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<インタビュー>日中は文化的伝統と人類の理想追求を=川勝平太・静岡県知事

配信日時:2020年2月7日(金) 6時50分
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静岡県は浙江省と友好都市関係にあり、習主席とは同省トップ時代から深い交流の歴史がある。そこで習主席と交流のある川勝平太・静岡県知事にインタビューした。写真はインタビューに答える川勝知事。

今春、中国の習近平国家主席が来日する予定だ。静岡県は浙江省と友好都市関係にあり、習主席とは同省トップ時代から深い交流の歴史がある。そこで習主席と交流のある川勝平太・静岡県知事にインタビューした。川勝知事は「浙江省と静岡県の友情は揺るがない」と強調。今後中国との青少年交流が重要と指摘した上で、「一帯一路」(海と陸のシルクロード)に期待し、日中は文化的伝統と人類の理想をともに追求すべきだと語った。(聞き手はRecord China主筆・八牧浩行)

◆北京の人民大会堂で歴史的会見

―― 2010年1月、知事は当時の中国国家副主席だった習近平氏と北京の人民大会堂で会見されましたが、会見に至った経緯と、お話の内容について教えていだけますか。

川勝 静岡県と浙江省は1982年に友好都市になりました。私の前任の石川嘉延氏は16年間知事を務め、その間に、習近平氏は、浙江省省長、党書記(トップ)の要職を歴任されて、上海の書記になられた。私は2009年に知事になり、その年のうちに中国の浙江省を訪問しました。そのとき習氏はすでに国家副主席でした。

2009年暮れに習氏は国家副主席として来日され、天皇陛下と拝謁された後、長崎に行かれるとお聞きし、「静岡県にお立ち寄りくだされば、富士山ともども大歓迎をする」と申し出ました。丁寧なお返事が届き、「今回は日程が決まっていたので行けない」とのことでした。

翌2010年正月に「人民大会堂でお目にかかりましょう」という招待状が届き、感激し、老朋友の石川前知事とご一緒に訪中することにし、人民大会堂での習国家副主席との会見に臨んだというのが経緯です。会見はまことに和やかでした。

私は浙江省杭州市の「世界遺産 西湖(せいこ)」の絶景に感激していたので、習国家副主席に「中国では昔から山水と言われます。山は富士、水は西湖、恋人同士」と申し上げたところ、まるで「ロミオとジュリエット」のようだと話がはずみました。もっとも残念なことに、習副主席はまだ富士山を間近に見ておられませんでした。

その年2010年の後半は上海万博が予定されていました。08年の北京五輪に続き上海万博の成功を期待し、協力したいと考えていました。というのも、習氏の配慮で2009年6月に上海から富士山静岡空港へ東方航空の直行便が開設されたからでもあります。そこで私は、東方航空に乗って上海万博に静岡から「3776友好訪中団」を送ると申し上げました。習氏は「3776という中途半端な数字は何ですか」と尋ねられました。「日本では小学生でも知っている、富士山の高さです」と答えました(笑)。静岡県民の訪中団はその数字をはるかに上回り、大成功でした。

◆浙江省と静岡の友情は揺るがない

―― 2019年12月、安倍晋三総理が北京を訪問して、習近平国家主席と会談し、共に日中新時代を目指すことを確認しました。習主席が今春、国賓として来日しますが、静岡県民としてはどのように期待していますか。

川勝 浙江省と静岡県の友情は揺るぎません。浙江省の寧波は日本の遣隋使や遣唐使が着いた港で、京杭大運河をさかのぼり、洛陽や長安に学びに行きました。寧波は古代日本人にとって、中国の玄関口でした。

日本は黄河流域の唐から仏教、律令制、都城制、正史の編纂などを学び、長江流域の南宋から朱子学、禅、米作、お茶、ミカンなどを学びました。静岡のお茶は800年前に静岡県出身の禅僧・聖一国師が浙江省の径山萬寿寺に留学して持ち帰り、静岡の温州ミカンも浙江省がルーツです。中国・浙江省は日本・静岡県のいわば“両親”です。

現在の日本は国際社会で尊敬される存在になりました。“両親”には生涯の恩があります。中国への恩義を忘れず、温故知新で、友情を確認し、未来志向の友好を築くご訪問になるように願っています。

中国は、習氏が国家主席に就任された2010年に国内総生産(GDP)で日本を抜き、現在は日本の2.5倍を超えています。私が1980年代の学者時代に訪中した際、交通機関は自転車が中心でしたが、今は自動車で、アメリカが恐れる大国です。特にこの10年の中国人民の力は抜群です。14億の人民をまとめて国力に生かしていくのは、並大抵のリーダーシップではありません。

◆「緑の山河は金山銀山」

―― 中国は今、一帯一路構想を推進していますね。

川勝 中国の友人は、シルクロードは西安がターミナルだと思われていますが、日本人は奈良だと思っています(笑)。シルクロードは2000年前にローマと漢を陸路で結び、近代の夜明けの大航海時代には鄭和が海路で東西を結びました。世界史の遺産の陸と海のシルクロードを、新しく「一帯一路」とした構想力に敬服しています。それが単なる構想にとどまらず、有言実行で、ユーラシアからアフリカまで一帯一路は実現されつつあるのは壮観です。

私は昨年、訪中し、北京の国際園芸博覧会(北京花博)を観ました。そこに素晴らしい標語「绿水青山就是金山银山(緑の山河は金山銀山)」に出会いました。習近平主席の言葉で、環境重視の理念が明確です。山水は地球の宝です。それが北京花博で謳われており、現代の人類社会へのメッセージになっています。

◆観光も物流も拡大したい

―― 自治体の知事として、学者として、これからの日本と中国の地方の交流について伺います。

川勝 未来は全て青少年にかかっています。古代日本の青年は中国の先進文明を学びに訪中しました。現代は中国の青年が日本の福祉・医療や様々な技術を学びに来日しています。青年は未来への懸け橋です。若者同士の交流から芽生えた友情は一生の財産になります。中国に友人がいれば、友人とは喧嘩はしたくないでしょう。静岡県では青少年交流を制度化し、大きなパイプにしようと努力しています。

経済交流も重視し、観光と物流を拡大しています。静岡には清水港や富士山静岡空港があります。富士山は徐福(秦の始皇帝に仕え不老長寿の薬を求めて富士山に漂着したといわれる中国人)が来たという伝説があります。秦の始皇帝の時代ですから2200年前です。中国には中国の古典で言われている「仁義礼智信を重んじる徳の行き渡る人類社会」を、文化的伝統のもとに、構築していただきたい。一帯一路はインフラ整備ですが、その上を行き交うのは、人間の理想を体現する有徳の君子の交わりであってほしいと願っています。

<川勝平太氏プロフィール>

1948年生まれ、京都市出身。早稲田大学、同大学院を経て英オックスフォード大学で博士号取得。早大教授、国際日本文化研究センター教授、静岡文化芸術大学学長などを経て2009年より静岡県知事。現在3期目。

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