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<書評>中国人は、日本の何に戸惑い、何に感激するのか?=『中国人は見ている。』中島恵著

配信日時:2020年2月16日(日) 9時20分
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一衣帯水の中国。漢字や文化・風習を通じ日本と深い関わりがあるが、中国人の真の姿や考えは今一つ分かりにくい。日本を訪れた中国人は日本の何に戸惑い、何に感激するのか。日中の異文化ギャップが浮き彫りになる。

「3カ月行かないと別の国!」とまで言われ、激しく変貌する中国。一衣帯水の隣国。漢字や文化・風習などを通じ日本と深い関わりがあり、昨年1000万人近い中国人が訪日した。にもかかわらず、中国人の真の姿や考え方は今一つ分かりにくい。中国人たちは日本の何に戸惑い、何に感激するのか。日中の異文化ギャップが多くのエピソードから浮き彫りになる。

90項目にわたる目次タイトルを読むだけでも興味をそそる。「日本の高級接待、この料理だけは勘弁してほしい」「冬、子どもに半ズボンを履かせるのは虐待では」「わが社の始業時間がわからない」「テレビの中国特集、謎のテーマ曲の正体は」「日本の電車は、中国人にとって感動の宝庫」「贈り物をしたらなぜすぐに“お返し”するのか」「なぜ中国人は大阪派なのか」「飲み会で豹変する上司」……。

中国人にとって、日本や日本人の習慣、行動様式は謎だらけ。食べ物、働き方、人付き合い、社会……など、何がどのように不思議に思われるのか。中国人には異様に映る日本人の「あたりまえ」の数々に、思わず吹き出す日本の読者も多いだろう。

本書は、中国を留学や仕事を通じて30年以上ウォッチしてきたジャーナリストが、多くの中国人から話を聞き、本音を分析した力作。日本人が普段気づかない、本当の日本の姿も浮かび上がる。評者は中国庶民と触れ合う機会が度々あるが、日本で流布されるステレオタイプ的な「旧来の中国人論」に辟易することが多い。著者の一連の著作と同じく現場主義が貫かれ、実体験に基づいた新鮮な切り口に共感した。

日本での中国ニュースと言えば、共産党政権の動向や経済状況について報じられ、最近では新型コロナウィルス肺炎の脅威が取り沙汰されるが、個々の中国人の生活実態や日本に対する思いなどについて、報道される機会は少ない。この結果「多くの日本人が持つ中国、あるいは中国人のイメージは(旧来と)大きくは変わっていない」と著者は疑問を投げかける。

「社会の成熟化が進む中国では、日本について、科学技術だけでなく、社会や文化、芸術、行政、教育、医療・福祉など様々な面に対する興味や関心が猛烈な勢いで高まっている」と指摘。「日本人は中国のキャッシュレスやIT分野などに関心を持つ人が多く、ビジネスと言う観点では従来になかった展開が今後ますます増えていくだろう」と見る。

中国ではスマホ人口が10億人以上に達し、ウイチャットなどのSNSが大きな影響を及ぼしている。中国庶民の日本への“思い入れ”も伝わってくる。「中国人は縁を非常に大切にするが、縁とは国境を超え、人種を超えてつながっていくものだと思う。広い地球の中では、日本人も中国人も、関係ない」との呼びかけも説得力がある。

著者によると、中国人の多くは自分の国で起きていることは、スマホの発達で意外によく知っている。中国の庶民たちと本音ベースのコミュニケーションを長年築いて来た著者ならではの分析だろう。

著者の中国現地ルポ・シリーズには、『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないか』『日本の「中国人」社会』『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(日本経済新聞出版社)、『中国人エリートは中国をめざす』(中公新書)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)などがあり、広く読まれている。これら著作と同様、本書も、日中の政治体制は異なっても、受験や就職、結婚、介護に悩む市井の人々は同じという考え方が“通奏低音”になっている。分析は冷静だが、庶民に対する眼差し(まなざし)は温かい。(評者=Record China主筆・八牧浩行)

<中島恵著『中国人は見ている。』(日経プレミアシリーズ、850円=税別)

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