AI時代の学びと卒業論文作成について

人民網日本語版    2019年11月7日(木) 13時0分

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4日午後、日中友好市民倶楽部の小野寺健理事長が北京外国語大学を訪問した。北京外国語大学日本語学院の徐滔院長と北京日本研究センターの丁紅衛教授は小野寺理事長と会談し、長年中国の日本語教育に尽力されることに感謝の意を表した。

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11月4日午後、日中友好市民倶楽部の小野寺健理事長が北京外国語大学を訪問した。北京外国語大学日本語学院の徐滔院長と北京日本研究センターの丁紅衛教授は小野寺理事長と会談し、長年中国の日本語教育に尽力されることに感謝の意を表した。

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午後3時半から、同センターのレクチャールームで「AI時代の学びと卒業論文作成について」と題する講演を行った。日本語学院の三、四年生及び院生、それから日本研究センターの院生たちを含め、100人以上来場した。およそ1時間半の講演で、小野寺理事長は知識の更新が早く情報量も膨大なAI時代において、生涯学習が求められていると述べた。そのため、大学が学びの方法論を学生に教授し、すそ野の広い知識構造を持ち、EQも高い人材に育つことを目標にすべきだと提言した。

卒業論文の作成について、小野寺理事長は卒論は卒業するための要件だけではなく、学生たちが主人公になり自ら知的探検できるチャンスであると指摘した。講演中に質疑応答を二回設け、合計7名の学生は質問した。どうやって自分の好きなことを見つけることができるのか、自分らしさと勉強の楽しみを両立できるのかなど、質問の内容は多岐にわたっている。小野寺理事長は自分の経験を交えて、ユーモラスに心のこもった答えをした。また質問した学生二名にプレゼントとして、自分の愛読書を贈呈した。

講演の主旨は以下のとおり。

1.AI時代の学びの特質

a.本来学びの特質は、時代を超えて不変であるが、AI時代の特質は、変革の早さと情報量の膨大さにある。

前述の如く学びの特質は、古代から不変であり、賢く生きる智慧を獲得することにあるが、変動が急激なので、時代の流れを追うことよりも、自分の生き甲斐を見つけて、時代の変化を乗り越える自己を確立することが、大切である。したがって、小賢しく生きることは、難しい時代なので、愉しく生きる智慧を、磨くことです。

ところで、時代の寵児は、単なる箱を作ったGEや東芝よりも、マイクロソフトやAppleに移り、経済の高度化は、サービスとソフト産業の比重を、より一層高めております。「コンピュータ、ソフトがなければ、ただの箱」なので、美貌に依存した生き方に甘えれば、即座にピーマンお婆さんに転落致します。なお、皆さんは、「小姐」だと思っているかもしれませんが、残念ながら既に「大姐」です。何故なら人間は、生物学的に言えば、十八歳から老化現象が始まるからです。したがって、「美に依存する生き方」は、年々価値を失い、惨めな老後が、待ち受けております。そして、人間にとって確実なことは、「死と税金」だと言われておりますが、現在煩く付き纏う花花公子も、「ピーマンお婆さん」には、見向きもしません。また、現在では、「小姐」と言う表現は、同じ花園でも「夜の華」と否定的に思われておりますが、古代においては、貴族のお嬢様を指しております。この様に言葉の意味も、時を経て変わりますが、現代の特色は、急転直下の変貌にあります。

また、麗人であっても、「四十歳を超えれば、美醜は価値を失う」と言われておりますので、優しさと賢さを磨くことは、万人に求めらる資質です。

かくて、私の拙い講義を聞いて、直ちに実践をすれば、資生堂やコーセーの化粧品をつけなくても、ユニクロ漂亮が多数誕生をするので、麗人各位からも、お褒めの言葉を、頂けると確信をしております。

b.生涯学習が求められる中で、大学教育の役割は、学びの方法論を確立することに尽きる。

そして、大学での学問とは、知のフロンティアへの橋頭堡であり、大学での教育とは、多くの人材を、フロンティアに導く為の訓練である。なお、大学で学ぶべきは、推論と議論の方法であり、実践である。

また、直ぐに役立つことは、直ぐに陳腐化するので、時代の流れに左右されない叡智を育むことが、大学教育に課せられた使命かと存じます。

そして、ここで思い起こされるが、旧制高等学校で尊重されたリベラル・アーツ教育です。

リベラル・アーツは、技術革新のスピードが早く、生涯学習が当然とされる現代において、絶え間ず学ぶ姿勢を保ち、新たな価値を発信する原動力となるもので、個別の問題を解決する能力と、社会の在り方をデザインする力を併せ持ち、普遍的価値を追求する可能性を秘めております。

