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<コロナ危機と中国>感染抑え「反動消費」ブームも=21年7%台成長か―「上意下達」「監視社会」の功罪

配信日時:2020年4月4日(土) 7時20分
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コロナウイルス感染が世界各国に拡大している中で、習近平政権は「国内の感染ピークは過ぎた」と宣言。大半の業種で営業が再開され、武漢市の封鎖も4月8日に解除される見通し。写真は武漢市の医療関係者。

新型コロナウイルス感染との闘いが世界的に深刻な状況に陥っている中で、中国では習近平政権が3月中旬に「国内の感染ピークは過ぎた」と宣言。大半の業種で営業が再開され、武漢市の封鎖も4月8日に解除される見通しである。中国はイラクやイラン、イタリア、スペイン、米国、日本などへの医療協力を展開し始めた。

中国指導部は、世界的な危機がきっかけで共産党政権の基盤を保てなくなることに不安を抱いているが、1990年代末のアジア通貨危機、2008年のリーマン・ショック危機などをバネに進化を遂げて発展してきた。ところが1100万人都市・武漢で蔓延したコロナウイリス感染は想定外だった。生命安全の問題にかかわるもので、国民の許容は難しく、強権で容易に納得させられる分野ではない。1~2月の主要経済指標は大幅マイナスに沈んだ。中国国家統計局などが公表した最近の経済統計を分析すると、第1四半期(1~3月期)の国内総生産(GDP)は前年同期比40%前後のマイナス成長に陥ったと見られる。

新型コロナウイリスは、昨年12月末の段階で、武漢での蔓延の実態が隠蔽され、初動が遅れたと批判された。宮本雄二・元駐中国大使は習近平政権で権力の集中が進んだため、現場が自分の責任で対応する力が弱まったと指摘。「中国の国家組織の基本は、トップの指示を末端まで速やかに浸透させることで、習近平体制になって強まった。上からの指示がないと動かず、下から上がっていくことが、うまく機能しない組織の弱点を露呈した」という。

ところが、上から命じる感染封じ込めのフェーズに入ると、中国は「上意下達」の強みを発揮。ITによる「監視社会」もあって感染拡大を急速に止めることが可能になった。今の中国は「顔認証」システムにより、誰がどこで、いつ何をしたか、まで記録に残る。感染者との接触なども分かるので、感染ルートの解明も容易になった。今後は経済への影響をどの程度抑制できるかがカギになる。

◆14億人消費とIT・AIが成長エンジンに?

金融・財政措置を総動員してV字回復を目指す。3月に入って中国での感染者が激減し、大半の業種で営業が再開され、街に繰り出す人が増えた。1月23日以来の武漢市の封鎖も4月8日に2カ月半ぶりに解除される見通しである。北京、上海などの大都市では「反動消費」とのスローガンが踊る。

中国の孔鉉佑・駐日大使は「人口14億人超の消費により中国経済は力強く復活する」と強調。今回の新型コロナウイリス禍の局面で「無人店舗、遠隔医療、オンライン教育、新エンタテインメント、AI(人工知能)、5G(次世代通信規格)、EV(電気自動車)、ビッグデータなど新しい経済の形態が生まれている」と指摘、巨額投資と相まって大きな成長エンジンになると見ている。

アジア開発銀行(ADB)は、2020年のアジア新興国(アジア大洋州の46カ国・地域)の国内総生産(GDP)の前年比伸び率が2.2%にとどまるとの見通しを発表した。5.2%成長だった2019年から急減速し、アジア金融危機後の1998年以来22年ぶりの低さとなる。新型コロナウイルスの感染拡大で観光業や消費、投資が落ち込むためと説明している。

ADBは中国の2020年の経済成長率は、2.3%増と19年の6.1%増から減速すると予想。2021年のアジア新興国の成長率は6.2%の大幅な回復を見込む。中国は7.3%増と6年ぶりに7%台に乗ると予想している。

宮本氏によると、習政権は国民世論の動向に気を使い、これまで大多数の国民がノーと言うようなことはやっていない。「国民は『幸せな監視社会』と言われるほどIT管理社会を許容しているが、安心・安全という利益確保が前提。国民の利益に反したことにはノーを突き付ける」という。

武漢の深刻な事態を昨年12月末に伝えようとした李文亮医師が自らもウイルスに感染。2月に肺炎で亡くなったことは衝撃的だった。李医師は医療関係者ら多数が参加するグループチャットで危険性を訴えたが問題視され、処分の対象になってしまった。この医師が死去した日の夜、武漢市民は様々な形で一斉に追悼の意を表明。医師をたたえる言葉が数多く交流サイト上に発せられ、「人災」への批判も込められていた。不満の高まりに危機感を抱いた中央政権は国家監察委員会のチームを急きょ、武漢入りさせ、李医師の告発を闇に葬った責任を追及。一転して英雄扱いを認めざるを得なかった。

中国民は共産党政権が自分たちの生活を守れないと感じたら、一党支配の正当性にノーを突き付ける。だからこそ、習政権は海外向けと併せ、自国民向けの「復興アピール」に必死で、コロナ危機への対応に総力を挙げざるを得ない。(八牧浩行)

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