<コラム>アメリカ、極超音速兵器で中露に遅れて、危機感

洲良はるき    2020年3月8日(日) 15時20分

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米海軍長官が、ロシアの長距離極超音速兵器は、非常に大きな困難であり、アメリカ軍を絶望的な境遇にしていると発言したという。資料写真。

26日にアメリカ下院軍事委員会で、米海軍長官が、ロシアの長距離極超音速兵器は、非常に大きな困難であり、アメリカ軍を絶望的な境遇にしていると発言したという。中国共産党系列メディアである環球時報(電子版、2020年2月29日付)が伝えている。

トーマス・モドリー米海軍長官は言った。「現在、アメリカは大きな困難に直面しています。敵はちょうど長距離極超音速兵器の研究製造をしているところです。これはアメリカを絶望的な立場におとしいれる可能性があり、我々には取り組まなければならないことが益々多くなっています。アメリカは、この問題に対応するための各種の能力を進展させなければなりません。だから、我々は通常兵器型即時攻撃能力のコンセプトのもとで、兵器を研究開発しているところです」「海軍は空軍と協力して取り組んでおり、何を調達するかを考えているところですが、内容を公開することはできません」

ここ数カ月の間、極超音速兵器の開発で、アメリカはロシアと中国に遅れをとっていると、アメリカ国防総省関係者が何度も認めている。2019年12月17日には、アメリカ合衆国国防長官マーク・エスパーが、極超音速兵器の分野では、アメリカは遅れており、ロシアや中国を追いかける立場であると指摘した。 1月14日の記者会見では、アメリカ国防次官エレン・ロード(取得・維持担当)は、アメリカは極超音速兵器と、無人機の攻撃から防御する装備の研究開発に力を入れるつもりだ、と発言した。

英字軍事メディア・ブレイキングディフェンス(2020年1月31日付け)は、1月31日にモドリー米海軍長官が全海軍に送付した覚え書きで、極超音速滑空体技術について、海軍が今後に実験をおこなうスケジュールの概要を説明している。

「かつて核兵器が戦場の本質を変えてしまったように、極超音速技術の活用の可能性は戦場を変えてしまっている」と、モドレー長官は書いた。「だから、極超音速兵器について今日私達が命じるのは、全力をもってあらゆることを前進させなければならない、ということである」

また、同覚え書きでは、モドリー長官は、現状の極超音速兵器開発分野について、1957年の『スプートニック・モーメント』であると表現した。

『スプートニック・モーメント』とは、バラク・オバマ前大統領や、アメリカ政府関係者らが使った言葉だ。アメリカ合衆国が、特に他の国の軍事や技術面で遅れをとり、迅速に追いつく必要があるときに使われる。

元々の『スプートニック・モーメント』は、世界初の人工衛星であるスプートニク1号をソビエト連邦が1957年10月4日に打ち上げた後におきた。たった重量80kg程度の小さな人工衛星の打ち上げは、その後に続くアメリカとソ連の熾烈な宇宙開発競争を引き起こした。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

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