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<在日中国人のブログ>私のオリンピック

配信日時:2020年1月8日(水) 18時0分
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日本に来てから、不思議に自分がオリンピックに近づいたと実感した。柔道など日本の国技スポーツに興味を持つようになった。写真は東京五輪ポスター。

私の記憶の中の最初のオリンピックは、1984年のロサンゼルスオリンピックだ。その年、中国がオリンピックに復帰することになった。ロサンゼルスオリンピックで、中国選手が十数個の金メダルを取った。中国のテレビ番組は金メダリストを繰り返し宣伝した。中でも一人目の金メダリストはまるで英雄のように扱われた。

その時代、中国人にとって、「オリンピック=金メダル」だったかもしれない。国際競技の舞台で国のために栄光を争い、イデオロギーの色が濃かった。以前から中国政府にとってスポーツは重要な外交手段だった。例えば、有名なピンポン外交。1971年に名古屋で行われた第31回世界卓球選手権に中国が6年ぶりに出場し、大会終了後に中国がアメリカなど欧米の卓球選手を自国に招待した。そのピンポン外交の結果として、中国とアメリカの敵対関係が氷解され、日中国交正常化にもつながった。中国語の「小球転動大球」とは、「小さなピンポン玉が大きな地球を動かした」という意味。まさにスポーツと政治の関係を示したものだ。中国にとって、オリンピックは一番大きな外交舞台。今もそれは変わらないだろう。

1988年ソウルオリンピックで一番印象に残ったのは、テーマソング「Hand in Hand」だ。テレビでいろんな肌色の人達が手をつないで「Hand in Hand」を熱唱する画面を観て、思わず涙が溢れた。その光景は私に「グローバル」を啓蒙してくれた。違う国の人達が手をつなげば、友達になれるのだと悟った。オリンピックのテーマソングは世界中の人々に共通の美しい思い出を与える。私の心の中で「Hand in Hand」は空前絶後のオリンピックテーマソングという存在で、今でもそれを超えるものはない。

日本に来てから、不思議に自分がオリンピックに近づいたと実感した。さらに、柔道など日本のスポーツに興味を持つようになった。日本に来る前は、全然柔道がわからなかった。現在、柔道は「柔軟に対抗する」芸術だと認識し、柔道の試合を興味津々に観ている。そのきっかけとは、なんと、大学院で2000年のシドニーオリンピック金メダリスト、現・柔道日本代表監督の井上康生さんと同じ研究室に所属し、同じ指導教授のもとで勉強していたことだ。井上さんは忙しくて、滅多に研究室にいなかった。彼が研究室に現れると、大勢の女の子が研究室の外に集まってきてワイワイと盛り上がる。研究室メンバーもみな井上さんとツーショット写真を撮った。井上さんは色紙に大きな二文字「初心」とサインを書いてくださった。私はずっとこの色紙を大事に保管している。

ある日、体の大きい井上さんと小柄の指導教授が、肩を並べて、談笑しながら美しい湘南キャンパスを歩く姿を目にした。二人が雪化粧した富士山へ向かっていくように見えて、その光景が脳裏に焼き付き、一種の感動を覚えた。卒業後数年して、指導教授の還暦お祝い会で井上さんと再会した。井上さんは肘をけがしていたようで、包帯姿で壇上に立ち、謙遜しながら先生にお祝いと感謝の言葉を述べた。

いよいよ、2020年東京オリンピックが到来する。「参加することに意義がある」。近代オリンピックの父、クーベルタン男爵の有名な言葉を忘れてはいけない。伝統文化より、スポーツはもっと速いスピードで人間の心の距離を縮めるかもしれない。真のスポーツ精神とは金メダルをいくつ獲得したかではなく、自分を乗り越えて、人に感動と勇気を与えることではないか。

自分の体験を言えば、日本に来てからスポーツ観戦で、選手の国籍より選手の人間的魅力に注目するようになった。例えば、選手の個性とファッションなど。特に陸上の女子アスリートの髪型、指先のネイル、ピアスなどを見たら、選手たちが強くて美しくていずれも素晴らしいと感服する。まさに、オリンピックは美の盛宴である。

近年、私が好きな日本選手を列挙すれば、サッカー本田圭佑選手、バレーボールの木村沙織選手、卓球の福原愛石川佳純選手等々、アイドル以上の存在だと思う。その力強さ、そして、その仕草・笑顔・言葉、すべてたまらなく魅力的だ。ナショナリズムを越えて、スポーツの芸術を楽しむことは何より心地良い。愛することに理由なんていらない、と同じ感覚である。

自分が住む都市である東京でオリンピックに巡り合えること、人生にはめったにない大イベントなので、期待せずにいられない。東京オリンピックでは、私は相変わらず、どの国を贔屓するではなく、自分が好きな選手を応援したい。オリンピックに関しても、「辺縁人の流儀」を貫いていこう。2020年は私が来日してちょうど20周年。ある意味で、自分の「人生のオリンピック」になりそうなので、新しいことにチャレンジし、真剣勝負ができたらいい。

■筆者プロフィール:黄 文葦
十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。

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