日本の「立ち遅れた地域」を訪ねて 青森・秋田旅行記

人民網日本語版    2020年1月8日(水) 14時50分

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東京都市圏の人が青森県や秋田県について語る時、しばしばなまりが話題になる。「何を言っているかわからない」というが、私からみるとそれほど問題ではない。写真は青森。

東京都市圏の人が青森県や秋田県といった「僻地」について語る時、しばしば彼の地の「なまり」が話題になる。「何を言っているかわからない」というが、私からみるとそれほど問題ではない。東京の人の話す日本語もほとんどわからないからだ。両県は日本の東北地方に属し、農業を主要産業とする。両県とも立ち遅れていることは確かで、関東圏や関西圏で交通機関をスムーズに乗り降りできる交通系ICカード「Suica」がここではまったく使えない。どこかに行こうと思えば、切符を買うしかない。(文:張豊・コラムニスト、中間層の暮らしウォッチャー。「中国新聞週刊」に掲載)

青森から電車に乗って小説家・太宰治の故郷を訪れるには、乗り換えが2回必要だ。車窓から見えるのは本物の農村風景で、川の流れは清らかで、鉄道の両側には何もなく、田畑は手入れが行き届いている。リンゴの木には実がたわわになり、その重みで枝は低く垂れ下がる。多くの木の下にはビニールシートのようなものが張られていて、実が落ちれば受け止めるようになっている。窓外には時折、アシやススキの群生が現れ、写真に収めるには絶好の眺めだ。

私が小さい頃に暮らした中国北方の農村がちょっとこんな感じだった。1980年代から1990年代にかけて、農村の川には水が滔々と流れ、出稼ぎラッシュが訪れる以前は、大勢の労働者が田畑で働き、わずかな土地もよく手入れがなされていた。しかしこうした美しい田園の風景と赤貧の暮らしはセットだった。冬になると、小麦粉を食べ続けることもできなかった。その後、大勢の人々が都市に働きに出るようになると、彼らは豊かになったが、農村も変化を余儀なくされ、川は枯れ果て、道のあちらこちらにビニール袋が捨てられるようになった。私たちはどうやら美しさと進歩・豊かさを一緒に実現することができなかったようだ。実に残念なことだ。

電車が五所川原駅に着くと、1両しかない小さな電車に乗り換えるのだが、困ったことに先行列車がなぜか途中で5分間も停車したため、乗り換え時間は3分しかない。予定の電車には間に合いそうもなく、次の電車を1時間ほど待つしかないと思っていた私は、五所川原駅に着いて本当のサプライズが待っていた。なんと予定していた電車がそこに停車しており、乗務員が乗車口で私たちの到着を待っていてくれたのだ。

東京や大阪ならたった1人の乗客を待つ電車などあり得ず、定時運行が何よりも大事な第一原則となる。しかしここでは、数分の遅れを気にする人は誰もいない。この小さな電車にとって最も重要な任務は、私たち10人ほどの乗客を待つことのようだ。その後、停車したいくつかの小さな駅では、乗り込んで来る人はあまりいなかった。日本の「近代化」がまだ全国で完全に一致していないというなら、それはおそらく時間の観念についての不一致にほかならないだろう。

途中で通過した駅はどこも駅員がおらず、乗車券を売る人もなく、改札もない。電車に乗る人は乗車した後で乗務員から切符を買うというスタイルだ。

午後に帰路に就き、芦野公園駅で電車を待っていると、小さな男の子が3人通り過ぎた。彼らは次々と私に向かって「こんにちは」と大きな声であいさつし、私も笑顔で「こんにちは」と一人一人にあいさつを返した。もう少し何か話したかったけれど、短いあいさつの言葉しか話せないのが残念だった。東京でもよく学校帰りの子どもに会うが、こんな風に自分からあいさつされたことはない。

こんなあいさつはここでは珍しいことではないらしい。2日後に秋田県の千秋公園をジョギングしていると、野球少年の一団に出くわした。彼らは坂道を駆け上がる練習でへとへとなのに、行き交う人すべてに大きな声で「すみません」と謝っていた。道幅は広く、彼らがどんな風に走っても邪魔にはならないというのに、それでも一人一人にきちんと謝っていた。これはきっとコーチの指導によるものなのだろう。コーチも側にいて、大きな声で道行く人々にお詫びをしていたからだ。

中国語サイトの説明では、このあたりは「人口45万人の秋田都市圏」となっている。45万人は、中国なら最も小さい県の行政中心地ほどの数だが、日本の北部ではこれでも人口集中地になる。秋田には工業らしい工業もなく、農業と酒造業が中心で、人口減少ペースは日本国内でトップクラスだという。

この野球少年たちも、将来は「人口減少」する地域の一部になることが運命づけられている。昨年、秋田県立金足農業高等学校の野球部が甲子園の決勝に進み、優勝は逸したが、秋田の少年の心を大いにかき立てた。少年たちも上の世代と同じように、都会の広い世界にあこがれているかもしれない。(編集KS)

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