カウズらサブカルの旗手がビッグビジネスの対象になった理由―中国メディア

人民網日本語版    2019年6月8日(土) 6時40分

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先ごろ、ユニクロのTシャツブランド「UT」と現代アーティストのカウズがコラボレーションしたTシャツが中国国内で発売され、商品争奪戦が繰り広げられたが、カウズUTが最初に発売された際、米国でもかつて同様の一幕があった。写真は中国のユニクロ。

一度あったことは再び繰り返されるものだ。先ごろ、ユニクロのTシャツブランド「UT」と現代アーティストのカウズがコラボレーションしたTシャツが中国国内で発売され、商品争奪戦が繰り広げられたが、カウズUTが最初に発売された際、米国でもかつて同様の一幕があった。近年、カウズや奈良美智、村上隆、キース・へリングなどにけん引され、ストリートアートはサブカルチャーの枠内にとどまらず、オークションやコレクションから派生商品販売に至るまで、軽視できないアーティスト生存環境と産業チェーンを形成しており、こうした点も人々の興味を引き始めている。いったいなぜこうしたサブカルチャーがビッグビジネスになっているのか?そしてカウズのような現代アーティスト作品を買っているのは誰なのか?北京商報が伝えた。

▼大金が動く現代アート市場

「原価では買えない」ユニクロUTシリーズに新たなメンバーが加わった。6月3日、ユニクロとカウズがコラボしたTシャツ「KAWS:SUMMER」シリーズは商品争奪戦を引き起こした。同日午前0時にオンラインショップで発売されるやたちまちほぼ売り切れとなり、1時間もたたないうちに、一部の子供服を除いてオンラインショップのほとんどすべての商品がソールドアウトとなった。

事実、トレンドのベンチマークとなっているカウズの作品は、版画から派生商品、さらにはダブルネーム商品に至るまで、ほとんどが商品争奪戦の様相を呈している。以前あるメディアが報道したところによると、カウズの作品は2018年のオークションで3380万ドル(1ドルは約108.1円)で落札され、前年同期比で260%高い値段が付いた。平均販売価格も2017年の4万2000ドルから8万2000ドルまで上がり、ほぼ2倍となっている。

しかしカウズは決して個別事例ではない。ここ数年台頭してきたストリートカルチャー・アーティストの作品はすでにコレクターや博物館が先を争って追い求める対象となっており、しかもビッグビジネスへの道を切り開いている。まずはジャン=ミシェル・バスキアが1982年に創作した頭蓋骨を描いたグラフィティ作品が、ニューヨークのサザビーズで1億1050万ドルという高値で落札された。そして最近では、キース・ヘリングとJRが急速に値を上げている。

サザビーズのアジア地域現代アート部の寺瀬由紀主管は以前取材を受けた際、「オークション参加者のストリートアーティスト本人への熱愛やこだわりあるサポートが、ある程度において、一般大衆の間で宣伝効果を果たしている。それと同時に、テクノロジーとトレンドに強い興味を持つ若いコレクターたちのSNS関与度が高いことも、オークション業界が新しいプロモーション方法で彼らをひき付けようとしている理由だ」と語った。

北京大学文化産業研究院の陳少峰副院長によると、ダブルネーム商品のTシャツを購入することはすでにそれ自体の意味を超えて、トレンドとステータス認知を象徴する文化的記号になっているという。陳副院長は「サブカルチャー圏内の人々の大半はブランドに対するロイヤリティが高く、購買力も高い。彼らがお金で買っているのは服そのものではなく、面白さを追求しているところが大きい。こうした文化的記号を通じて自己肯定感を求めているのだ」と指摘した。

▼インターネット+スター効果

カウズの日の出の勢いは決して簡単に成し遂げられたものではない。むしろ一定の時間を経て徐々に消費市場へと進出していったのであり、そこには一連の時代の特徴が刻まれている。カウズは実は2008年にも中国を訪れたことがある。北京オリンピックを控え、元体操選手でスポーツ用品メーカー「李寧(LI-NING)」創業者の李寧氏は国内外のアーティストを招いてオリンピックのプロモーションを行ったが、その中にカウズも含まれていた。当然ながら、当時カウズは中国国内でまだ知られていなかった。

