市民の思惑は、どうなのか。記事内容から、新型肺炎後の姿を占ってみよう。

■中国政府のスタンス

中国政府は2013年、金融機関の仮想通貨取扱いを禁止、2017年9月には、仮想通貨取引所に業務停止を要請した。その結果、取引企業のZBグループはスイス、ビボックス(Bibox)はエストニアへ非難し、ビットコイン価格は暴落した。

しかし中国はマイニングを禁止していない。この部門には有力企業が多く、例えば「比特大陸(Bitmain)」は、ビットコインのマイニング機械に使うASCIというICチップを製造している。そしてICチップ、マイニング機の製造販売、マイニング、そのいずれも世界一だ。ちぐはくである。

習近平主席は2019年10月、中国はブロックチェーンを推進する機会を掴むべきと述べ、その真意を巡って、推測が飛び交った。非国家、非集権のブロックチェーンと、中国政府の中央集権イメージはそぐわない。そのため、人民元の国際化、ドル覇権への挑戦が目的だろうと考えられた。実際、仮想通貨取引再開へ向けた動きは見られない。

つまり、仮想通貨の取引きは当面できそうもないのに、記事だけはやたら多いのだ。こうした背景を抑えた上で、最新の論調を分析してみよう。

■CCTV(中央電視台)の解説記事

まず3月末のCCTVは、何を伝えたいのか、と題した記事である。仮想通貨とブロックチェーンの風は強くなる一方だが、注意しなければならないのは、次の2点であるという。

1.ブロックチェーン最大の価値は金融にある。これは法定仮想通貨への道を開き、ドル決済システムの迂回を可能にする。

2.ブロックチェーンの統一プラットフォームを確立する。管理部門が主導し、独自チェーンを全員参加のチェーンとする。

そしてインターネットの素晴らしさは、誰でも参加でき、一般の人々に利益をもたらすことだ。中央銀行によるデジタル通貨が、現金にとって代わる可能性が強まっている、と強調している。典型的な啓蒙記事だろう。

■市場分析は外国人

次はビットコインの3月暴落は、暗号通貨バブルの崩壊か、という分析記事である。3月12日の下落率は27%を超え、3月の1日平均価格変動は5.8%に及んだ。伝統的なリスクヘッジ資産の金は、1.6%に過ぎない。米国の金融サービスプロバイダー・OANDAのアナリストCraig・Erlamによれば、ビットコインはリスク回避の流れの中では高度に投機的だ。ポートフォリオの1部であっても、損失、追証リスクは避けられない、と述べている。

また新型肺炎により米国経済は衰退、現代史上、最大規模の景気後退となるかも知れない。3月、ビットコイン35%、XRP(リップル)25%、ETH(イーサリアム)は40%を超えている。

Mati・Greenspan(QuantumEconomics創始者)は、仮想通貨の価格変動は、歴史が浅く、普及率も限られているからという。これこそ価格変動の大きな原因だ。保有量が安定的に増加し、着実に価格上昇してこそ成功といえると述べている。

このように、欧米人の口を借りて、解説を加える手法も多い。形を変えた啓蒙記事だろう。

■仮想通貨以外の用途記事

最後は、仮想通貨以外の使途を奨励する記事である。ブロックチェーンの技術は、“価値のインターネット”として、その可能性は多方面に及ぶ。企業や政府の機構改革に寄与し、多方面にわたる“生産関係”をコントロールし、高い経済効率を達成する。ブロックごとにその過程を認証できるため、書き換え等の不正は排除され、特にフィンテックには有効だ。管理者から許可をもらった者だけが参加できるパーミッションド(プライベート)ブロックチェーンの考え方だ。

クラウドコンピューティングや、モバイル技術、人工智能と並ぶ、先進技術と位置付け、研究を奨励しているのである。

■まとめ

その他、仮想通貨長者の成功談、マイニング作業の損益を分析した“実用”記事もあり、百花繚乱だ。中国人ならではの、儲け話に対するひたむきさも、この盛んな情報発信の背景に違いない。とにかく中国政府は、あらゆる角度から啓蒙活動を繰り広げ、デジタル人民元への地ならしをしているようだ。

それとともに当面は、仮想通貨以外でブロックチェーン技術を磨く。最終的には、最先端技術を背景にデジタル人民元を発行、米ドルのくびきから脱する。

多彩な情報発信により、政府の思惑通りではないとしても、中国人の仮想通貨とブロックチェーンのへの理解は深まっているようだ。日本のマスコミは、未だに危険な投機商品扱いばかりだ。もっと深堀りが必要だろう。

■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。

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