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<コラム>香港区議選、民主派圧勝は「津波のよう」と沸くが…

配信日時:2019年11月28日(木) 13時20分
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政府への抗議デモが続く中、11月24日に4年に1度の香港区議会選挙が行われ、私も投票してきた。終わってみれば、過去最高の投票率の中、「津波のよう」と言われる勢いで民主派が圧勝。自由と民主を尊ぶ市民は、政府に「NO」を突きつけただけでなく、6月の市民200万人による大規模デモ行進に続いて、選挙でも、市民パワーを香港内外に示した。

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香港では、外国籍でも、18歳以上で香港に7年間滞在して永住権を得れば、選挙権を与えられる。ただ、投票するには、香港人でも外国人でも、事前に選挙登録が必要だ。登録すれば、選挙通知が自宅に届き、指定の投票所で投票できる。

今回の区議選は、前回の倍以上の約294万人が投票し、投票率は71%に達した。それほど、この選挙は市民にとって大きな意味があった。

区議会は、地域の民生問題に取り組むことが中心で、政治的な色彩は薄い。しかし、立法会(議会)選挙と違って、議員は1人1票の直接選挙で選ばれるので民意を反映しやすいとされる。さらに区議員には、立法会議員枠と、香港のトップである行政長官を選ぶ選挙管理委員会の委員枠もあり、軽視できないのだ。

このため、6月から政府に対する大規模抗議デモが続く中、住まいの民生問題よりも「我々の声に一向に耳を傾けない政府にNOと言いたい」(29歳女性)といった若者を中心に、39万人余りが新たに選挙登録をした。一方、18区452議席を争う選挙には過去最多の1090人が名乗りを上げ、初めて自動当選がない選挙戦となった。

選挙は、デモ隊と警察の衝突が続くさ中とあって、政府が延期する可能性もあった。すると、デモ隊は抗議活動を控えて、選挙の実施を目指した。SNSでは投票への呼びかけや各選挙区の民主派候補リスト、区議選の重要性などを伝えるメッセージが飛び交った。民主派で一枚岩になることを狙ったのだ。投票のために、わざわざ留学先の日本や英国などから帰省した若者さえいた。

投票時間は午前7時30分から午後10時30分まで。いつも午前中は出足が鈍いが、私が午前11時ごろ投票所に行くと、すでに驚くほど長蛇の列ができていた。並ぶこと1時間余り。ようやく投票所の入り口にたどり着き、1票を投じる――という具合だった。

果たして結果は、民主派が議席全体の約9割、386議席を獲得。選挙前は約7割だった親中派は、約1割の62議席と惨敗した。政治経験がない20代の若者らが親中派ベテラン議員を次々と蹴散らして当選。民主派と親中派の勢力が初めて逆転した。

若者は志一つで行動に移す。そうした若者に共感できれば、チャンスを与えて社会を前に進めようとする年配者。そんな香港社会の縮図が表れたようにも思う。

ただし、投票数を見ると、民主派と親中派の比率は6対4で、議席数ほど大差はない。「デモを収束させて平穏な社会を取り戻そう」と訴える親中派と同じ考えの市民が4割いるのだ。そう考えると、この選挙は、今の香港社会がほぼ真っ二つに割れた難しい状況であることも示したといえる。

選挙結果は、民主派にとっては快挙であり、香港政府や中国政府に一定の圧力をかけたことになるが、逆に両政府による民主への締め付けが一層厳しくなることも予想される。抗議デモの行方も含めて、民主派市民と政府の動向は、香港人ならずとも大いに気になるところだ。(了)

■筆者プロフィール:野上和月
1963年生まれ。1995年から香港在住。日本で産業経済紙記者。香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機関に勤務。1987年に中国と香港を旅行し、西洋文化と中国文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中国返還を見つめたくて来港した。新聞や雑誌などに、香港に関するコラムを執筆。読売新聞の衛星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、写真付きコラムを掲載した。
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