「名探偵ピカチュウ」が大ヒット、ゲームの映画化を成功させる秘訣は?―中国メディア

人民網日本語版    2019年5月23日(木) 21時20分

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人気アニメ「ポケットモンスター」の世界をハリウッドが初めて実写化した「名探偵ピカチュウ」が中国で10日に公開され、公開7日目でその興行収入が3億4700万元(約55億5000万円)に達した。

人気アニメ「ポケットモンスター」の世界をハリウッドが初めて実写化した「名探偵ピカチュウ」が中国で10日に公開され、公開7日目でその興行収入が3億4700万元(約55億5000万円)に達した。アニメを実写化した映画としては、ここ最近で最も興行収入が伸びている作品となっている。同作品は日本の任天堂の大人気ビデオゲームを原作としており、同作品を見た人からは、「スーパーマリオの実写版はいつ出るのだろう?」との声が上がっている。北京青年報が伝えた。

近年、映画技術の発展に伴い、ゲームを実写化した作品が次々とスクリーンに登場している。「バイオハザード」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズなどの人気ゲームを映画化するのは、ハリウッドの映画製作会社の「常套手段」となっている。また、映画化される中国のゲームも増えている。例えば、大ヒットスマホゲーム「陰陽師」が間もなく映画化される。しかし、いかにゲームファンを満足させる映画作品にするか、いかに一般の人にも見てもらい、高く評価してもらえる映画にするかが、製作者が直面する課題となっている。

■人気の秘訣はキャラクター設定は同じでも新鮮味のあるストーリー

「名探偵ピカチュウ」は、日本の同名のビデオゲームを原作とし、その世界観をベースにポケットモンスターが登場。米国テイストにアレンジし、どんな人の心も温かくするストーリーとなっており、家族に対する思いや友情が盛り込まれ、多くの人が共感を覚えている。

ゲームを映画化するとなると、ゲーマーをターゲットにするのか、それとも一般の人をターゲットにするのかという究極の選択を迫られる。一つのゲームが流行するのは、ゲーマーが遊ぶ過程で、達成感を得て、それを楽しむことができるからだ。しかし、映画となると、ストーリーやロジックがおもしろくなければ人気になることはない。ゲームの映画版の多くが批判を浴びてしまう理由は、映画化の過程で、ゲームの名前だけを使って、ストーリーはゲームと全く関係がないか、ゲームの雰囲気や細かい点まで再現しようとこだわりすぎ、ストーリーをおもしろくする重要性がおろそかになっているかのどちらかに偏ってしまい、そのバランスがうまくとれていないことにある。製作者は、ゲームの精髓を引き継ぎながら、品質も高い映画を製作することに取り組まなければならない。

「名探偵ピカチュウ」が大ヒットした理由は2つにまとめることができる。一つは、映画版の登場人物と、ゲームに出てくるキャラクターがほぼ一致している点だ。サトシやカスミなどは米国の子役が演じ、ゲームに登場する二人よりは年が上であるものの、ゲーマーも成長しているため、その二人も思春期の若者へと成長するというのは筋が通っている。もう一つは、ゲームはシンプルな設定であるのに対して、映画のストーリーは真逆でとても複雑という点だ。それがゲーマーの間でも好評を博している。ゲームを映画化すると、どうしてもそのストーリーに大なり小なりツッコミどころがあるものだ。しかし、「名探偵ピカチュウ」はとても自然なストーリーの設定になっており、一般の人でも楽しむことができ、ゲーマーも新鮮味を感じることができる。それこそが、好評を博している秘訣なのだと言える。

■ゲーム原作の映画の多くは興行収入伸びても口コミ伸びず

ここ数年公開されてきたゲームを原作とする映画の多くは、興行収入はそこそこでも、口コミは良くないという状態だった。例えば、「バイオハザード: ザ・ファイナル」の興行収入は約10億元(約160億円)に達したものの、口コミは非常に悪かった。昨年公開された「ウォークラフト」の口コミは、一般の人が「ストーリーがシンプルすぎて、見どころは特殊効果だけ」と評価したのに対して、ゲーム「ウォークラフト」のファンは、「学生時代の思い出が蘇った」と声を上げるなど、完全に二極化した。

しかし、ゲームの映画化というのは想像よりもずっと難しい。ゲームの映画化に数十年チャレンジし続けているハリウッドでも、ヒットした作品と言えば、「トゥームレイダー」、「バイオハザード」、「サイレントヒル」など数作しかない。シリーズ化した作品でも、そのほとんどは口コミが悪く、賞受賞はもってのほか。一般の人に「及第点」をもらうのも至難の業となっている。インターネット・ムービー・データベース(imdb)の統計によると、ゲームを映画化した作品の評価のほとんどは3~5ポイントの間で、最低の「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」に至っては2ポイント。最高の「バイオハザード」でも6.7ポイントにとどまっている。

ゲームの映画化でもう一つ課題になるのはいかに適度にアレンジを加えるかだ。イメージがあまりに異なってしまうと、ゲーマーの非難の的となってしまう。「名探偵ピカチュウ」の1作目の予告動画が公開された際も、映画とゲームのイメージがあまりにも違っていたため、ゲームファンの間で「ピカチュウに毛が生えている」などのブーイングが起きた。 映画の宣伝担当者も、多くの人にこの新しくアレンジされた「ピカチュウ」を受け入れてもらう必要があることを認識しており、映画上映前に、予告動画を次々に公開して、「毛がある」ピカチュウがSNSで大きな話題になるように取り組んだ。公開前に、すでにイメージ付けができていたため、映画が公開されると、多くの人から「毛があるピカチュウを私も飼いたい」と、そのかわいさを絶賛する声が上がった。「アレンジ」にはリスクが伴うものの、うまくアレンジすれば、その新たなイメージを多くの人の受け入れてもらうことは可能だ。「名探偵ピカチュウ」の場合は逆に、毛のないピカチュウを見ると、「なんか違う」と感じさせるほどだ。

■リメイクで失敗するくらいならしない方がまし

ハリウッドのゲームを映画化した作品でも、口コミが二極化し、ヒット作はほんの一握りというのが現状だ。近年、中国でも多くのゲームが映画化されるようになっている。最近では、ドラマ化されていたゲームの「仙剣」が映画化され、ゲーム「古剣奇譚」や「軒轅」などの映画作品もクランクインしている。口コミを見ると、賛否両論こそあるものの、興行収入はまずまずで、俳優の李易峰(リー・イーフォン)や李治廷(アーリフ・リー)、女優の楊冪ヤン・ミー)などは出演がきっかけで大ブレイクした。

中国のゲームのリメイク作品は、海外進出が難しいという問題もある。そのような作品の多くは、中国の古代劇やタイムスリップがテーマで、ドラマが政策の制限を受けると、プロジェクトを立ち上げるのは難しい。また、中国では製作者のレベルが低いという問題もある。ハリウッドのゲームを映画化した作品は至らない点があるものの、製作上の「失敗」というのはない。一方、中国の製作チームは、人物設定やストーリー、特性、メイクアップなど、あらゆる分野でレベルアップが必要だと言える。中国の著名なゲーム企画者・葉偉氏は、「信頼できるチームが見つからないのであれば、リメイクする必要はない。リメイクしてもしなくても、ゲームのファンはずっといる。しかし、リメイクして失敗すると、そのイメージに大きな傷が付き、取り返しのつかないことになりかねない。リメイクはゲームに花を添える形で行わなければならず、うまくいきそうにないなら、リメイクしない方がましだ」と指摘する。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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