中国との友好の絆を財産として次の世代に引き継ぎたい―中村法道 長崎県知事

日本華僑報    2020年3月13日(金) 9時20分

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長崎県は中国と長い交流の歴史があり、全国に先駆けて中国との交流を進めてきた。写真は習近平国家副主席(当時)と会見する中村法道長崎県知事(2010年8月、北京・人民大会堂)【長崎県提供】

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長崎県は中国と長い交流の歴史があり、1972年の国交正常化直後に日本の地方自治体として初めて友好訪中団を派遣するなど、全国に先駆けて中国との交流を進めてきた。習近平国家主席は今後、国賓として来日する予定である。そこで、習氏と会見を重ね、親交を深めてきた中村法道・長崎県知事にインタビューした。中村知事は長崎県と中国の友好都市間の交流を示した上で、「地方政府間の交流は本当の友情と信頼の絆で結ばれた関係」と強調。「地方政府が果たすべき役割、国民の1人1人が担っていく役割は一層重要」とし、「友好の絆を大きな財産として次の世代にも引き継いでいきたい」と語った。(聞き手は人民日報海外版日本月刊編集長・蒋豊)

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▼長崎と中国との長く深い関係

――2010年8月、中村知事は当時国家副主席だった習近平氏と北京の人民大会堂で会見されましたが、会見の経緯と対話の内容について教えてください。

中村:長崎県と中国は海峡を挟んで一衣帯水の関係にあり、大変古くから盛んに交流を重ね、友好関係を築いてきました。日本が中国の歴史書に最初に登場するのは、『魏志倭人伝』の中に、長崎県の壱岐と対馬が登場し、隋、唐の時代、最終寄港地が長崎の島々でありましたし、鎖国時代を含め、長崎は中国との友好交流を図る中で大きな役割を担ってきました。そうした長年にわたる友好交流の歴史があり、今も長崎の街の中には、唐寺、中華街、孔子廟といった、中国の街のたたずまいがそのまま残されています。また、四季折々の伝統行事の中にも、春のペーロン選手権大会、夏の精霊流し、秋の長崎くんち、冬のランタンフェスティバルなど、中国の色彩が濃いお祭りや伝統行事も数多く残っています。

そうした中で、日中国交正常化(1972年9月)に際し、その前年(1971年)に、全国の自治体では初めて、当時の久保勘一知事が、中国は1つであると宣言し、併せて、長崎県議会が「日中国交回復と貿易促進に関する要望決議」を採択しました。国交正常化の1カ月後には、全国自治体の先陣を切って、友好使節団を中国に派遣し、中国の皆さんから熱烈な歓迎をしていただいたという歴史があります。

そうした先人の皆様方の熱い思いが通じ、1985年に唯一長崎県だけを所管する総領事館が本県に開設されました。私は2010年に知事に就任し、その年は、ちょうど上海国際博覧会が開催され、総領事館の開設25周年にあたる節目の年でした。上海万博を長崎県民挙げて応援し、友好関係を支えてくださった中国の皆様にお礼を申し上げたいとの思いから、8月に上海市と北京市を訪問しました。

北京市では、人民大会堂で習近平国家副主席とお会いする機会をいただきました。これまでの長崎の果たした役割についてご評価いただいたことの表れではないかと、大変感謝しております。

その際、私からは、これまでの長年にわたる友好と信頼の絆を大切にしながら、また、中国総領事館という交流基盤も大切に生かしながら、更なる多様な分野にわたる交流を発展させていきたいと申し上げました。また2011年が辛亥革命100周年の年でしたので、辛亥革命を指導された孫文先生と、先生を支えた長崎の梅屋庄吉との、国境を越えた真の友情で結ばれた関係を幅広く情報発信し、多くの日中関係者にも知っていただきたい、また、そのためのプロジェクトも推進したいというお話を申し上げました。

習国家副主席からは、日中関係については、戦略的互恵関係をさらに拡大、発展することによって、これからの日中関係を築いていきたいとのお話がありました。また、長崎が地方政府間交流に果たしてきた役割について評価され、今後、多様な分野にわたる交流の発展への期待のお言葉を頂戴し、大変意義深いひとときでした。

▼習氏、長崎ゆかりの地で17年間も勤務

――習近平氏と初めてお会いした時の印象はいかがでしたか。

中村:日本の一自治体の長が面会させていただくということは大変貴重なことであり、緊張いたしましたが、大変包容力のある優しい人柄の指導者だという思いを強くしました。

習副主席は、長崎と中国との交流関係について詳しくご存じであり、私も大変驚きました。習副主席は、1985年に福建省アモイ(厦門)市の副市長の役職に就任されましたが、アモイ市と佐世保市は1983年に友好都市関係を締結しておりましたので、両地域の友好交流の発展にご尽力をいただきました。また、1990年には、長崎市と友好都市関係である福州市の書記に、さらに、2000年には、本県と友好県省を締結している福建省の省長にご就任されており、長崎にゆかりの深い福建省の各都市で、実に17年間にわたりお仕事をなされておられたということで、改めて感動しました。

