銀座ブランドを世界のブランドへ

配信日時:2019年6月8日(土) 14時40分
銀座ブランドを世界のブランドへ
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ある日、東京の一等地・銀座にある株式会社花印粧業研究所は長野県に住む80 代の老婦人からの電話を受けた。
ある日、東京の一等地・銀座にある株式会社花印粧業研究所は長野県に住む80 代の老婦人からの電話を受けた。「前に使った良い商品がどうして買えないのかしら。どうしようもなくて電話してみたのよ」。

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この女性は長年農作業に従事し、日々風に当り日に焼けていたのだが、偶然購入した花印の保湿製品を使ってみると、今までのもの以上に肌に吸収されやすく、田畑で一日仕事をして家に帰った後もまだしっとりしていたのだ。

簡単で効果があると思い、また買おうとしたが見つからなかったという。花印の王奥廷社長はこの話を聞いて、すぐに老婦人が残した住所宛に同社が生産した保湿製品を郵送し、無料で提供したのだった。そのわけは、一つには王奥廷社長が、老婦人にはオンライン決済ができないかもしれないと思い至り、顧客にいやな思いをさせたくないと考えたためであり、また同社の製品のブランド力が人びとの心をとらえていることがわかり、認められたことがうれしかったためである。(聞き手は人民日報海外版日本月刊編集長・蒋豊) 

<並外れた腕前>

統計によると、現代人のスキンケア製品に対する依存度は、かなり高くなっており、収入の三分の一前後をスキンケア製品購入に充てるという人も多い。以前は化粧品やスキンケア製品は女性専用と思われていたが、今では男女を問わず片っ端から試して、「顔面偏差値」を上げようと情熱的を傾けている。日本の美容サイト@コスメは、今最も権威のある、ユーザーの口コミによるコスメ用品の評価サイトであり、信頼度が高く、影響力は非常に大きい。同サイトでは毎年、ユーザーの投稿を集計したデータに基づき、各カテゴリ別のランキングを発表している。上位にランキングされる製品は、消費者の使用後の実際の感想によって選ばれた良品であり、ランキングの上下はそのブランドの市場動向に極めて大きな影響を与えるため、毎年のランキングは大きな注目を集めている。@コスメでの受賞は日本のコスメ業界における「ノーベル賞」と言っても過言ではないだろう。

2016年から2018年まで、花印粧業研究所の4つの製品が各カテゴリにおいて@コスメ口コミランキングの第1位を獲得した。スキンケアの「ノーベル賞」に輝いたということは、花印がすでに日本人の生活にとけこんだこと、そしてさらに日本人の心にもなじんだことを示している。

しかし、多くの日本人はまだ知らないのだが、花印を日本人に愛されるブランドに育てたのは一人の在日華人なのである。ここで誇らしい気持ちで読者の皆様にその名前を告げることをお許しいただきたい。彼の名は王奥廷という。

<努力で壁を乗り越える>
人の一生には究極のところどれだけの種類があるだろうか。王奥廷の人生行路は私たちに一つのモデルを示しているかもしれない。

彼は中国にいる頃、優秀な刑務官であり、組織内でも評価が高く、慕われていた。ある逃亡犯は彼に「あなたが夜勤の時には、ぜったい脱走しない」と言ったという。

2003年10月30日、新しい人生を開拓するために歩み続ける王奥廷は岡山県に降り立った。そこの日本語学校で学ぶためだったが、庶民出身の彼にとって、学費や生活費は大きな負担であった。はじめてのアルバイトは自動車部品工場の生産ラインの流れ作業だった。学校が終わってからアルバイトの始業までは1時間しかないが、学校からバイト先までは自転車で45分かかった。緊張し、せわしない通勤路で汗水を流した王奥廷であるが、春になると満開の桜に彩られる通勤風景を今でも思い出すという。

「あの頃の気持ちをまだ覚えています。自転車で通り過ぎると、桜の木の下で花見をするグループが酒を飲んだり歌を歌ったりしていたのですが、私は自転車のスピードを緩めることもできず、自分だけに春が来ないような気がした」。

流れ作業の工員として、仕事を始めれば精神的に緊張を強いられる。手の動きが少し遅くなれば、すぐに生産ラインに影響してしまう。当時彼が担当していたのは、部品の四隅にねじをとりつける部分で、ねじをつける場所にはマークがあり、マークにしたがってねじをとりつければいいのである。機械的で簡単な工程のようであり、彼はすぐに操作に慣れた。しかし、ある日彼がねじを取り付けていると、突然後ろから誰かにひどく蹴られたのである。「今2ミリずれていたのに気づかなかったのか!今のは欠陥品だぞ!」。蹴られた王奥廷は顔が熱くなるのを感じたが、しかし心の中では納得していた。「わずか2ミリで蹴飛ばされたことで、日本の品質管理というものに目覚めたのです」。

日本語学校が休みになると、同級生たちはゆっくり休んでいたが、彼は逆にふんばってすべての時間を仕事に当て、一日に3つの仕事をこなしたのである。焼肉店、コンビニ、そして岡山特産の桃の摘み取りである。桃の仕事について語り始めると、彼は誇らしい表情になった。

「桃の分類については、毎日やっていたおじさんやおばさんたちよりも上手だったんです。今も桃農家の人とは連絡をとっていて、私に東京でどうしているか、うまくやっているかと聞くので、スキンケア製品などを作っている、と答えていますよ」。

