日中韓のFTA、米国の政治的圧力は不可避=「具体的な交渉に入るほど機は熟していない」―中国専門家

Record China    2013年3月27日(水) 21時30分

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27日、日中韓3カ国は今月26〜28日に韓国・ソウルで次官級の初会合を開き、FTAに関連する商品、原産地、貿易救済措置、サービス投資、知的財産権などについて幅広く意見を交わす。資料写真。

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2013年3月27日、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉は2003年から研究・討論を10年間重ねた後、正式な交渉段階に入った。3カ国は26〜28日に韓国・ソウルで次官級の初会合を開き、商品、原産地、貿易救済措置、サービス投資、知的財産権などについて幅広く意見を交わす。国際金融報が伝えた。

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日中韓FTA構想の提唱からすでに10年間が経ったが、様々な内外要因の影響、特に日中韓の思惑の違いに常に妨げられてきたため、長期間棚上げにされると思われてきた。島嶼争いにより日中の外交関係が悪化すると、外部では日中韓FTA交渉は中止になるとの見方がさらに高まった。

中国国際問題研究所の曲星(チュー・シン)所長は、「日中韓の自由貿易圏構築と経済統合は大きなすう勢だ。政治関係の緊張によって、交渉の雰囲気はそれほど良好ではないが、日韓ともに地域経済統合に積極的で、全体的なすう勢は良い」と指摘する。

自由貿易圏が成立すれば、関税の相互撤廃または引き下げと、他の貿易障壁の最大限の撤廃によって15億1000万人の大市場が形成される。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、北米自由貿易圏とEUの巨大な自由貿易圏に匹敵する規模になると指摘する。参加国のこれまでの関税水準が高いほど、撤廃後の貿易押し上げ効果は大きくなる。英紙フィナンシャル・タイムズは、自由貿易圏の成立によって各国のGDPは中国が2.9%、日本が0.5%、韓国が3.1%押し上げられるとしている。

だが、中国国際問題研究所世界経済・発展研究部の魏民(ウェイ・ミン)副研究員は「現在は政治的『氷河期』なので、日中韓FTA交渉は具体的段階に入るにはまだ機が熟しておらず、今回の交渉は象徴的意義が実際的意義を上回る可能性がある」と指摘する。

■三カ国の経済構造の難題

「日中韓自由貿易圏が具体的にいつ成立するかは未知数だ」と複数の専門家は指摘する。解決困難な外交的な束縛を受けるだけでなく、より根本的な問題として各国の産業経済構造間の多重摩擦がある。

青島科技大学北東アジア経済発展研究センターの袁暁莉(ユエン・シャオリー)副主任は以前、「産業別に見ると、農業では中国が比較的優勢にある。鉱業では韓国が優勢だ。製造業では日韓両国が中国よりも優勢だ。中国が弱いのは化学工業や機械運輸設備、相対的に強いのは事務設備、通信設備で、韓国の製造水準とほぼ肩を並べる。繊維製品、衣料品では中国は絶対的な競争優位にある」と説明した。

商務部国際貿易経済協力研究院の梅新育(メイ・シンユー)研究員は、「日中韓交渉の難点はやはり農業問題に集中している。農業問題で合意できないことが、一貫して日中韓自由貿易圏構築の大きなボトルネックとなってきた」と指摘する。現段階では米など一部農産物の市場開放問題は一時棚上げにし、動植物検疫など非関税措置が取引を制限している問題の全面的な市場開放よりも、これが実質的意義を持つことを認め、補完関係の中で農産物取引を増やせば、紛糾を最大限減らせるとの見方がある。

魏氏はFTA交渉の難点は金融サービス、通信、鉄鋼機械、自動車、化学工業などの業種にもあると指摘する。日韓はこうした業種の開放を中国に求めているが、その主張する「参入前内国民待遇」は現行の中国の制度と矛盾する。条文では、「参入前内国民待遇」とは内国民待遇を投資発生前の段階にまで拡大するものであることを示しており、外資に参入権を与えることがその核心だ。また、「今回の交渉がこの段階まで深まるとは限らない。第1回交渉はタイムテーブルや重点交渉分野など大枠についてのみ話し合うことになるだろう。進展があるのは製品貿易、投資、一部非WTO(世界貿易機関)分野など伝統的分野のみのはずだ。開始当初は最もシンプルな事柄しか話し合うことはできず、後になるほど難しい分野を扱うことになる。金融サービスや通信業が取り上げられるとは限らない。FTAの急速な発展は人民元の国際化にとってプラスだが、交渉を急ぎすぎることによるリスクもたいへん大きい」と述べた。

米国要因は不可避

魏氏は、「日中韓FTA交渉は世界全体の構造にすでに後れをとっている。各国ともに積極的に時機を捉え、経済面で互いに譲り合うことで、政治的膠着局面の脱却を促すことを期待している。だが現在、ここでも各国は多少態度を保留している」と指摘する。

日韓が保留を選択する要因は、米国の姿勢にもある。日中韓FTA交渉に関する議論の中で、米国要因は避けられない一環だ。米国の姿勢は、東アジア地域の経済統合に「より多くの複雑な変数」をもたらすとの見方も多い。元ロンドン副市長で中国人民大学重陽金融研究院シニアフェローのジョン・ロス氏は「米国の政治的圧力のため、日中韓FTAの急速な進展はないだろう」と指摘する。

ロス氏は「日韓は米国と同盟関係にあるうえ、米国は自らの主導するTPP交渉の推進に力を入れている。米国は日中韓FTA交渉で日韓に圧力をかけ、中国と新たな、あるいは大規模な協定を締結できないようにする可能性がある。一定期間の後に、TPPが経済成長の緩慢な米国との関係強化に役立たず、日韓などが利益を得ることはないことを示す比較的はっきりとした兆しがない限り、日中韓FTAが大きく進展することはないだろう」と指摘する。(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/内山

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