世界最大の自由貿易区は東アジアバリューチェーンにとって何を意味するか

人民網日本語版    2019年11月14日(木) 20時0分

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このほど東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合がタイ・バンコクで開催され、共同声明も発表され、加盟国15カ国がすべての文書の交渉とすべての市場への参入に関する実質的な交渉を終了したと発表された。資料写真。

このほど東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合がタイ・バンコクで開催され、共同声明も発表され、加盟国15カ国がすべての文書の交渉とすべての市場への参入に関する実質的な交渉を終了したと発表された。今後は法律文書の検討作業に進み、2020年の協定調印を目指すという。(文:鍾飛騰・中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院大国関係研究室室長、研究員。新華網に掲載)

中国商務部(省)の王受文副部長(国際貿易交渉副代表)は11月6日、RCEPの交渉状況を説明する中で、「これは全面的、近代的、高い品質で互恵の自由貿易協定になり、地域内で統一されたルール体系を迅速に構築する上でプラスになる」と強調した。

▽各方面のRCEPへの評価が高い

インドは国内政治の駆け引きと経済成長の鈍化を受けて、RCEP交渉から離脱したが、各方面のRCEPに対する評価は引き続き高い。

たとえばシンガポールのリー・シェンロン首相は、「RCEPは多国間主義が勢いを失い、グローバル経済の成長が鈍化する背景の中で構築された。RCEPの長期的目標は貿易障壁を打ち破り、投資を促進することであり、新興エコノミーが世界の他の地域に追いつくよう支援することだ」と述べた。

日本紙「読売新聞」の6日付社説で、中国も日本もインド抜きのRCEP交渉の協定調印を推進するとしており、協定が自由貿易を力強く推進するとの見方を示している。

ここからわかるのは、各方面がRCEPを評価する際、真っ先に考えることは現在の世界経済の低迷と保護貿易主義の台頭という背景だ。

またわかるのは、アジア太平洋地域はこれまで長年にわたって構築してきた良好な発展環境を失いたくないということで、そのため地域内協力を通じて保護貿易主義に対抗しようとしている。たとえばインドネシアはオーストラリアとの間で自由貿易協定(FTA)を締結し、中国はニュージーランドとのFTAを格上げする可能性がある。

▽RCEP 全面的、近代的、高い品質、互恵

グローバル情勢と地域内の各国の特徴を踏まえているため、RCEPは他にはない特色を備えるものになったといえる。RCEPが全面的であるというのは、世界貿易機関(WTO)の枠組と異なり、投資参入や関連のルールを包括するものだからだ。

多国籍投資が貿易の発展を牽引する時代には、直接投資により大きな注目が集まるのは当然のことだ。RCEPが互恵を強調するのは、ラオス、ミャンマー、カンボジアなど後発開発途上国の過渡期への配慮があるからだ。

東アジア地域の貿易協定の中で、発展レベルが低い国はいつも一定の例外措置を与えられ、地域内の経済が発達した中国、日本、韓国などはルールの同ペースでの一体化を強制したり要求したりはしてこなかった。ラオス、ミャンマー、カンボジアのような国の経済規模と貿易規模をみれば、こうした例外措置は受け入れ可能だともいえる。

同時に、長年にわたり地域で構築されてきた自由貿易にプラスになる規範が役割を果たしてきた。こうした規範は国内の反対勢力を説得するときにとても重要になるということも考えなければならない。

一方、南アジア地域には長らく、東アジアのような地域経済一体化プロセスがなく、ほとんどの国の最大の貿易パートナーは地域外にあるような状況だった。インドでも最大の貿易パートナーは遙かに遠い米国だ。そのようなわけでモディ首相は国内の反対派に立ち向かう時に、説得できるだけの規範となるパワーをもつことができなかった。

また、インドの離脱はWTOのパスカル・ラミー前事務局長の判断の正しさを物語る。ラミー氏は、「現代の貿易自由化は技術が駆動するだけでなく、政府の政策の管理コントロールや消費者文化の影響も受ける」としていた。有名なインド系米国人の経済学者のジャグディーシュ・バグワティー氏はインドの反対派に対し、「彼ら反対派がみな現代経済学を受け入れることができれば、私も優れたインド舞踊家になれるだろう」とチクリと刺した。

中国人はより高いスタート地点に立ってRCEPに対処し、RCEP協定は貿易協定の近代性と高い品質を体現するとみている。交渉はまだ最終段階の文書検討の段階にあるため、協定の条文を詳細に検討することはできないが、明らかにされた情報によると、協定は高い品質のものであり、それは主に2つの部分に体現される。まずRCEPは物品貿易の割合が90%以上に達し、WTOの加盟各国の開放水準よりももっと高い水準が要求されている。また投資については、ネガティブリスト方式で投資参入交渉が行われている。

RCEPが近代的というのは、WTOの枠組との比較に基づいて言えることで、RCEPはECを組み込んでいるほか、知的財産権、競争政策、政府調達などの内容を含むことに特徴がある。

▽バリューチェーンに基づくグローバル多国間主義を構築

グローバル貿易発展情勢をみると、私たちは今、大変革のハードルの上に立っている。

伝統的な南北貿易が貿易グローバル化の第1段階だというなら、先進国の間での産業内貿易は第2段階であり、バリューチェーンを基礎とした製品の分業スタイルは貿易3.0時代のコアコンテンツだ。

2019年10月に世界銀行は「世界開発報告」を発表し、「バリューチェーン貿易はすでに半数を占めた」と指摘した。同じ時期にアジア開発銀行が発表した報告でも、「東アジア地域内のバリューチェーンにもより大きく注目していく」としていた。

複雑さを増す世界で、地域のバリューチェーンやグローバルバリューチェーンに参加するには、国、地方、業界などがより幅広く協調することが必要だ。すべての国が、1つの国の中でも全ての省または産業がより広い範囲の競争に参加して、より広い範囲で優位性を獲得できるわけではない。

RCEPはシンボル的な出来事だ。一部の国が新たな貿易ルールの時代に足を踏み入れ、一部の国は新時代のドアの外で足踏みしている。RCEPは7年にわたる交渉を経て、終点に達した交渉各方面がすでに古い時代を卒業したとは言えないものの、新たなグローバル化時代に積極的に進んでいることは確かだ。各国のニーズにより対応した多国間主義を構築するのは、今後の重大な課題だ。(編集KS)

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