美大の卒業制作展に紛れ込んでもバレないAIの作品、人間の芸術家の活路は?―中国メディア

人民網日本語版    2019年6月1日(土) 21時30分

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北京の中央美術学院の卒業制作展は毎年5月から6月にかけて行われ、芸術好きな人々の注目の的となる。しかし、先ごろ中央美術学院から得た情報によると、今年はなんと人工知能(AI)が創作した作品が卒業制作展に「紛れ込んでいる」という。

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北京の中央美術学院の卒業制作展は毎年5月から6月にかけて行われ、芸術好きな人々の注目の的となる。しかし、先ごろ中央美術学院から得た情報によると、今年はなんと人工知能(AI)が創作した作品が卒業制作展に「紛れ込んでいる」という。中国新聞網が伝えた。

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中央美術学院に確認したところ、「夏語氷」の名で作品を発表したこのAI芸術家の「小氷」に対し、観覧者は特に疑問を抱いておらず、むしろその作品は一見した限りではAIが描いた作品とは分からないほどだという。しかし、AIの作品まで出展できるようになったら、人間の芸術家に活路はあるのだろうか?

「今回の卒業制作展で『彼女』を出展者に加えたのはちょっとしたユーモアだったが、一種の試み・実験であるとも言え、中央美術学院の先見性ある考え方を表している」と話す中央美術学院実験芸術学院の邱志傑院長は、「数カ月前から、我々はすでに『小氷』の絵画指導に関わってきた。指導した以上、『彼女』も当校の研修生の1人と言える。そこでその作品を卒業制作展で展示することにした」と語った。

小氷の「指導教員」の1人である邱院長が明かしたところでは、研究チームは「数百人の画家の絵を用いて訓練」を行った。訓練に使われた作品のデータは主に後期印象派から現代主義初期の作品に集中していたという。

現在のところ、観覧者の反応を見る限り、小氷の作品が「人間の作品ではないのでは?」という疑いは抱かれていない。

「AIのほうがマンネリを脱する可能性大」

こうしてみると、人間とAIが創作する絵画に違いはないように思える。

小氷の研究開発スタッフも、小氷がテキストや他の創作の源から刺激を受けて、単独で100%オリジナルの絵画作品を完成させられることを証明しており、「こうした創作のオリジナリティは、構図だけでなく色の使い方や表現力、作品に含まれる細かい要素にも体現されており、プロの人間の画家のレベルに近い。その他の既存技術と比べ、この絵画パターンはランダムな画面生成でもなければ、既存の画面に対するスタイルの移行・変換やフィルター効果処理でもない」としている。

しかし邱院長の考えでは、ある角度から見ると、AIは明らかに人間よりも優れているという。邱院長は、「小氷の絵はスタイルが多様で、手法が比較的熟練しており、描くのも速い。創作の量が非常に多く、我々にとっては選択の余地が非常に大きい。優れた絵をいくつも選ぶことができる」とはっきり指摘している。

AIは数の上で人間より優れているだけでなく、クリエイティビティーの面でもより多くの可能性を備えている。

「AIにいくつかルールを与えると、そのルールを用いて無限の変化を組み合わせてくる。反対に人間のほうは習慣や自分のいつも通りのやり方、つまり教育や経験によって作り出されたいつものやり方に陥りやすい。一方、AIは与えられた美学原則を認識し、それらを用いて並べたり組み合わせたりして、異なる視覚的効果を生み出すことができる」。

邱院長は次のように仮定してみせた。もしAIに「繰り返し不可」という指令を出したらどうなるか。「実際、AIがマンネリから脱する可能性はさらに大きくなるだろう」。

AIは人間の芸術家に取って代わるのか?

世界に目を向けてみると、AIが絵を描くのはもはや最新の「スキル」ではない。昨年、AIの絵がオークションにかけられ、約300万元(約4800万円)という価格で落札された。

人間の芸術家にはまだその独自性やAIとは違う価値があるのだろうか?

邱院長は写真撮影技術を例に、「もしAIが人間の芸術家に取って代われると考える人がいるなら、それは杞憂だと思う」とし、「写真撮影技術が生まれたばかりの頃、多くの画家は慌てふためいた。画家が絵を1枚描くにはだいたい半日かかるが、写真はシャッターを切るだけで、画家より速く、優れた効果を生み出せるからだ。当時、絵画は再定義を迫られた」と邱院長は言う。

現在の視点に立って振り返ってみると、写真撮影技術が生まれた後、人間の芸術家が写真撮影技術を活用した創作を始めたことに気付くだろう。

邱院長は、「一部の画家は写真撮影技術を利用して写真写実主義作品を創作した。また一部の画家は、写真の登場によって写真ではできないことをするよう迫られた。こうしてゴッホやピカソのようなスタイルが生まれた。一流の画家は、実のところ写真によって進化を余儀なくさせられたのだ」と語った。

邱院長は、「今日のAIと人間の芸術家の関係は、おそらくそれと似たような道を歩むことになるだろう」と考えている。(提供/人民網日本語版・編集/AK)

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