拡大
内蒙古(内モンゴル)自治区の寒くて乾燥した気候の錫林郭勒(シリンゴル)大草原では、臀部に脂肪を蓄える品種の脂尾羊が生息している。
内蒙古(内モンゴル)自治区の寒くて乾燥した気候の錫林郭勒(シリンゴル)大草原では、臀部に脂肪を蓄える品種の脂尾羊が生息している。新華社が報じた。
しかし、脂尾羊の脂肪の味は、都市の人々は好まないため、多くのロスが生じてしまい、遊牧民の収入にも影響を与えている。そこで、モンゴル族の「80後(1980年代生まれ)」の夫婦である布仁さんと●楽木格(●は徹のぎょうにんべんをさんずいに)さんは、「この脂肪を使って石鹸を作ること」を思いついた。
二人は海外で留学と仕事をした経験が計8年あり、米誌フォーチュンが毎年発表している世界トップ企業500社に入る企業で働いたこともある。しかし、「起業して羊油を使ったハンドメイドの石鹸を作る」という「小さな目標」を実現するために、2014年に故郷に帰った。
「羊油石鹸は、草原で使われている最も古い洗剤用品。子供の頃、家中で石鹸の香りがしていたことを覚えている。草原で生活している遊牧民は元々、環境保護の意識や生きていくための知恵を持っている。高齢の人たちは羊の油をかゆみ止めにして、赤ちゃんの背中やお尻に塗っていた。また、その油は赤切れや凍傷の予防・治療にも効果がある」と布仁さん。
しかし、その伝統のハンドメイド羊油石鹸を、一つの産業にするというのは決して簡単なことではない。2015年、布仁さん夫婦は、製品研究開発に着手し、海外に足を運んでハンドメイド石鹸の作り方を勉強した。半年の研究開発を経て、二人は羊油石鹸のサンプルを作り、「錫林浩特市第一回起業コンテスト」に出品し、「三等賞」を受賞。2万元(1元は16.23円)のプロジェクト実施資金を得たほか、地元の大学生起業インキュベーターに入居し、賃貸料優遇政策なども活用した。
全てが順調に進んだことで、布仁さん夫婦は「起業」に対する意欲をさらに高め、2016年に会社を立ち上げた。そして、地元にある豊富な羊の油を活用して羊油石鹸の生産を始めた。しかし、その経営はすぐに軌道に乗ったわけではない。二人が最初に研究開発した羊油石鹸は、形が悪かったことや羊油独特のにおいがきつかったことなどが原因で、全く売れなかった。「当時、スタッフみんなショックを受け、残ったスタッフは5人だけだった。会社の資金も底をついてしまった」と布仁さん。
しかし、「僕たちが採用しているのは低温でゆっくりと時間をかけて石鹸を作る『コールドプロセス法』。質の高い植物油の成分を劣化させることもなく、草原の水源を汚染することもない。さらに、地元の遊牧民の所得も増える。これが、がんばり続けてきた理由だ」と説明する。
起業から5年間で布仁さんは貯金や起業支援資金など全てをつぎ込んで、1500回以上の実験を行い、100種類以上の油脂原料をテストし、ついに、羊油独特のにおいを消すことに成功した。
そのような努力が無駄に終わることはなく、先月、布仁さん夫婦が作る羊油石鹸に、日本から注文が入った。布仁さんは、「今回、羊油石鹸を合計約2000個輸出する。価格として約6万元相当。初めての輸出の注文で、額は大きくないが、地元の農畜産物を加工して輸出する前例を作ることができた。羊油石鹸の形、質、においなど全てのハードルを越えたということだ」と常に前向きだ。
そして、「妻は博士課程を修了し、僕も経営学修士(MBA)を修了している。帰国したのは、自分たちの知識や経験を活用して、何かしてみたかったから。海外で暮らしていたころは、みんなに羨ましがられていたが、あまり心地よいものではなかった。帰国して、起業し、生きがいを見つけることができた」と話す。(編集KN)
ピックアップ
この記事のコメントを見る