<在日中国人のブログ>伊豆大島の旅、一番いい風景はやはり人

黄 文葦    2019年12月20日(金) 17時40分

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世界一周旅行にたいへん憧れているが、今は時間的に余裕がない。でもやっぱり船の旅をしたいと思って、この前の週末に伊豆大島に一人旅をした。

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「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」をはじめ、国民的なテレビドラマを手がけてきた脚本家・橋田壽賀子さんの唯一の趣味は船での世界一周旅行らしい。私も世界一周旅行にたいへん憧れているが、今は時間的に余裕がない。でもやっぱり船の旅をしたいと思って、この前の週末に伊豆大島に一人旅をした。

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船の旅には独特な味がある。普段の旅では飛行機を利用することが一番多い。飛行機の中は狭くて、外の風景は主に雲。眠るか本を読むほかない。新幹線は地上で走る一番速い乗り物だが、速すぎて外の風景が急速に過ぎ去ってしまう。その点、船は、波に身を委ねながら浩瀚広大な海を眺められる。ほら、カモメは飛び回っている。旅人たちは視野を広げていこう。穏やかな優雅な心地にさせられる。

東京の竹芝桟橋から高速ジェット船に乗り、約1時間45分で伊豆大島に到着。島の暮らしは独特なスタイルがありそうだ。港で「本日の出帆港は岡田港です」の看板が見えた。現地の人によると、船の到着する港は日によって異なるという。気候と海の状況を見て判断する。波が高い、風が強い日は北部の岡田港に出帆するらしい。もう一つの港は西部の元町港。ホテルや飲食店にも「本日の出帆港は岡田港です」のお知らせ看板が置かれる。日本人には計画性を重視するという特徴があるが、大島はたいへん柔軟な姿勢で「出帆港」を決める。計画性と融通性を両立しており、これは自然と調和する大事な知恵である。出帆港の変更によってバスの路線も変わる。繊細な面白いシステムだと思った。毎日、誰が出帆港を決めるのだろうか。興味が湧いてくる。大島町長ではなく専門家だろう。また、次回大島に行く際、どちらの港に停まるだろう、と期待が増えた。

日本国内旅行ではいつも美しい細部の体験ができる。肌感触なめらかな温泉とか、哲学的な枯山水とか。国内旅行は地方の宝物を知る機会でもある。伊豆大島の宝物と言えば、温泉も確かだが、今回、私が興味深く認識したのは「椿」と「明日葉」であった。毎年、伊豆大島では椿祭りが開催される。バスに乗って山頂に向かう途中、山を飾りつける椿の花がどんどん目に入ってきた。椿の花は赤いかけら、黄の蕊、緑の葉、たいへん元気だそうで、美しい葉と清楚な花姿を持つ。椿の商品は、化粧品・食用油のほかに、工芸品もある。商品の包装は黄、赤、緑の三色が主役。自然をイメージするデザインだろう。

普段、明日葉という野菜をあんまり食べていない。今回、大島温泉ホテルで明日葉の胡麻和えを味わって、たいへん気に入り、明日葉のお茶をお土産として買った。今、毎日そのお茶を飲んでいる。味はちょっと渋い。飲んだら、心と体がすっきりした。島の食生活は魚と野菜が中心らしく、健康志向の高まりが明確である。

その日、大島の三原山山頂にある130年の歴史がある喫茶店を訪れた。店内は雰囲気があり、コーヒーの芳醇な香りが漂う。ギターと二台のバイクが置かれており、ミニスタジオもある。クラシックギターの音楽が流れる。毎日こんな素敵な空間でのんびりした音楽と共に、人生を自由奔放に生きるだろう。マスターは明るい方で、自身がミュージシャンだと自己紹介。なんと、仲間と一緒に即興のミニコンサートを開いてくださった。私が中国出身だと知り、矢沢永吉の「チャイナタウン」を熱唱してくださった。「この前、団体の中国人観光客がいらした時もこの歌を歌いましたよ。喜んでくれました」とマスターがうれしそうに話してくれた。日本は島国だけれど、中国人観光客はすでに日本の小さな島にまでやってきた、と感慨無量の気持ちになった。コーヒーを飲みながら、「チャイナタウン」を味わい、「おもてなし」の真意を悟った。こころがこもったサービスによって、両方のこころが通じたこと。

島と山が好き。島の中の山はさらに好き。伊豆大島の旅はたいへん満足できた。今回、名作「伊豆の踊子」の舞台である波浮港には行けなかったが、「伊豆の踊子」ではなく、「伊豆の歌う男たち」に出会った。旅の一番おもしろい風景は、やはり人間である。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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