その当時の生活に満足していたと語る王奥廷だが、今の成功については非常に控えめに笑うだけである。このような成績表の上にとどまらない精神が、彼を人生の新しいステージへと向かわせているのかもしれない。

日本語学校を卒業後、王奥廷は岡山大学のシステム制御の専攻に進学するつもりだったが、留学生の先輩に「まず指導教授を見つけないと応募できない」と言われた。王奥廷は、指導教授を探すために最も不器用だがストレートな方法を思いついた。研究室のドアを次々にノックし、教授たちに2分間だけ時間をもらい、自己紹介をしたのである。

彼は5階から2階まで研究室のドアをたたき続けた。冷淡だったり、不思議そうな顔ばかりだったが、ついに最後に彼に興味を示してくれる教授に出会った。しかし、この教授は彼に、「まず面接と筆記試験で素晴らしい成績をとらなくては」と言った。

王奥廷は教授を失望させなかった。順調に面接と筆記試験に合格しただけでなく、在学期間中も気を緩めることはなかった。彼の卒業論文の研究課題はロボットアームで、発表の前夜は午前3時まで准教授に助けられながら組立実験を続け、最終的には理想的な結論を得たのである。

2007年の修士課程終了後、大阪と東京で就職活動をした。1日に3つの会社の面接を受けた結果、彼は大手IT企業に入りソフトウエア開発の仕事をすることになった。この会社で働いていた間、彼はずっと日本企業の管理意識についてひそかに学んでいたという。

何もバックのない普通の人間として彼は専門の業務に集中していたが、それと同時にあえてまったく新しい自分自身を探しはじめ、そして一つ一つ壁を越えるたびに生命の可能性は広がっていった。刑務官から留学生へ、そしてIT業界のエリートとなったのである。

2015年、王奥廷はまた一つの壁を越え、株式会社花印粧業研究所の社長に就任した。花印の大きな市場は中国だが、生産ラインと研究所は日本にあり、製品は日本で研究開発され、製造されたもので、メイドインジャパンとして中国に輸出される。日本ではマツモトキヨシ、ドン・キホーテなど1000店以上の大手チェーン店で販売されており、市場のシェアも拡大し続けている。

花印の製品は誕生した当初から、日本でもキャリアが長く、影響力が大きいメーカーの生産ラインで製造されている。創業は難しく、継続はさらに難しい。日本の老舗企業の経営は慎み深く、保守的でさえある。資生堂などの有名ブランドの製品を生産しているメーカーに対し、どのように花印のために生産ラインを提供するよう説得したのかは、一番関心のあるところである。王奥廷は少し考えて、そのエピソードを語ってくれた。

「会社が創業したばかりのころ、花印はそのメーカーに10万本のスキンケア製品を生産してもらったのですが、輸出ルートがまだ確立できていなかったため、その製品はすべて廃棄処分となってしまったのです。ですが、当社はそれでも生産ラインの支払いを滞らせたり、値引いてもらったことはありません。損をして評判を得る、信用が事業を大きくする、ということです。花印は日本化粧品工業連合会、東京商工会議所などに加入し、経営モデルも日本企業と同じにし、すべて公開しました。私はまず信用を守り、契約を守る精神を持っています。このような態度と精神を見て、メーカーは当社のために生産ラインをスタートさせてくれたのだと思います」。

2015年、花印の中国での売り上げが350億円に達した。中国最大のドラッグストアチェーン、ワトソンズの3500店舗で、花印の売上高は世界のスキンケアブランドの中でトップである。

2018年の国際博覧会で、花印は資生堂、花王、コーセーなどの日本の老舗ブランドと肩を並べ、自社の独立ブースを設置し、日本の化粧品ブランドとしてアジア各国の注目を集めた。今、製品はシンガポール、タイ、マレーシア、韓国、台湾などの国と地域で販売されている。

<人気に走らず良心を大切に>

花印は津々浦々で花開いているが、王奥廷は一つの原則をずっと守り続けている。手っ取り早く稼ぐのではなく口コミを稼ぐこと、人気に走らずに良心を大切にすること。中国人観光客向けの免税店が「爆買い」の波に乗ろうと、花印のカウンターを設置しようとしているが、みな王奥廷に断られている。この儲けようとしないダメな経営者には、実は長期的な見通しがあるのだ。2ミリの誤差で蹴り上げられたことにより、彼の心の中には「品質」が永遠に焼き付けられているのである。花印を日本に追いつかせ、いつかは追い越したい。「消費者にとって、製品とはまず機能面で皮膚の悩みを解決するものであり、それから効果がずっと続くことを保証するものです。目の前の利益だけを追い求めていては心を込めた製品を作れません。この点で優れている日本の老舗ブランドの製品は、花印の手本であり、目指す成長の方向でもあります」。

現在、日本の特許取得製品を含めて花印は中国で200種類以上、日本では50種類以上の製品を販売している。王奥廷が心に掲げている目標は、科学技術によって製品を牽引し、製品の細分化に注力し、花印を日本の銀座で生まれたスキンケアブランドとして、一流中の一流の世界的ブランドに育てることだ。

この記事を書き上げたのは旧暦「夏至」の日。万物が成長し花開く時である。日本で桜が満開になる季節となっても、王奥廷は昔と同様にその歩みを止めない。ゆっくり花見をしている時間はないのだ。重責を担い、道は遥かであることを自覚しているからである。(提供/人民日報海外版日本月刊)

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