京アニ放火事件、アニメ界の損失は?―中国メディア

人民網日本語版    2019年7月20日(土) 11時20分

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優しさと美しさにあふれる世界を作りだしてきた日本のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ)が、この世で最も過酷かつ凄惨な一幕を迎えた。写真は京都アニメーション(資料写真)。

優しさと美しさにあふれる世界を作りだしてきた日本のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ)が、この世で最も過酷かつ凄惨な一幕を迎えた。いつもと同じようにアニメーションの夢を紡ぎ出そうと頑張っていた当たり前の水曜日は、突如起こった火の手により当たり前の一日ではなくなった。18日午前10時35分、爆発音とともに、周囲は黒い煙に包まれ、3階建てのベージュ色をした建物から煙がもくもくと立ち上った。北京商報が伝えた。

炎が飲み込んだのは日本アニメ界の伝説、京都アニメーションのスタジオだ。増え続ける死者の数を前に、見守る人々の間には絶望が広がっていった。火は5時間後に消し止められたが、延面積700平方メートルの建物は全焼した。

京都府警の話によると、火災発生時、スタジオでは70人以上が働いていた。これまでに33人の死亡・重体と数十人の負傷が確認されている。日本の警察庁によれば、今回の事件は平成以降で放火による被害者の数が最多だという。数多くの貴重なアニメの原画やデータも一緒に燃えてしまい、損失は計り知れない。京アニのホームページの情報では、今年3月現在、従業員は165人、平均年齢は33.6歳、平均勤続年数は9.6年という。

戦慄が走ったのは火災の原因だ。京都府警の発表によると、41歳の男が現場でガソリンのようなものをまいたという。近所の人の話によれば、放火の疑いで警察官に身柄を拘束された男は、「どうしてこんなことをした?」とたずねる警察官に対し、「パクりやがって」などと言っていたという。男も顔と胸にやけどしており、京都市内の病院に運ばれた。男は京アニの従業員ではなく、かつて働いていたこともないという。

京アニの八田英明社長はメディアの取材に応じ、「会社への抗議を日常的に受けるということはなかったが、少なからず受けていたことは確かだ。特に『死ね』などと書かれた殺人予告を受け取ることもあった」と述べた上で、「こうしたことがあった際には、弁護士に相談し、誠実に対応してきた」と説明した。

事件当日、安倍晋三首相はSNSで犠牲者への追悼のメッセージと負傷者へのお見舞いのメッセージを発信し、「一日も早い回復をお祈りしている」とした。総務省消防庁は、「担当者を現場に派遣して捜査に協力している」と発表。また、京アニ制作のスポーツを題材にしたアニメ作品「Free!」は公式ツイッターで、19日に予定されていた完全新作劇場版「2020夏」の最新予告編の公開を中止したと発表した。

「まるでアニメ界の9.11事件だ」、「男が燃やしたのは会社ではなく、アニメ業界だ」、「(京アニは)アニメ業界のノートルダム寺院だ」。事件の詳細が明らかになり、死者の数が増え続けるにつれ、SNSには嘆き悲しむ声が広がった。心を痛めているのは日本人だけでなく、世界各地からたくさんのメッセージが寄せられ、京アニの力の大きさを改めて世に知らしめた。

日本では、アニメ制作会社同士の競争が非常に激しく、1つの作品で名声を得られるスタジオは非常に少ない。長年にわたりたくさんの「人気作品」を生み出してきた京アニは非常にまれな存在だ。

京アニは1981年の創業で、最初は主婦を集めて色塗りの下請けをするスタジオだったが、後に正式なアニメ制作会社になった。こうした背景から、日本では数少ない女性従業員が中心のアニメ制作会社となり、独自の世界を生み出した。女性の視点から出発して、女の子特有のエネルギッシュさや繊細な感情を描き出し、多くの女性の共感を得てきた。

京アニはかつて「クレヨンしんちゃん」や「犬夜叉」の制作に関わり、後に「涼宮ハルヒの憂鬱」、「だんご大家族」、「けいおん!」、「中二病でも恋がしたい」をはじめ、一連の心をつかむ作品を独自に制作し、柔らかな色彩の作画を特徴として、「京アニの作品なら、必ず質が高いものだ」と高い評価を得てきた。

京アニには6つのスタジオがあり、今回火災が起きたのは2017年に完成した第1スタジオだ。ここは京アニの心臓部とされ、監督、演出、作画監督、原画、中割り、彩色、CG、美術、撮影など、アニメ制作のコア部分のほとんどがこのスタジオで行われていた。

注目されるのは、日本のようなアニメ産業が十分に発達している国では、多くのスタジオがフリーのアニメーターに仕事を外注する中、京アニは自社のスタッフによる手書き制作を主としていたことだ。中国版ツイッター・微博(ウェイボー)のネットユーザーの書き込みによると、京アニは従業員に固定給を支払い、出来高制を取らなかった。八田社長は、アニメ業界に携わる人々が大量の作業をこなしながら、低収入に甘んじている現状を変えることを最終的な目標としてきた。しかし今回の火災で、原画が失われ、機材が失われ、人材も失われたという。

八田社長が事件を受けて述べた「誇張ではなく、うちのスタッフは日本のアニメ業界を支えてきた人材だ。そのうちの誰かが負傷したり、さらには命を失ったりするなど、とても耐えられないことだ」との言葉の端々から、苦しい胸の内が伝わってくる。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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