別の言葉で言えば、直ぐに役立つ技術は、梯子で高所に登る方法であり、豊かな教養を身に付けることは、裾野の広い富士山の如き山を目指す試みです。

そして、教育部の指針も、リベラルアーツ即ち一般教養の充実にあるので、現代のレオナルドダビンチが、時代のヒーローかもしれません。

c.IQ(知能指数)よりも、EQ(心の知能指数)の高い人間が成功するのは、何故か。

膨大な情報を瞬時に処理することや情報の抽出は、AIが勝りますが、不可解な人間心理や微妙な流れの読みは、センスの問題なので、この様なセンスに富み信頼を得られる方が、単なる成績優秀な偏差値人間よりは、魅力的かと存じます。

そこで、AI時代の生き残り策は、単なる知識の断片や技術を習得するよりも、生涯に渡って使える学びの方法論を、身に付けることかと思います。

また、幕末の志士吉田松陰は、「学問とは、書物に書かれた「過去」を学ぶことではない。「現実」と向き合い、世界の時局を知ることに、他ならない」と話しており、この点からは、日経ストックリーグの取り組みは、一つの試みとして有用かと存じます。

2.卒論論文作成の意義

a.卒論作成を通じて、学びの愉しさと厳しさを知る。

学生は、卒業論文作成を、単なる卒業要件と捉え勝ちであるが、受動的な大学教育に於いて、学生が主体的に取り組むことができる唯一の機会なので、この機会を活用して、学びの愉しさと厳しさを、是非味わってもらいたいものです。

b.論文の形式要件と実質要件について

論文である以上は、何らかの学術的価値を付加することを求められますが、学士論文の場合は、切り取り方が鋭いか、異なる視点から論じているか等、登山ルートであれば、同じ山でも、異なるルートからの登頂を試みるなど、豊かな発想により、工夫の余地は、多様かと思われます。

したがって、学会の通説を補強することや、少数説を再評価することも、一つの手段であり、先行研究を十分読み込んで、自分の悪い頭を駆使して論述をすれば、立派な学士論文です。

次に、論文作成の三種の神器は、1.当該Themaと自己の履修した科目との密接度が高い。2.当該Themaに関して指導教授が存在する。3.参考文献の閲覧が可能である。の三要件を具備することです。したがって、学生諸君は、自由なThemaで論文を書けると、誤解をしておりますが、自ずとThemaは、限られて参ります。

なお、先行研究の希薄な分野の論文は、避けることが賢明です。

c.学士論文の決め手と独創性とは

学士論文は、Thema選定が、九割の鍵を握る。ーー徐一平先生

材料は、豚肉・馬鈴薯・人参・玉葱であっても、カレーにするか、煮物にするかは、料理人の腕次第です。

また、全体を扱うことは出来ないので、断片を切り取って分析をしますが、その切り取り方が上手であれば、核心に迫り得るので、その切り取り方がポイントであり、これを別の言葉で言えば、Themaの選定です。したがって、論文作成とは、切片を切り取り、全体状況を推測する作業ですが、結果は、切り取った切片の部位に依ります。そこで、核心に迫り得る切片の切り取り方が、学問の成否を左右致します。

そして、核心に迫り得れば、普遍的価値を持つことになり、此れこそが学問の醍醐味である。

なお、細部から全体を推論するのが、現代の学問手法であるが、細分化されて専門領域が狭まった結果、知への懐疑や大学教育の限界が、指摘され始めております。

それは、そもそも「知」とは、古代ギリシャの時代から、人生を豊かにするものであり、知が専門化や細分化されることにより、知が本来持つ豊かさが、失われてしまうからです。

そして、教育部の試みは、知の豊かさの回復と理解をしており、私としては、好ましい方向付けかと存じます。

また、「人生は、果敢に立ち向かう冒険である。そうでなければ何の意味もない。」とヘレン・ケラーは、述べております。

かくて、知性とは、既成の答えを暗記して、冒険を避けることではなく、色々な問題を解決する方法を学び、新たな問題や更に大きな問題を、解決する力量を養うことです。

なお、真の知性の本質は、失敗することに対する恐怖を克服して、果敢に学ぶ姿勢と学ぶ喜びにあります。

結びに、美貌と英知を兼ね備えた皆さんが、意欲的に学び愉しく実践することにより、社会の木鐸として、未来を切り拓くことを念じ、「L ebe so,wie du denkst 爾が考えている如く生きよ」を餞の言葉として贈り、私の拙い講演を締め括ります。

小野寺健の略歴

慶應義塾大学法学部法律学科、慶應義塾大学司法研究室を経て、曲阜師範大学日語系主任教授、淮陰師範学院日語系主任教授、南開大学日本研究院客座教授、北京大学慶應会顧問

現職

特定非営利法人日中友好市民倶楽部理事長、有限会社鴻鵠総合研究所代表取締役社長、日中友好中国大学生日本語科卒業論文コンクール審査委員長

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