<コラム>JF-17ブロック3のAESAレーダーは中国の2社で競合

洲良はるき    2019年5月29日(水) 22時50分

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JF-17ブロック3の製造は、今年後半にもはじめられるはずだ、とパキスタンのジャヒド・アンワル・カーン空軍大将が言った。パキスタン空軍が中国の2種類の新型AESAレーダーを比較し、そのうちのひとつが選定されることになる。写真はJF-17。

JF-17ブロック3の製造は、今年後半にもはじめられるはずだ、とパキスタンのジャヒド・アンワル・カーン空軍大将が言った。パキスタン空軍が中国の2種類の新型AESAレーダーを比較し、そのうちのひとつが選定されることになる。2019年5月15日付の英字軍事雑誌ジェーン(電子版)誌が報じている。

中国が提供する2種類のAESAレーダーは、中国科技集団南京研究所のKLJ-7Aレーダー(液冷・空冷の両用冷却方式)と、航空工業集団雷華電子技術研究所のLKF601Eレーダー(空冷)だ。

JF-17のために、これらのレーダーの採用評価がおこなわれている。パキスタン空軍は、2020年までに新型のAESAレーダーを搭載したJF-17が作戦能力を持つことを期待しているという。

LKF601Eの最大の特徴は、AESAレーダーの冷却に空冷方式を採用していることだろう。中国共産党政府系列メディアの環球網によると、航空機の環境コントロールシステム、電源、構造などを変えることなく、戦闘機の従来型レーダーを搭載していた位置に直接AESAレーダーを換装することは、これまで難しかったという。同記事は、これは世界的な難題だったが、高効率な冷却散熱技術を利用することにより解決したとしている。これにより、換装コストや換装にかかる時間が大幅に少なくなり、戦闘機の総合作戦能力が大きく向上する。

1970年代の各国の戦闘機のレーダーは空冷式だったが、90年代以降には性能上昇により空冷式ではすでに要求を満たすことはできなくなっていた。世界の主力戦闘機は液冷式のレーダーの開発をおこなったが、液冷式は空冷式に比べて冷却効率は大幅に上昇するが、コストが増大し複雑化する。

6月後半までには、航空機メーカーであるパキスタン航空コンプレックス社が、JF-17ブロック2の最後の3機をパキスタン空軍に引きわたす。パキスタン空軍が、ジェーン誌に話している。

パキスタン空軍は2017年の終わりに追加で12機のJF-17ブロック2戦闘機の注文をしており、現在でもパキスタンの工場で最終的な組み立てがおこなわれている。2009年に最初のJF-17が組立ラインでの組み立てが終了して以来、パキスタン航空コンプレックス社はすでに100機を超えるJF-17戦闘機を製造してきた。

英字宇宙航空誌フライトインターナショナルの2019年版の資料によれば、パキスタン空軍は現在159機のミラージュIII/ミラージュ5戦闘機、136機のF-7戦闘機を運用している。しかし、パキスタン空軍のこれら旧式機のほとんどが数年以内に退役する。パキスタンはこれらの戦闘機をJF-17に置き換える計画だ。

フライトインターナショナル誌によると、パキスタンは31機のF-16B/D、45機のF-16A/Cを運用している。F-16はアメリカ製の戦闘機だ。しかし、パキスタンとアメリカの国家間の関係は必ずしもいつも良好とは言えなかった。

パキスタン空軍がJF-17の購入を増やすのには、パキスタン空軍が採用しているアメリカ製のF-16戦闘機が、政治的な問題で運用に制限ができる可能性をも見越している。パキスタンは、元来F-16とJF-17を同時に運用しようとしていた。F-16戦闘機の運用を継続する方針で100機以上に増やし、新型のF-16V相当へのアップグレードも希望していた。

2016年2月にはアメリカの国務省がパキスタンにF-16ブロック52(2機のC型と6機のD型)を、装備や訓練、物流管理サポートを含めて販売を承認したことを公表した。これは6.99億ドルに値する取り引きだったが、その後アメリカ連邦議会が、海外軍事資金調達(Foreign Military Financing:FMF)プログラムに基づいて拒絶している。

当時のボブ・コーカー米国合衆国上院外交委員長は、アメリカがパキンスタンの軍事的サポートを続けることに懸念を示し、反対する理由として、パキスタンの人権侵害の歴史やアフガニスタンのタリバンへの支援をとりあげた。

米国連邦議会からの繰り返しの反対と、契約の遅れから、パキスタンはヨルダンから品質や規格の劣る中古のF-16(ブロック30の派生型)を購入している。

JF-17はパキスタンと中国が共同開発した多用途戦闘機である。パキスタンはJF-17を採用することで、国家間の関係が複雑なアメリカのF-16に過度に依存することを避けることができる。また、国内で製造できることで、パキスタンの思いどおりに正規にJF-17を改造したり近代化したりすることが可能になった。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

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