<直言!日本と世界の未来>米中「休戦」を歓迎=貿易戦争に勝者はない―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年1月19日(日) 7時0分

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米中両国は「第一段階の合意」に達し署名した。米中の対立は当面「休戦」となるという。「初の合意」により世界経済が落ち着きを取り戻すことを期待したい。写真はホワイトハウスでの署名式(1月15日)。

米中両国は1月15日、貿易交渉で「第一段階の合意」に達し署名した。今年11月の米大統領選で再選を狙うトランプ大統領と経済減速を回避したい習近平政権の思惑が一致し、米中の対立は当面「休戦」となるという。次代の覇権争いが絡むため中長期的には世界経済のリスクとしてくすぶり続けるとの懸念もあるようだが、「初の米中合意」を歓迎したい。主要国株式市場もこのニュースを受けて上昇に転じている。今年、世界経済が落ち着きを取り戻すことを期待したい。

中国は長期戦で臨み、米国に制裁関税の段階的な撤回を確約させる一方、自らの構造改革問題を先送りしたとされる。米大統領選を控えて実績作りを急ぐトランプ大統領の足元を見透かし、米農産品購入拡大と引き換えに米国から譲歩を勝ち取ったとの見方もあるようだが、貿易戦争には勝者はない。自国第一主義や、保護主義は世界貿易全体にマイナスの影響を与える。粘り強く対話を重ね、相互にウィンウィンの道を切り開くべきである。

米中第一段階貿易協議の合意は、米中両国に利益をもたらすだけでなく、日本を含む国際社会にも多大な利益をもたらす。米中貿易戦争の結果、日本の输出総量は大幅に減少。特に中国向けの输出が落ち込んだ。従来、中国は日本から工業設備、化学材料、プラスチック製品、そして電子設備を輸入、加工して米国へ輸出した。米国が仕掛けた貿易摩擦の影響で、高い関税に影響されたのは中国だけではなく、日本も甚大なダメージを受けた。

従来の覇権国家と新興の2番手国家がぶつかり合う「トゥキディデスの罠」に陥ると懸念する声もあるが、大国同士の対立の長期化は何としてでも回避しなければならないと思う。

第一段階の貿易協議の合意締結にもかかわらず摩擦終息にはなお課題が山積している。貿易摩擦を解決するために、最も重要なのは「戦い」ではなく、「話し合い」である。今後、米中両政府だけでなく、日本政府もこのような状況を理解し、摩擦の解消に重要な役割を果たすべきだろう。

<直言篇108>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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