また、習国家主席には長崎に2回お越しいただきました。1993年の福州市の書記をお務めの時と、2001年に福建省の省長をお務めの時です。

人民大会堂での会見の際、副主席からは、ご来県の折、県庁を訪問された際に、職員が玄関の外まで列をつくって拍手をしながら歓迎をしてくれたことを非常に印象深く覚えているというお話がありました。ハウステンボスに宿泊された際、「長崎の観光は大変発達しているという印象を持ちました」と話されたのが、印象的でした。

▼来県されれば、県民を挙げて歓迎したい

――2019年12月、安倍首相は北京を訪問し、習国家主席と会談され、ともに「日中新時代」の実現を目指すことを確認しました。習主席は国賓として、今後来日する予定ですが、どのようなことを期待しますか。

中村:昨年12月、習主席と安倍首相が北京市で会談をされて、日中両国がアジアや世界の平和と安定に対する責任を共有するということで一致されました。ぜひ長崎にもう一度お越しいただきたいと願っています。

2015年にも習主席は「日中関係は一衣帯水の関係にあり、平和と友好が両国国民の心の主旋律である」と話され、その際、長崎にゆかりの深い隠元禅師の足跡についても触れられました。今年はちょうど隠元禅師が出家されてから400周年です。そして隠元禅師を4度にわたって招請した、ゆかりの深い長崎の興福寺創建400周年という大きな記念の年になります。長崎県では今年、隠元禅師と黄檗文化に関する特別企画展を開催しようと計画しており、もう一度長崎の中に残された中国との友好交流の歴史に触れていただく機会を賜りたいと願っております。その際には、県民を挙げて歓迎したいと思っています。


▼地方政府間交流は真の友情と信頼の絆

――中国と日本の地方間交流の重要性と協力について、ご提案などあればお聞かせください。

中村:国と国との関係は、いろんな交流のチャンネルがあり、国家間の関係もあれば、地方政府間の関係もあり、あるいは国民レベルの交流のチャンネルもあります。両国関係が良好に進展しているときには、経済も発展し、文化交流も人的交流も発展しますが、利害関係が対立することもあります。そのような時には、地域間交流、国民交流、民間交流が非常に重要な役割を担うと思います。

というのは、地方政府間の交流は真の友情と信頼の絆で結ばれた関係です。国対国の関係が難しい時期には、地方政府が果たすべき役割、国民の1人1人が担っていく役割は一層重要な意味を帯びてくると思っております。そのような思いから、本県は、孫文先生と梅屋庄吉との真の友情について、日中両国で幅広く知っていただくプロジェクトを実施してまいりました。そして、現在は、隠元禅師と黄檗文化に着目し、これまでの歴史を顕在化させ、同じ文化を共有しながら両国の交流が発展してきたということにもう一度光を当てたいと思っているところです。これらの取り組みにより、地域同士の相互理解、また、国民同士の相互理解と信頼の絆がより強固になると思います。

これまでの長い歴史の中で、友好交流と相互の発展の時期があったことを、特に次の世代を担う若い人たちに知っていただきたい、そして、友好の絆を大きな財産として次の世代にも引き継いでいきたいと考えております。

具体的な若者同士の交流事業として、日中「孫文・梅屋庄吉」塾と銘打った事業をスタートさせ、今年で6年目を迎えました。この事業では、若い人たちが日中両国から集まって意見交換を行う場を設けております。また、日本と韓国との間でも、日韓未来塾という形で、若者の意見交換や今後の交流のあり方について議論をする場もあります。

このように、近年、中国や韓国の皆様をお迎えして交流を深めており、日本・中国・韓国の3カ国の若い人たちが一堂に集まり、同じ海を共有する関係の中で、将来の友好交流の発展に向け、若い人たちの思いを結ぶ機会になればと思っております。

――現在、大変な状況にある中国の新型肺炎対策について、どのように評価していますか。

中村:武漢市を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大し、中国の皆様の日常生活にも多大な影響が出ていることに心からお見舞いを申し上げたいと思います。

私どもも幸いマスクや防護服などの物資を備蓄しておりましたので、友好関係にあります湖北省、福建省、上海市の皆様方に、この中から一部を提供いたしました。中国の皆様が懸命な努力をなさっていることをよく存じあげており、一刻も早く事態が収束し、平穏な生活を取り戻されますよう願っております。

日本でもまだ感染症の発生が抑えられない状況ですので、1つの自治体として、防疫対策や医療体制の整備等に引き続き全力を注ぎ、一刻も早く事態が収まるよう努力していかなければいけないと考えています。(提供/人民日報海外版日本月刊)

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