『千と千尋の神隠し』の「勝手に食べてはいけない」にはこんな意味があった―中国メディア

Record China    2019年6月21日(金) 17時20分

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20日、中国メディア・新京報は、『千と千尋の神隠し』に見られる神話的な要素について、中国のある神話研究者が解説した文章を掲載した。

中国メディア・新京報は20日、「『千と千尋の神隠し』の勝手に食べてはいけない、振り返ってはいけない、これらの禁忌をあなたは理解していますか?」と題する記事を掲載。中国のある神話研究者が解説した文章を掲載した。

21日から、宮崎駿監督のアニメ映画作品『千と千尋の神隠し』が、中国大陸の映画館でも上映される。これを受けて文章は、「日本での公開から18年を経てついに中国で公開されるこの名作は、ただの映画ではない。神話をこよなく愛する人からすれば、神話研究の宝庫なのだ」と説明。「世にも奇妙な日本の妖怪たちが登場するというだけでなく、同作品は東洋や西洋の古典的な神話における『禁忌』というモチーフにまで言及している」と指摘し、同作の中に登場する2つの「禁忌」について紹介した。

1つ目の禁忌として挙げられたのは、「異世界の食べ物を勝手に食べてはいけないこと」。文章は、物語の序盤で、主人公・千尋の両親が異世界の食べ物を食べたために豚に変身してしまうシーンを挙げ、「こういった飲食にまつわる禁忌は世界各地の神話の中に広く存在している」とした。

文章が例として挙げたある古代ギリシャ神話の物語では、冥界に連れ去られた女神・ペルセポネが父である大神・ゼウスによって地上へ送り返されようとするが、冥界のザクロを食べさせられてしまったために、「冥界の食べ物を食べた者は冥界に属する」という冥界の掟に従って1年のうち3分の1を冥界で過ごさなくてはならなくなる。

また、中国唐代の怪奇小説集『広異記』に収められた「浚儀王氏」では、義母の葬式で酒を飲み過ぎた男が誤って棺桶の中に入り込み、たどり着いた冥界で死者らのごちそうに手を伸ばすが、すぐさま「人間は幽霊の食べ物を食べてはならない」と遮られ、そのおかげで無事に墓から救い出される。

さらに、文章は日本の歴史書である『古事記』と『日本書紀』にも言及し、黄泉の国へ去ったイザナミが、追ってきたイザナギに対し「私はすでに黄泉の国の食べ物を口にしたので、黄泉の国の神からの同意がなくては元に戻れない」と訴える一節があると伝えた。

文章は続いて、2つ目の禁忌を「振り向くこと、そしてのぞき見ること」とした。『千と千尋の神隠し』の終盤には、人間界に戻る千尋に対してハクが『トンネルを抜けるまで絶対に振り向いてはいけない』と言い聞かせるシーンがある。この「振り向いてはいけない」という禁忌に関連するギリシャ神話や日本、中国の神話や伝説を紹介した。

ギリシャ神話のある物語では、吟遊詩人のオルペウスが、毒蛇にかまれて死んだ妻を復活させる約束を冥王との間で取り付けるものの、冥界から抜け出す直前で「後ろを振り向かないこと」という条件を破ってしまい失敗してしまう。また、旧約聖書の「創世記」にも、神から自分の住む街の破滅をあらかじめ伝えられていたロトという人物の妻が、「逃げる時に街の方向を振り向かないように」という警告に逆らったせいで塩の柱に変えられてしまうという一節があるという。

さらに、日本神話では、黄泉の国まで自分を追ってきたイザナギに対し、イザナミは「黄泉の国の神と相談をする間、私の姿を決してのぞかないで」と頼むが、イザナギは言い付けを破って様子をのぞき、身体中にウジがたかるおぞましい姿になったイザナミを目にする。イザナギは一目散に逃げ帰り、この世と黄泉の国の境界を大きな岩で塞いでしまう。

ほかにも、中国の「狗頭王」という神話で、皇帝の王室に暮らすある女性は、敵の将軍の首を取った犬に嫁ぐことになっていたが、「本を盗み読みしてはいけない」という決まりを破ってしまったため、犬は完全に人間の姿になることができず首から上だけが犬のまま残ってしまう。

文章はこれらの神話を受けて、「禁忌は常に潜在的な危険性とセットになっている。物語の主人公は一旦禁忌を破ると、災難や懲罰を招いてしまったり、成功するはずのところで大失敗してしまったりする。最悪の場合は生命を落とすこともある」と指摘。「禁忌にまつわる神話は実際のところ、警告と戒めという役割を発揮しているのだ」と述べた。(翻訳・編集/岩谷)

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