中国企業が「水で動く自動車を発明」と発表、地元政府も巻き込んだ「大ペテン」か

配信日時:2019年5月28日(火) 8時50分
中国企業「水で動く自動車発明」と発表、政府巻き込む「大ペテン」か
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河南省の青年汽車集団が「水で動くエンジン」を発明したと報じられたことで、中国では真偽をめぐる議論が発生した。科学の常識からは「ありえない話」だが、地元の南陽市政府も同企業と深くかかわっているという。写真は取材に応じる同社責任者の龐青年氏。
河南省南陽市の南陽テレビが2019年5月22日付で、市内の企業が「水を加えれば水素を発生して動力源にする水・水素エンジン」が発明されたと報じたことで、中国では真偽をめぐる議論が発生した。科学の常識からは「ありえない話」だが、南陽市政府も発表した企業と深くかかわっているという。

「水・水素エンジン」を発明したと発表したのは青年汽車集団。23日には地元紙が同エンジンを搭載した自動車の生産が「すでに始まった」と伝える記事を掲載した。

中国中央電視台(中国中央テレビ)は27日付で、「『水・水素エンジン』は真か偽か」と題する動画記事を配信した。

中央テレビの取材に対して、青年汽車の技術責任者と称する人物は、同社が製造した「水・水素エンジン自動車」について、「水を加えれば動くと言ったが、水だけを加えて動くとは言っていない」と説明。同社側のこれまでの説明を総合すると、「アルミ合金粉末、触媒、水」の3物質を反応により水素を発生させる原理だ。

青年汽車は中央テレビに対して、「水・水素エンジン自動車」を取り付けたと称するトラックは見せたが、反応装置については「取り外した」として公開しなかった。

記事は詳しく触れていないが、金属状アルミニウムは水と反応して自ら水酸化物になると同時に水素を発生させる。触媒とは自らは結果的に変化しないが、化学反応を速くしたり抑制する物質だ。つまり、触媒により粉末状アルミニウムと水の反応を制御できれば、水素を安定して発生させることが、理論上は可能だ。

しかし、アルミニウムは他の化合物と極めて反応しやすい金属で、自然界には酸化アルミニウム(アルミナ)の形で存在する。酸化アルミニウムを含む鉱物はボーキサイトと呼ばれる。酸素原子とアルミニウム原子の結合は極めて強固で、金属としてのアルミニウムを分離するためには大量の電力を利用する。人類のアルミニウム利用が鉄などと比べて極めて遅かったのは、電気関連の技術の確立が必要だったからだ。

アルミニウム合金の粉末から水素を発生させ、その水素を燃焼させたり燃料電池に用いてエネルギーを得たとしても、アルミニウムを生産する際に投入した電力などのエネルギーよりも少ないエネルギーしか取り出せない(熱力学の第1、第2法則)。つまり、青年汽車が主張する「水・水素エンジン」の開発成功は、事実だったとしてもまったく意味がないことになる。

中国ではネット上で、南陽市政府は40億元(約635億円)を出資して青年汽車を支援したとの説が流れた。新華社によると南陽側は同問題について、「プロジェクトは実質的には開始されておらず、40億元出資の問題は存在しない」と説明。

ただし新華社は、青年汽車の関連会社が、南陽市政府から水素を燃料とするバス72台の発注を受けるなど、両者には密接な関係が存在すると指摘。バスの納品はまだだが、青年汽車の関連会社は4月に浙江省の企業が生産した水素を燃料とするバス72台を購入しているという。また、南陽市政府は土地取得についても、青年汽車の関連会社を優遇した可能性があるという。

新華社によると、青年汽車の経営者である龐青年氏は、これまで信用問題を繰り返し起こしてきた。浙江、山東、寧夏、陝西、貴州、江蘇などの省や自治区の裁判所から「強制執行」の対象とされている。さらに青年汽車やグループ内の企業も、契約不履行などの信用問題を繰り返してきたという。

南陽市政府は2016年に、巴鉄科技発展に対して100億元(約1600億円)の投資を行う戦略合意書を交わしたことがある。巴鉄科技発展は、車体が車道部分を高くまたいで走行し、車体下の空間は残して他の自動車を走行させる「空中バス」を開発したと称して「道路渋滞を解消しつつ大量の乗客を輸送できる新交通手段」と宣伝して投資を募ったが、結果として実験車両以外には発表できず、会社上層部30人以上が違法に資金を収集したとして刑事責任を追及された。(翻訳・編集/如月隼人

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