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<コラム>智の人は惑わず

配信日時:2020年3月18日(水) 23時0分
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「三徳」の最初のことば「智の人は惑わず」について説明しましょう。写真は東京・渋谷。

前回は米中貿易戦争について解説しました。その中国のこうした紛争の背景には中国人の何千年も積み重ねられた智謀があります。その一つに「三徳」があります。その「三徳」とは何かを説明しました。

論語に「智の人は惑わず、仁の人は憂えず、勇の人は懼(おそ)れず」という言葉がありますが、それは智仁勇の3つの徳からなっていて、世界を広く知るという智、相手を思いやる仁、ここ一番という時にものを言う勇気であり、これが「三徳」です。これはとは相手を説得するための極意なのです。

今回はその「三徳」の最初のことば「智の人は惑わず」について説明しましょう。

智の人は惑わず

物事を見通すということは簡単ではありません。リベラルアーツを勉強すればすべての物を広い視野で見通すことができるようになります。物事を見通すことができれば自分ができることとできないことの判断ができるようになるので、物事に迷わなくなります。その「智」を身につけるために、まずは世界の情報を読む事から始める方法が手っ取り早いと思います。世界を見据えた目線で世界の情報を読んで、その情報を分析し、議論する習慣が身につけば、すべての物事を広い視野で見通すことができるようになります。

世界の事象を勉強すれば知識を身につけるだけでなく、分析したり、議論したりすることによって、そう言う事象がどうして起こってくるのかの背景とか裏にあるものを推測する力がついてきます。そうした洞察力が身についてくれば日々の事象を分析し、対策を立てる上で役に立つようになるのです。世界を知れば翻って、日本のことがよく分かるようになります。また、大局的に広く学ぶことによって、些末なことに煩わされなくなります。

例えばサウジアラビアがイスラム教のワッファーブ派であり、ISISが同じワッファーブ派です。ですから、かつてはサウジアラビアはISISを支援していました。この両者の違いが何であるのかを分析すると国を持っているかいないかだけなのです。しかしながら、片方はテロ集団です。

今までの社会通念の世界から抜け出せないでいるとこうした議論は非常識だと判断してしまうでしょう。こうした柔軟な思考が日本人は出来ません。ということは世界の様々な事象の背景を理解する事が出来ないということのなのです。ということは何でも表面的なことしか理解できないことになってしまいます。

新聞を読んでいるだけでは何年読んでも、物事を見通すことはできません。こうした様々な世界の事象に疑問を持ち、議論しなければ物事を見通す力はつきません。特に日本人はこうした情報に対して議論をし、意見を戦わす習慣がありません。また日本の報道は絶対に正しいと新聞社が判断した情報しか記事にしません。ですから、読者はそうした情報に疑問を持たなくていいという文化を日本人は持っています。戦前の大本営発表がそうであり、現在もそうした傾向があります。

まったく根拠のない噂も、多くの人が言えば聞き手は信用してしまいます。しかしながら、真実も奇々怪々です。だから、本人以外本当のことはわかりません。また、本当の事実を言っても信じてもらえないことは多々あります。ですから、戦前の日本の近代史を読んでいると、国内のメディアと国民の世界の事象に対しての理解が海外における認識と全く違うことが何十年にわたってずれていることがわかります。今でも変わりません。慰安婦問題、南京大虐殺がそれです。本当のことはわからないのです。だから中国政府や韓国政府がこうした事象に訳のわからない噂を本当のことのように流布しています。こうした考えとか意見のズレはどこにでも起こります。また、こうした歴史の記事も英語と日本語とが多くの内容において異なっています。どっちが正しいのかわかりません。

「智」はこうした事実をどう分析し、判断していくか、そのための洞察力を養うのです。過去に起こったことは何が真実なのかわかりません。ただそうした事象をどう把握して、どう考え、どう判断するべきか迷わなくなるための修練を積むことによって的確なアクションができるようになります。それがここでいう「智は迷わず」ということです。

来月は「仁の人は憂えず」について解説します。

■筆者プロフィール:海野恵一
1948年生まれ。東京大学経済学部卒業後、30年にわたり、ITシステム導入や海外展開による組織変革の手法について日本企業にコンサルティングを行う。現在はグローバルリーダー育成のために、海野塾を主宰し、英語で、世界の政治、経済、外交、軍事を教えている。

※掲載している内容はコラムニスト個人の見解であり、弊社の立場や意見を代表するものではありません。
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