<コラム>年明け早々世界は物騒、北朝鮮の動きに注目

木口 政樹    2020年1月7日(火) 10時0分

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年明け早々から世界は物騒な動きとなっている。北のクリスマスプレゼントは今のところ一旦は寝静まった形となっているけれど、いつまたプレゼント発言があるか予断を許さない状況だ。写真は金正恩バッジ。

年明け早々から世界は物騒な動きとなっている。北のクリスマスプレゼントは今のところ一旦は寝静まった形となっているけれど、いつまたプレゼント発言があるか予断を許さない状況だ。そんななか、1月3日未明、トランプ米大統領の命令によってアメリカ軍がイラクの首都バグダッドの国際空港で、イラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官をドローン攻撃で殺害した。

ソレイマニ司令官は、イラン革命防衛隊で対外工作を担う特殊部隊「コッズ部隊」を20年以上率いてきた比類なき軍事指導者だ。イラン国内では最高指導者ハメネイ師に続き、事実上ナンバー2の実力者とみられてきた。イランの国民的英雄である。

アメリカは2007年10月以来、ソレイマニ司令官をテロリストに指定し経済金融制裁を科してきた。トランプ大統領も1月3日、支持基盤のキリスト教福音派向けの集会で「昨夜、私の指示でアメリカ軍は空爆を成功させ、テロリストを殺害した」と述べた。アメリカ国務省高官は、ソレイマニ司令官がイラクだけでこれまで608人のアメリカ人を殺害してきたと主張した。今回のソレイマニ司令官除去は、中東における何百人ものアメリカ人の犠牲を未然に防ぐためのものであったと指摘した。これには、北の首領様が大ショックをうけたことはまちがいない。ドローン攻撃でいとも簡単に特殊部隊の親分が除去されてしまったのだから。

トランプ米大統領はつづく4日、「イランが報復攻撃する場合、イランの52か所を攻撃目標地点に定めた」とし追加攻撃を示唆した。さらに米国は兵力3500人を中東地域に急きょ派遣し、イランの報復攻撃に万全の備えをしている。

北朝鮮は現在までのところ(6日午前)、表面的には直接的な反応は自制している。しかし「強者の前では卑屈になり、弱者の前では暴悪になることが帝国主義者(米のこと)の行動」(5日、労働新聞)と、米を非難し間接的にイランの肩を持つ論評を出している。

北朝鮮とイランは、核・ミサイル技術を交流するなど外交的に関係が深い。ブッシュ大統領のとき、両国を「悪の枢軸(axis of evil)」と位置づけるほど米国から見たイランは相当のならず者的存在だ。李容湖(イ・ヨンホ)北朝鮮外相は、2018年8月、イランを訪問しハサン・ロウハニ大統領と関係の強化策について話し合ったりしている。

韓国政府当局者は5日、「米国はソレイマニ司令官の除去に関しては外交的に解決されなければ軍事的オプションを使用するかもしれないと明確に示した」とし、「北朝鮮は直ちに自分たちにも同様の状況が発生しうる可能性の高いことを、よく考えてみるべきとき」と語った。実際、金正恩(キム・ジョンウン)の父親の金正日(キム・ジョンイル)は、2001年10月と2003年3月、米国がアプガニスタンとイラクを攻撃した際、それぞれその後の25日間と50日間、表立った活動を中止した(つまり危険を避けるため雲隠れしていた)経緯がある。

ソレイマニに対する攻撃の動きは先月27日から感知されていた。金正恩が今年の新年のメッセージをスルーしたのに続き、これまで大々的に宣伝してきた錦繍山(クムスサン)太陽宮殿参拝(通常1月1日)の日程を公開しなかったのも、身辺保護強化、身辺安全のためのものだという分析も出ている。正月早々、北の首領様としては思わぬ「障害物」に遭遇した格好だ。北からどのようなコメントが出てくるか、世界がまた注目している。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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