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<コラム>新型コロナ感染者急増、最大の危機に直面する香港

配信日時:2020年3月24日(火) 19時40分
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これまで新型コロナウイルスの感染者が他国に比べて少なかった香港だが、ここにきて感染拡大の最大の危機にさらされている。
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これまで新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が他国に比べて少なかった香港だが、ここにきて感染拡大の最大の危機にさらされている。海外の旅行先や留学先から戻ってきた香港市民の相次ぐ発症や、香港内での集団感染などで、感染者数が一気に倍増したのだ。感染経路が不明なケースも出てきた。今後も留学生の帰国ラッシュが予想され、香港は感染リスクの拡大にかつてないほど緊張感が高まっている。

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香港の感染者数は、3月23日現在356人だ。初の感染者が出た1月23日から2月末までは合計95人だったから、わずか23日間で261人も増えたことになる。特に直近の1週間は199人と加速度的に増えている。感染者の多くがインド、エジプト、欧州、カナダなどの旅行直後だったり、感染拡大中の欧米などから「逃避」してきた留学中の若者だったりと、海外で感染したとみられるケースが突出している。しかも今後1-2週間は数万人が海外の留学先から香港に戻ってくるとみられているのだ。

こうした事態を受けて香港政府は、水際対策を強化する一方、3月に入って再開した公園や図書館、博物館などの公共施設を再び閉鎖。公務員も企業も再度、在宅勤務を優先させるなど、不要不急の外出を控えるよう呼び掛けている。

マカオと台湾を含む中国以外のすべての国・地域から香港に入境する人に対して、 3月19日から3カ月間、電子技術を駆使した監視システムを用いて14日間の強制検疫を行う(中国本土からの入境者に対する強制検疫はすでに実施中)。入境時に、位置を確認できる電子リストバンドを手首に装着し、隔離先に到着後、自身でリストバンドと連動する専用アプリを携帯電話にインストールしてもらい、稼働させる。隔離対象者が自宅やホテルなどの検疫先から離れたら、本人の携帯に警告が発せられ、衛生署と警察にも情報が伝わる仕組みになっている。警官はバーやレストランを回って違反者がいないか検査もする。虚偽報告も含めて、違反したら最高2万5000香港ドル(約36万円)と禁錮6カ月となる。

空港近くに検疫所も特設し、感染の疑いがある人を検査。陽性反応が出たら直接病院に運ぶ。さらに、25日から14日間、香港住民以外の空路での入境を原則禁止する。中国本土、マカオ、台湾からの入境は14日以内に他の国・地域への渡航歴がなければ認めるが、入境後14日間の隔離が必要になる。このほか欧米からの入境者にはウイルス検査を実施する。

一方、懸念されるのが市中感染の拡大だ。バーでの感染事例が相次ぐなか、このうちの一人が出席した約80人規模の結婚披露宴で集団感染が起きている。このほか、渡航歴がなく感染経路が不明な感染例も出てくるなど、不気味さを秘めている。

政府は23日、アルコールの販売許可を持つレストランやバー約8600軒全てで、暫定的に酒類の提供を禁止するよう条例を改正する方針を示した。パーティーなども自粛するよう要請している。

中国本土で新型コロナが猛威を振るっていた時は、本土からの入境を大幅に制限することで感染拡大を抑えることができた。しかし、ウイルスが欧米を中心に拡散する今、普段から海外旅行を好み、子息を英米カナダなどに留学させる家庭が多い香港人のライフスタイルが、香港にも脅威を及ぼす事態となっている。

感染拡大を回避するには、この2週間ほどが大きなカギを握るといわれている。香港は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)で得た教訓から、政府も市民も感染防止の意識が高い。消毒液の設置や体温検査など、街の至る所にウイルス対策の処置が施され、感染者情報も積極的に公開されている。過密都市で感染者が爆発的増加に転じないよう、SARSを経験した香港の底力が試されている。(了)

■筆者プロフィール:野上和月
1963年生まれ。1995年から香港在住。日本で産業経済紙記者。香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機関に勤務。1987年に中国と香港を旅行し、西洋文化と中国文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中国返還を見つめたくて来港した。新聞や雑誌などに、香港に関するコラムを執筆。読売新聞の衛星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、写真付きコラムを掲載した。

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