十数年後、インターネットの急速な発展により、アーティストはソーシャルメディアを通じて話題になり、いっそう名声を高めることができるようになった。カウズの中国国内での影響力は、多くのスターたちがカウズの作品を使用した商品を着用したことと切り離せない。芸能界の周杰倫(ジェイ・チョウ)、林俊傑(リン・ジュンジエ)、劉雯(リウ・ウェン)などが身に着けたことで、カウズの知名度はそれぞれのファンの間でいつのまにか広がっていった。

今回のダブルネーム商品Tシャツを買った呉文傑さんは、「私は周杰倫の熱烈なファン。周杰倫はカウズが好きなので、今回のコラボTシャツも着ると思う」と取材に答えた。呉さんがカウズを知ったのはまさに周杰倫が好きだったからだ。「カウズはとてもクールだと思う。今では毎年このブランドに5000元(1元は約15.7円)以上使っている」と呉さんは言う。

この他、フランスのオークションハウスであるアールキュリアル社のファビアン・ノーダン副総裁は、「今の若い世代は非常に豊富な情報源を持っている。それに伴って生じた問題は、彼らが何かをコレクションするのは自分の気持ちが動かされたからではなく、SNS上で何度も見たからだ、ということだ」と語っている。

インターネットの「流行っているものはとりあえず手に入れたいという心理」と「ネット上の人気者の真似をする習慣」の影響下で、ますます多くの一般人がこうしたトレンドを追いかける風潮に巻き込まれ、自分もおしゃれだと認められたがるようになっている。北京市社会科学院首都文化発展研究センターの沈望舒副センター長は、消費者が個性とトレンドを追求するようになったことでサブカルチャーに市場が生まれたと指摘。さらに、「文化クリエイティブはかなりの程度においてサブカルチャーから生まれている。しかもストリートカルチャーそのものが比較的優れた大衆基盤を持っており、若い人たちから好まれている。それに加えて、一部のスターのデモンストレーション効果によって、そのスターのファンの間で一定程度の経済効果が生まれ、ストリートカルチャー全体の消費をけん引している」と語った。

▼文化という枠を飛び出してビッグビジネスになるサブカルチャー

ユニクロとカウズのダブルネーム商品が争奪戦の様相を呈したことは、現在こうしたサブカルチャーがそれ自体の文化的な属性をとうに超越し、ビッグビジネスになりつつあることを証明している。「近年、カウズや奈良美智、村上隆、キース・ヘリングなどにけん引され、ストリートアートはサブカルチャーの枠内にとどまらず、人気ブランドや玩具、ファストファッションブランドとのコラボレーションによって、世界範囲でストリートカルチャーブームを巻き起こしている。そしてまさに業界の垣根を越えた一連のアクションによって、もともとは限られたファン向けの美術館に展示されるような作品が、大衆消費の視野に入ってきている」と沈センター長は指摘する。

それと同時に、デザイナーズトイやストリートアート作品を購入することもトレンドを仕掛けるバイヤーの潜在的投資手段となっていった。アート市場関連情報大手のアートプライスが発表した「2017年現代美術市場年次報告書」によると、世界で最も人気のあるアーティストのトップ10に、キース・ヘリング、シェパード・フェアリー、バンクシー、カウズら4人のストリートアーティストが名を連ねた。ストリートアートはコレクターから絶賛されると同時に、現在のアート作品市場で最も活力あるカテゴリーの一つとなっている。

「サブカルチャーが大衆の視野に入り、しかも独自の産業チェーンを作り上げたことは、文化の発展・進化の普遍的法則だ」と語る中央財経大学文化・伝媒学院の魏鵬挙院長は、ポスト現代社会の到来に伴って、人々はますます文化の多元性を強調するようになり、アートも伝統的な意味での認識にとどまらなくなり、単なる一枚の絵や一点の彫刻ではなくなった、と考えている。魏院長は、「ストリートカルチャー関連商品は一定の芸術的付加価値があるが、それにも増して文化的記号を体現している。消費者は文化的な共感を手にするためにこうした商品を購入する」と指摘している。(提供/人民網日本語版・編集AK)

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